事件の前奏曲《イントロダクション》Ⅶ~天才少女との出会い~
2分ほど走って教室に入ると幼馴染の席に座る幼馴染と相模が言っていた生物学が得意な茶髪のメガネを掛けている女の子が机をつけて食べていた。その幼馴染の姿は楽しそうにしているものの時折心配そうにチラチラと斜め後ろの席を見ていた。そんな姿を見たあと俺はバッグの中からドライアイスで冷やされた弁当との箱と冷やし過ぎないようにわざわざ隔離されている弁当箱を取り出すと自分の机をつけて二人に聞いた。
「一緒に食べても良いかな?」
そうすると、幼馴染は嬉しそうに、メガネを掛けている女の子は戸惑いつつも
「良いよ!」
「良いです。よ」
と承諾してくれたので俺は腰を下ろし弁当を机の上に置いた。弁当を開封しようとすると3分の2は弁当を食べ終えている幼馴染はメガネを掛けている女の子を紹介しだした。
「この子は湯川 沙理名。理科以外のことはあまり得意でないけど、理科の生物学は凄くて大学並みですよ!!あの日本学生科学賞で内閣総理大臣賞を取ったりISEFでThird Place Award。つまり三等賞を取ったんですよ!!凄くないですか!!」
「彩科さん止めてください」
「取り合えず落ち着け。ほら、本人がはずがしがっちゃっているだろ」
そう、興奮している幼馴染を抑えさせながらも俺は有名な論文コンテストなんて知らないので考えて凄さを図った。まず、最初の日本学生科学賞の内閣総理大臣賞は凄いだろう。内閣総理大臣賞があるということは国が開催しているということだ。なので、そのコンテストは間違いなく規模がでかい。
そして内閣総理大臣賞は、一番すごいというのが普通である。ということはでかい論文コンテストで一番を取ったということだ。確かに凄い。簡単に言えば甲子園で優勝したのと一緒だろう。次のはISEFだが、そこに関係するだろう文字をいれれば簡単だ。
まずIだが、industrialというのも考えたのだが、工業は生物学に関わってこないだろう。ここはたぶんinternationalつまり国際的ということだ。ここで、もう凄さが解った。さっきのが甲子園だとしたらISEFは世界的な野球大会であるWBCである。そこで三位に輝いたのだ。凄すぎる。
そして、湯川さんは他の教科が得意でないとのことなので推薦で入ってきたのだろう。確かにそれだけ聞くと、気が合いそう。なのだが、今また興奮気味に湯川さんが出した論文の凄さを語る幼馴染の言葉を聞いて顔を真っ赤にする湯川さんが幼馴染と気が合うのだろうか?それはいいとして時間が押しているので食べなければ。
弁当のふたを開けてみると冷やされていた弁当の方には出し巻き卵、大量の刺身。そしてほうれん草のおひたしが入っていた。そして、もう片方の暖かい弁当を開けようとするともう泣きそうな湯川さんが目に入ったので、俺は開ける前にまるで念仏のようにブツブツとつぶやいている幼馴染に言った。
「ほら、前を見ろ。湯川さんが泣きそうになってるだろうが!止めてあげろ」
「ほ、本当だ。すみません、湯川さん」
「いいんです。あなたに悪気はなかった」
そう、涙をこらえながらそれでも無表情を貫く湯川さんに感心をしながら俺はもう片方の暖かい弁当を開ける。すると、そこから出てきたのはご飯ではなくハッシュドポテトだった。
「へえ!!?」
そう思わず驚いて声を自然と出してしまった俺に湯川さんとアイツが首をかしげて聞いてきた。
「どうしたの?」
「どうしたの仁。嫌いなものでもあった?」
「和食のおかずにアメリカンな主食が付いてきたから驚いちゃってさ」
俺がそう言うと湯川さんとアイツが「どれどれ」といいながら弁当を覗いてきた。すると、二人から女の子特有の甘いにおいがふわりと漂ってくる。そんなことを考えていると湯川さんがペラっとハッシュドポテトをめくり「あ、ポテト発見」と俺に向かい報告してきた。それを見て、聞いた俺はにおいのせいか全くわからないが一瞬思ったことをそのままつぶやいてしまった。
「可愛い」
もちろん至近距離なので幼馴染と湯川さんに聞こえる。俺はボーっとしていた状態から幼馴染の悲しそうな目線で俺はその状態から元に戻った。幼馴染の視線からもわかることだが、まずいことに湯川さんを思いっきり見たところで言ったので誰に可愛いと思ってしまったのかが一目瞭然だ。
そんな風にあせっていたら、いつの間にか湯川さんは顔を真っ赤にしながら走りさり、幼馴染は「ちょっとトイレ行ってきます」といってお弁当を片付けるとお弁当を持ちながら去ってしまった。先生の件といい、この件といい、忍者が俺を殺しに来るんだから厄介ごとは起きないでくれよ。