覚醒Ⅰ
あ、ちなみに擬音には{}が付けています。俺Tuee要素はだいぶ後です。でも文字数的には結構すぐです
「よし、行くか」
「じゃあ、行こうか」
俺こと千同 仁はハーフであることと、隣の家に幼馴染がいる新高校生だ。まあ、かなりクラスの男子には羨ましがれるが。クラスの男子いわく、イケメンで頭が良くてしかも美人の幼馴染がいるのが羨ましいそうだ。
確かに、俺の理数系の点数は高いが、文系の点数は別に特出して良いわけでもない。恐らくあいつらの羨ましがっている大方の理由はあの美人の幼馴染と恋愛的な関係になりやすいように見える幼馴染ポジションだろう。
どうせ、マンガやアニメでそんなシーンがあったからそう考えているのだろうが、俺から言わせて貰うと実際のところ幼馴染だからといって何か恋愛で有利とかそんなことは全然無く逆に不利だ。一応言っとくが俺が幼馴染のことを隙というのは無い。ただ、今までそういう感情を幼馴染が見せたことが無いよということだ。俺からアプローチして何も無かったというわけではない。
そして俺がイケメンかどうかについてだが、誇張表現だとしか思えない。確かに、アメリカ人とのハーフなので顔が少しよく見えるだろうが、あくまでも少し良いだけであってイケメンとは呼べるレベルには達してないだろう。
事実、友人を通してアイツ『俺』ってさーイケメンだよなという質問し、集計してみたところ、「まあまあじゃない」が一番多かったのだ。もちろん、友人を通して聞いているため面と面を向かってカッコイイをいえないから、とか俺が怖いからよく言っておこうと考えて言ったわけではないだろう。
それに、俺にもいわいる気になる子という人が中一のときにいたのだが、その子に見事に振られたのもこの事実を裏付けている。
「じゃあ、三角関数のsinθの値を言ってみて!!」
「なめんなよ!0度のときは0。三十度の時は二分の一。四十五度のときはルートニ分の一、六十度の時は二分のルート三。んで九十度の時は一」
「120度の時からは戻るだけだからよし!!」
で、俺と今話している隣に居る美人な幼馴染だが、コイツは俺と違い完璧超人だ。成績は全教科を学年一位、二位を常に争い、家事は完璧、しかも金持ち。そしてさきほどちょろっと言ったとおり美人である。だが、持久力が足りないのと運動のセンスは普通だ。まあ、そう考えると完璧超人ではないかもしれない。
その美人の見た目だが、髪は黒髪のロングで目も黒で、対照的に肌は白い。そして足の先は細いものの太ももにはしっかりと肉が付いておりハッキリ言って艶かしい。それにダメ押しとばかりにウエストは程よく締まっており、胸は通常よりもでかいが、大きすぎるわけでもないという感じだ。一言でまとめるとスタイル抜群の大和撫子だ。
アイツの基本的な雰囲気は委員長といったところだが、俺に世話を焼くときだけ、ほんわかな雰囲気になる。コレに関しては生まれた頃から長い間遊んだり、一緒に話したりしていて相手の情報が多く、ちょっとは頭が良いはずの俺にもよく解らない。
話は変わるがこうやって、俺とアイツが笑いながら話していると一見他愛もない話で盛り上がっている初々しい高校生カップルのように傍からは見えるだろうが、今話していることは三角比の話だ。多分、コレでも気を使ってくれているのだろう、数学の話だからね。だが、昨日まで中学生だった奴が初めて高校に登校する時にする話ではないだろう。
普通は、高校で友達出来るかなー?とかそんな話をして盛り上がるのだ普通はね。多分。こんなことを言うとお前、言っているそばから、盛り上がっているじゃん。
と、思うかもしれないが、別に俺が盛り上がっているわけじゃなくて勝手に向こうが俺が三角比のことについてうろ覚えなのが原因で間違うのを聞いて笑って盛り上がっているのだ。それがさっきから俺が美人、完璧超人といっているのにアイツに好意を寄せていない理由だったりする。
しかも、性質が悪いことに俺の間違いを聞いて笑うのは、俺が出来ないのねといって下に見て、嘲笑っているわけでなく。まさか、仁が間違うとはな。雨が降るかも、と言って笑うのだ。だから、特に悪いことをしているわけでもないので、たちが悪いのだ。ついでに言うとクラスの女子への対応もそんな感じで、コイツは近寄られることは無くボッチだった。何か、悲しいね。だが、そんなんなのに男子からは人気がある所が、男子と女子との差を表している。
「おーそろそろ高校だね。どんな勉強をするのかな?楽しみだね」
「あーそうだな」
棒読みで答えながらも『勉強のことを考えているときとしているときはコイツは生き生きとしているな』と思いつつ、高校に着いた。この高校はもちろん頭が良い幼馴染が通うのだ。そこらへんにある都立高とは訳が違う。
名前は国立理科高校。理数系に関してはもっぱら強く、偏差値は70オーバーのときもある。そんな高校だ。訂正しよう。この高校は俺が選んだ進路だったから『理数系にもっぱら強い俺が通う高校なので』にした方がいいだろう。
ちなみにお気づきの人も居るだろうが、この幼馴染は俺についてきたのだ。「幼馴染、お前のこと好きだろ」とか言われそうだが、これにはちゃんとした理由があるらしい本人曰く「一人だとさびしいから」という理由だ。
それが解っているなら、その勉強しか話さないのを直せよと思うのだが、「直せるならとっくのとうに直している」とのことだ。なぜ直せないしと思ったが、それをあいつに聞いたところで仕方ないだろう。
そんなことも考えつつ、俺は有りがちな桜並木を通って学校に入った。そして下駄箱の側面に張ってあったクラス表を見て、幼馴染の名前があることを確認し、肩を落としながらクラス表に書いてあった1-Cクラスに向かう。階段まで行き階段を上がり、橋がある真ん中まで歩き水族館のように下に照明が付いている南校舎と北校舎をつなぐ下はコンクリート、上は銀色の金属の橋を通り、一番端の教室である1-Cクラスに着いた。
クラスに入ると俺は黒板に張ってあった座席表に書いてあったところに座りそしてバッグを横に掛ける。すると、前の席に先に座っていった黒髪黒目のイケメンがニヤリとした笑みを浮かべながら話しかけてきた。
「よぉ!イケメンさん。俺は相模 恭輔。で、さっそくだが、お前はどの女の子がかわいいと思うか?」
ニヤリとして笑みを浮かべた時点でうすうす気づいていたのだが、見た目とは裏腹にチャラ男らしい。そんなでも、偏差値69の高校に入っているのだから努力はしっかりとしているのだろう。ただ、チャラ男であることは変わらない。あの返答にはもちろん、どの女の子が可愛いかなんてそんなことは決めていないので俺はこう返した。
「いや、わからない」
「そうか、そうか。まあ、ここに入るくらいだしまじめちゃんなのはわかっていたがね。あの、女の子とかはどうだよ」
そういってチャラ男こと相模は俺の幼馴染であるアイツを指差した。チャラ男とはいえ可哀想なので、受けるショックを減らすために言っておくことにした。
「あー。アイツはねー見た通り優秀なんだが、欠点があるんだ」
期待した視線で見てくる相模にそれを告げた。
「ほとんど勉強のことしか話さないんだよ」
「なんだ、そんなことか。だったら、俺が勉強して話せば良いじゃん」
「仲良くなるときはそれでもいいかもしれないが、デートのときもそうなんだぞ」
二人の間で僅かに沈黙が流れたあと、相模が言った。
「それは、無理だな」
「ああ、無理だ」
そして話題はシフトチェンジをする。
「先輩派か?同級生派か?それとも後輩派か?」
「こだわりはない」
「そうか」
そこで、入学式の説明が始まり、俺たちは会話を止めた。そこでしっかりと説明を聞いた後、番号順に並び、入学式のために行進をして体育館に入った。そこでなぜか唐突に今朝見たリアルな夢の内容を思い出す。その夢の内容は俺が子供になっており魔法を使いスライムに苦戦しながらも勝ったりとかそういうファンタジーな夢だった。
ただ、あまりにもリアルな夢だったので一瞬本当にあったかもとか考えたのだがそれは有り得ないだろとすぐにその考えを捨てた。そこでちょうど俺は座った。
座った後、何やらかんやらあり、入学式で校長のありがたい『大嘘』話を聞いている途中で、俺はなぜか来る睡魔に抗いきれず目を閉じてしまった。さっきは俺が子供になっており魔法を使いスライムに苦戦しながらも勝つという夢を見たがそれとは別のベクトルの不思議な夢を目を閉じたときに見た。
俺は白い部屋に黒髪のロングで、白いワンピースを着た10歳ぐらいの女の子と向き合っていた。そして、白い女の子『たぶん』が神々しい声を放ち白い部屋に響かせた。
「すみません。もう、時は来てしまいました。あなたに頼るしか道がないのが心苦しいですが、時が来てしまったのです。あなたに幸が訪れんことを。開放!!」
そう、少女が言うと、俺の頭から青色の光が放出を始めた。それと同時に前世の幼い時のことを思い出し始めた。夢で見ていたことは実は前世の俺の記憶だった。そう確信したとき、俺の意識は覚醒した。「俺は神童で、天才魔導師だった」そう思わず口から漏れてしまった。すると、左隣の男子から「なにを言ってんだよ」と小声で言われながら俺は足を蹴られた。