覚醒の前兆
俺って天才魔導師なのか!?~前世は天才魔導師の高校生~(改善版)というのを出しています。読みにくいな、と感じた方はそっちならば読めるかもしれません。
魔法工業都市は{カンカン}と常にどこかで鳴り響き、魔法学校での魔法のテストで男の子がエクスプロージョンを使い、轟音が鳴り響く、そんなこの町は今、馬1頭ほどの大きさのスライム発生によって阿鼻叫喚の巷と化していた。そんな中、幼い俺とその幼い俺の腕を掴む屈強そうな男がなにやら言い争っていた。
「おい!!早く逃げるんだ!!ペンサルトの所の坊ちゃんとはいえあのスライムじゃ太刀打ちできない!!」
「勝算がない戦いなどはしない!スライムの強さもわかっている。それに、俺以外の誰がこの街を守るというのだ!!」
そう言って、幼い俺は腕を振りほどこうとするが、屈強な男が押さえつける。そして、男が悲しそうに言った。
「確かにそれはそうだろうけど……あれは超級ハンター以上じゃないと、まともにダメージを与えられないですよ」
「いや、与えられる。俺の魔力量すべてを使えばアイツを倒せる」
「あの、屋敷爆破事件のときと同じ魔法を使うのか……それなら、倒せるかもしえないが、魔力量を全部使うとなると一回しかチャンスがないってことですよ?」
「わかっているさ。絶対に成功させる」
「じゃあ、俺も行きますよ」
「いや、君には娘が居ただろう?万が一のときのために守ってやれ」
「解りました。後武運をお祈りしています」
そう言うと屈強な男は後ろめたい表情をしながら幼い俺の腕を放し、走り去っていった。すると、幼い俺は街の住人と逃げている方向の逆、すなわち、スライムの居る草原の方へと走り出した。幼い俺は日ごろ訓練しているのか、現代の同じくらいの子供より明らかに速い速度で走っていく。恐らく現代の50M走のタイムに例えれば10秒は出るスピードだ。
そして、幼い俺は休憩を挟みつつ草原に到着した。草原には、辺り一帯の草を枯らしながら進むスライムの姿があった。スライムが街に一直線に向かっていたからかスライムよりも一回り大きい線が枯れた草で出来ている。
今までは周りの養分を吸いながらだっため移動するのがゆっくりだったのか、幼い俺を見つけるなり、見た目に反してものすごい速度で幼い俺の方に向かっていく。そして幼い俺はまだスライムに気づいていなかった。そして、スライムは猛スピードで幼い少年へと向かっていく。
そして幼い俺は猛スピードで来るスライムに気づき足を僅かに震えさせながら腰に携えていた剣は抜かず、自分も火傷しそうな近距離で、作った生活魔法用の魔法式の一部の数値を変更し、赤い色の炎を作り出す。
すると、驚くべきことにあの食事を取るということしか頭に無いスライムがおいしそうなエサを我慢してまるで炎を恐れているかのように自分の身を炎によって僅かに焦がしながらも回避した。
幼い俺はさっきまでの祈るような表情から一転し、まるで、あの最強生物の弱点を知ったかのような余裕を持った表情を浮かべた。そして、幼い俺は目を閉じて何かをし始めた。ただ、何か辛いことをしているのだろう。目を閉じながら苦痛の表情を浮かべている。とても辛そうだ。
そんななか、もちろんスライムはその明らかに隙のある幼い俺を見逃したり、待ってくれる訳がない。スライムは容赦なく幼い俺へと向かう、幼い俺は音でも聞いてスライムの接近を察知したのか詠唱を始める。
「ああ、女神よ。熱き心さえも持つ女神よ。そなたの力の一部を貸しておくれ。我は神の子の人なり。神の子なり。女神よそなたが慈悲深い女神だと信じ我は望む。我にすべてを焼き払う豪炎を。すべてのものに恵みをもたらす暖かき炎を」
すると、幼い俺の周りに揺らめく赤い色の炎が顕現した。スライムが動きを体の一部を噴出させることによって勢いを相殺しようと青いものを体の前方斜め下から出している頃に、幼い俺をスライムから遠ざける守りの炎ともいえる炎は雲散霧消する。すると、スライムは体の一部の噴射を止めて、勢いを一旦土に着地し土を蹴ることによって噴射によってそがれてていた勢いを加速させ、幼い俺に襲い掛かる。
だが、幼い俺は苦痛の表情を浮かべているもののそれはすぐに止み、目を開けて恐らく筆記体で呪文を綴る。綴られていた内容は速すぎて一切不明だが、書き終わった後、すぐに幼い俺は叫んだ。「ウィンドブラスト!!」直後、スライムは幼い俺へ向かう勢いを落とすどころか勢い良く反対に吹き飛ぶ。
そして、幼い俺が一瞬目をつぶり今度は嬉しそうな表情で叫んだ。
「スーパーエクスープロージョン!!!!!」
すると、{ゴォォォォ}{バァン}その耳をつんざくような轟音と共に草原の直系約1KM、最大の深さ約5Mのクレーターが出来た。そして、計算したのか、幼い俺は爆心地から2KMの地点に居たので音で気絶したものの助かった。
{チリリリリン}{チリリリリン}そこで、俺は夢が覚めた。やけに、現実的な夢だったような。そんなことを思いながら俺は念のために付けておいた目覚まし時計を止め、制服に着替え始めた。現実的な夢を見たはずなのだが、俺は思い出せない。だが、夢とは総じてそういうものである。どんなに印象が強い夢でも思い出せないのだ。
そして俺は着替え終え、あの両親でこの入学式、という状況なのに普通なごはんに疑問を覚えながらも俺は家を出た。
タイトル通り覚醒の前兆です。別にやっぱり普通だったなどというオチではありあません。