忍者襲撃Ⅲ~影が薄い女~
そしてその少女、いや女性かもしれない女は俺を見るなり、驚いた顔を見せたがすぐに元に戻った。あの、顔はどこかで見たことがある気がする。ちなみにその女は校章が右胸あたりに縫われている学校で統一されている白い色の作業服を着ており、とてもスレンダーで驚いた顔を見せたときは大人びた雰囲気を漂わせていた。
だが、不思議なことに今ノートパソコンにプログラムらしきものを打ち込んでいるときには高校生にしては子供らしい陽気な雰囲気を漂わせている。顔に関しては黒髪黒目だが、特に印象が残るような顔ではない。その良くも悪くも無い印象の無い顔のせいか、第一印象はどこにでもいそうな手足が長いまな板女性。という感じである。俺の頬を冷汗が伝っていった。
もしかしたら、前世の記憶とさっき見た雰囲気のギャップが無かったら他の生徒と同じように違和感無く座っていたかもしれない。というものの、他のクラスメートは大砲に気づくが、全員が全員あの女の存在には一切気づかない。この国立理科高校で言うのもなんだが、まるで女が幽霊のようである。
ここの都市伝説に○○を開発しつづける幽霊。なんて、ものがあれば信じたかも知れない。それぐらい本当に、全員が全員、女の存在を気づかないのだ。そして前世の記憶のお陰であいつが唯の凄く影の薄い女でないのもわかってしまう。
まあ、といっても看破したわけではなく驚いたときにあの女が一瞬気配をコントロールし損ねたお陰だが。ちなみにその気配は達人の一歩手前の洗練された雰囲気だった。
もちろん、その雰囲気を「柔道かじってましたー」とか「剣道日本一取ったことがあります」程度の人間では出せない。なぜかといえばこの雰囲気は最低でも十五年ぐらいは修行しないと出ない。
だから、高確率で女性なわけだ。ちなみに達人の雰囲気は最低でも三十年は修行しなきゃダメである。これらの事柄から俺の中では厄介な結論が出た。それは「あの女は忍者」だ。普通に考えればわかることだ。
達人一歩手前の洗練された雰囲気。まるでここにいて何かを作っても当たり前のような溶け込み具合『気配を薄めているのかもしれないが』。そして俺を見るなり、驚いた顔。まず最初でかなりの武芸達者なことが解り、次で暗殺者を彷彿とさせる。次で高確率で魔法に精通していることがわかる。
なぜ、魔法に精通していることがわかるのか、といえば単純な話で俺は有名でもないし、アイツと知り合いでもない『覚えてないだけかもしれないが』。なので、魔力量が多くてビックリしたのではないかと思う。そしてあの女は誰が魔法を使ったのかずっと見張っているのだと思った。
なぜかといえば相模は「すぐに忍者に襲われる」とか言っていたが、魔力感知結界ではよくよく考えてみれば、使用者は割り出せないのだ。
そんなことを考えていると{ゴン}。忍者と思わしき女が居る方向から手裏剣が飛んできて机に刺さった。どうやらなぜかばれているらしい。