第七話 ラーグの気持ちは……?
ラーグの後ろ姿を見つめて、レイルは息をついた。
(私が不安がってる場合じゃないのよ。ラーグやロイ隊長に迷惑をかけるなんてこと、出来ないわ)
しかし今回ばかりは、いつもとは勝手が違う気がしてならないのだ。気のせいならばいいのだけれど……。
コンコン、とノックの音が聞こえて、俺は意識を浮上させた。
「ラーグ?入るよー」
「ん?メシ?」
「うん、そう。できたから食べよう?」
「あぁ」
俺は顔を出したレイルに返事を返しながら、ぐーっと伸びをして体をほぐした。
「まだ眠い?」
伸びて欠伸をする俺を見て、レイルは小首を傾げながらそんなことを聞いて来た。
「んー、違う。でも、寝起きってこんな感じじゃね?」
「まぁね、そうかも」
「だろ?」
起き出した俺は、レイルと一緒にミーティングルームに向かう。
食事はミーティングルームで取っている。着くと既にロイ隊長は自分の席に座っていた。
「さぁ、ご飯にしましょうか」
「あー、腹減った~」
「……がっつくなよ」
「大丈夫ですよ、分かってますって」
多分ロイ隊長は、食糧のことを言っているのだろう。
地上にいるラキたちに下ろしてもらえばいいのではないかとも思うが、そういうことは最小限にしたいらしい。
ま、俺もワゴンの食糧が尽きる前に、地上に戻るつもりだけど。
そんなことを考えているうちにレイルが用意してくれた夕食を見た俺は、子供のようにテンションを上向けた。
「おっ、カレーじゃん♪」
「今日は疲れただろうし、ラーグの好物にしてあげたのよ」
「さんきゅ~、レイル!良い奴~♪」
「ふふ。まーね」
「いただきま~す」
レイルとそんなやり取りをし、俺が嬉々としてスプーンを手にした時、ふいにロイ隊長が俺たちに話し掛けて来た。
「……お前たち、仲が良いよな」
今まで黙っていたロイ隊長が口を開いたことに少し驚いていた俺は、とっさに何を言われたのか、理解できなかった。
しかしレイルは違ったようで、いつもの調子で応えた。
「あぁ、私たち実は幼馴染みなんですよ」
「……仲良いのは昔っからだよな」
俺はレイルにワンテンポ遅れる形で反応した。
「そうか。……恋仲になったりはしないんだな」
「え?!」「は?!」
「……すまん。言ってはいけないことを言ったか?」
ロイ隊長のあまりにも唐突過ぎる爆弾発言に、俺たちは焦った。
が、すぐにロイ隊長が謝ったため、話は自然にそのまま消えるのだった。
言ってしまえば、ラーグとレイルはおそらく両思いである。ただのレイルの自惚れでなければ、だが。幼馴染みという立場を除いても、友達以上恋人未満の状況であることは確かだ。
しかしそれではなぜ二人は恋仲になっていないのかと言えば、そこには今ここには居ないが、ラキが関係してくる。
ラキは実はラーグのことを好いているのだ。レイルはそのことを知っているために、言うに言えない状況なのである。
ラーグはラキに気持ちを知らないが、おそらくラーグにとってのラキは仲のいい女友達かつ仕事仲間、くらいのもので、恋仲になることは無い、はずである。そのあたりは、レイルとしては安心すべきところである。
だがなぜか、ラーグとグレイの二人は、女子隊員の中で競争率が高いのもまた事実。
ロイ隊長の何気ない一言で、レイルの心は揺れるのだった。