忍者襲撃Ⅳ~死への恐怖~
そんな風に冷静に状況を把握することによって俺は軽い恐怖状態に陥った。俺の腕、足は小刻みに震えている。だが、むしろそれだけで済んでいることじたいは我ながらすごいと思う。大げさな、と思うだろうが、まったく大げさでもなんでもない。考えてみて欲しい。
俺はあの忍者から強者の風格というものを見ていて、明らかに俺とはそれは段違いの訓練量から来るものである。そして、それで焦っていたが、安心できる理由を見つけたらその瞬間、その安心出来る理由は崩れ去ったのだ。むしろ、安心出来る理由を見つけずに身構えていれば、こんなにも恐怖することはなかっただろう。
いまさらになって、先生が気づいていないか確認し、俺はこれを刺さったままにするとバレる恐れがあるので、引き抜こうとした。すると、恐怖で手が震えているせいか、手汗がすごいせいかなかなか抜けない。そんなことをしていると、自由時間になったらしい。生徒がそれぞれの設備を見て回っていた。
すこし、落ち着い俺は手と手裏剣をハンカチで拭き、リトライする。すると、あっさり抜けて俺の手を傷つけた。といったものの、血が出るくらいだ、肉が切られたわけではない。そして、手裏剣に付いた俺の血を拭こうとしたときに俺は気づいた。
手裏剣にはマーカーペンで、大きい字で「放課後屋上決闘」の七文字が書かれていることに。俺はまた手汗のせいか手が震えてしまったからか、{カーン}、手裏剣が俺の手からすべり落ちた。(おい!!大丈夫か!緊張しすぎだ。俺が手を使えたら頬をはたいてやりたいぐらいに情けないな。まあ、死とは無縁の日本に生きてきたら普通なのか?)
(でも、もう結構合成は進んでいるはずだ。なにせ、俺が住んでいた世界の常識と混同してしまうぐらいだからな。俺たちが住んでいた世界では、死なんて身近なものだっただろ?)ああ。(確かに俺も互角の相手とすら戦うのは怖かった。ただ、俺は戦わないといけなかったときは、お前みたいに、震えるだけだったか?)
いや、しっかりそういうときこそ念入りに相手の弱点を調べ、策を弄していた。(ああ、そうだ。戦わないといけないのにそのときまで震えていたら時間がもったいないし、勝てるもんも勝てないだろ?)ああ、そうだな。(落ち着いたか?)ああ。
(よし、じゃあ)策を弄することにするよ。




