平和な戦場XVI~異常な家ⅩI~
ちょっと作品の感じが変わったかもしれません。
そんなことを思っていたらアダムが言う。
「実は、お嬢様はひらめきが来そうになると急に逆立ち歩きをし始める。そしてひらめきが来ると自分の服にポケットにあるチャコマーカーでそれをしるすという癖があります」
「どんなくせだよ」
そう俺が返したときに湯川さんが帰ってきた。すると、湯川さんのいつもの能面が顔が悲しげに曇る。そして、さっきとはまた違う消え入りそうな声で湯川さんが言った。
「嫌いならもう出ていってもいい」
俺はそれが彼女の強がりなのだと思った。湯川さんは俺と幼馴染という友達ができるまではこうやって、友達が居ないという寂しさを誤魔化していたのかもしれない。だが、少なくとも高校の三年間は、いや、これからは誤魔化す必要は無いだろう。幼馴染と俺が友達だから。そんな小っ恥ずかしいことを思っていると幼馴染が言う。
「なんでいきなり嫌いという言葉が出てくるの?」
「だって、あんなくせおかしいでしょ?」
「面白いなとは思ったけど。嫌いになるというよりは好きになるよね」
幼馴染は勉強好きのガリ勉だ。幼馴染は常識は持っているが常識を自分に当てはめるか、といえば当てはめないのだろう。俺に関してはもう変人とだいぶ付き合っているのでそれぐらいの寄行では嫌うわけがない。幼馴染の日ごろに比べれば可愛いもんだ。なので、若干表情に不安の色が見える湯川さんに俺は笑いながら言う。
「幼なじみに比べれば可愛いもんだよ」
「そう」
そう言う湯川さんの顔にはハッキリとした笑顔が灯っていた。