家族ではない家族Ⅰ~入学パーティー~
俺がドアを開けると同時に{パン!!}と音を出しながら目の前にある二つのクラッカーが鳴った。そして、赤い紐やら青い紐やらがフローリングに落ちていく。すると、両親が揃って嬉しそうに言った。
「「高校入学おめでとう!!!」」
「ありがとう」
あまりにもの歓迎ぶりにため息をつきそうになったが取りあえず俺はそう返しておいた。ちなみに、左にいる周りが言うには美女のアメリカ人が母で、右にいるカッコいい日本人が父である。見ての通り厳しいどころか少なくとも俺には甘々な両親だ。
ただ、妹への教育を見るにしっかり分別がつくまでは別に甘いわけでは無いらしい。まあ、そうしないと我が儘な子に育つだろうからね。よく、分別がつくまで我が儘を聞くのを堪えたと、この甘々な様子を見ると思う。
そんなことを思いつつ両親に着いて行くと、いつものリビングに来た。ちなみに、妹は母親に「そろそろ兄離れをしたら?」と怖い顔で言われてしまっているので家に入ってからは俺の腕には抱きついていない。
リビングに着くと、いつもとは違いテーブルにはフライドチキン、フライドポテト、ピザなどのアメリカな感じがする健康には良くないだろうが、確実に美味しいであろう料理が所せましと並んでいた。
テーブルの真上には高校入学おめでとうとカラフルな字で書いてある垂れ幕があり、イスには仲良しの御近所の上堂家夫妻とその娘が座っている。
仲良しの御近所の上堂家夫妻とその娘っていうのは要するに幼馴染とその両親ということなんだけど。アイツも苦労しているだろう。だって俺と同じように高校の入学式の為だけにあの忙しいアイツの父親が休むぐらいは愛されているだろうから。
そんなことを考えていたら、いわいるお誕生日席というポジションにアイツと揃って座っていた。いや、座らされていた。すると、俺の母親が言った。
「二人とも高校の入学おめでとうございます。まだ、二人には早いのでお酒はないですけど、楽しみましょう!!!頂きます!!」
「頂きます!!」
アメリカ人であるものの日本的なパーティー?をすることに驚きながら、俺は目の前にあったフライドチキンを自分の取り皿に盛った。フライドチキンは母のお手製なのか外はサックと中はジューシーで衣にはチキンに良く合うスパイスが入っている。KF○には悪いが正直言ってこっちの方がおいしい。母の料理は上手すぎるのだ。そんな風にフライドチキンを食べていると母が言う。
「高校生活どう?」
「まだ解らないでしょ」
俺がそう笑いながら返すと「そうだよな」と言いながら父が笑い、笑いがわきおこった。母は「だよね」と言いながら自分も笑っている。そんなこんなでワイワイ喋りながら食べていると、俺の父親が話し掛けてきた。
「気になる女の子とかいたか?」
「いや、全然」
「まあ、そうか。こんな、綺麗な幼馴染みがいるからな。この子に比べれば他の女の子は霞んじゃうな」
そう、さり気なく父が他の女の子なんかより幼馴染みの方がいいから幼馴染みと付き合ったら?的なことを俺に言うと、「この子に比べれば他の女の子は霞んじゃう」という1文が嫌だったのか、母の表情が曇った。
だが、意図がわかっているのかそれ以上は母は何もしない。一方アイツはそのことに気づいていないのか言葉を返した。
「いえいえ、そんなことはありませんよ」
アイツは表情に表れるレベルで嬉しそうだ。まあ、そうだろう。父みたいなイケメンにとびきりの美人だ。と言われたら誰もが喜ぶだろう。そして、まるで事前に打ち合わせをしていたかのようなタイミングでアイツの父親が言う。
「仁君に引き取って貰えると安心ですね。なんてね。ハハハ」
「そうね、安心ね」
俺の両親もアッチの両親も事実そうなのだろう。俺が両親でもどこの馬の骨とも解らない男よりもある程度顔がの良くて成績はかなり良い、理解ある幼馴染みの方が絶対に安心だ。アイツの性格のこともあるしね。
そんなことはあったもののそれ以降は特に何もなくパーティーは終了した。