第六話 初期調査とこれからのこと
「……おいラーグ、聞こえてるか?今日はこれで終わりにして、開始地点に戻るぞ」
「隊―長―、俺らこの辺グルグルしてたわけじゃないっすよね?」
車に乗り込んでドサッとそこらへんに座った俺の横に、レイルが来て、俺に言葉を返した。
「特殊塗料落としてるから大丈夫よ」
「特殊塗料?なんだそれ」
「光を当てると光るの。ブラックライトじゃなくても光るから車のライトでも分かるのよ。かつ塗料自体は透明だからそのままじゃ見えないし染み込むから……まぁここはどうか分からないけど、でもそのおかげで消えないし……」
「ふぅん。マーキングにはちょうどいいってわけだ」
「まぁ、そういうこと」
「はぁ、疲れた~。早歩きってツラいよな、結構」
「あ、そうだよね。お疲れ様。あ、水持ってくるね」
レイルが奥の方に入っていく。と、ロイ隊長が話し掛けて来た。
「明日には調査チームの車を見つけるぞ。いつものポイントは明るくて地上との通信もしっかりできるが、あそこから離れると周りも闇に包まれて、通信の調子もおかしくなる」
「……そうなんすか。俺、外歩いてたから暗いな、ぐらいにしか気にしてなかったっすけど……」
「あぁ、ほぼ一日空けたからな。ラキとグレイと通信をして、地下の様子の分析でもしてもらおうと思っている。安否も確認できるからな」
「そうっすね。でもグレイとラキなら、俺らが全滅しても生きてますよきっと」
「あぁ。そんな気もするが、全員で行動する作戦には今更変更できないしな」
そこで扉が開く音がして、レイルが戻ってきた。
渡された水の入ったグラスを受け取る。
「あぁ悪ぃ。ありがと」
レイルに礼を言ってゴクゴクと飲み干すと、「あ、飲んじゃったの?もう一杯持ってくる?」とレイルが言った。
レイルに行かせるのもなんだと思った俺は、「あぁ、うん。自分で行くわ。ありがとな」とレイルに言って奥へ入っていく。
正直言うと、俺、ロイ隊長苦手なんだよねー。とっつきにくいっていうの?オーラがなんか、ねぇ。隊長なのになー。
「おーい、ラーグ?」
「んー?」
レイルに呼ばれて奥から出て行けば、ロイ隊長が言った。
「俺たちは今、三人だけだ。明日の行動をどうするか、全員で決めようと思う」
「はーい。まぁ、そうすればバラバラになっちゃってもどうにかなりますもんね」
「俺も特に異議なし」
「そうか。そうだな……明日もラーグに外を歩かせるわけにもいかないだろうから、車のスピードで長距離を走ってみようと思うんだが、お前たちはどう思う?」
「それ賛成。俺今日さすがに疲れたし、戦闘になったらやばいし」
俺は真っ先に、ロイ隊長の言葉に賛成した。
また明日もこんなことをやらされたのでは、いくら訓練を積んでいるとはいえ、無理が出てくるはずだ。
「レイルはどうだ?」
「あ、はい。私もその案に賛成です」
レイルもロイ隊長の案に賛成した。これで明日の行動予定は決まったようなものだ。
「じゃー俺、中にいられるんだな。よかったよ、外危ないし」
「そうだね。疲れたなら仮眠でもとる?ご飯作ったら起こすよ?」
レイルの言葉に肯定の返事をしようとして、その場にはロイ隊長もいることを思い出した。
ちらとロイ隊長を見れば、彼と目が合った。
「あ……」
「今夜も見張りがある。ラーグ、お前からだからな」
「あー、はい、分かりました。……んじゃ、ちょっと寝てくるわ」
後の言葉はレイルに向けて言った。俺は仮眠室に向かおうとして身を翻す。
すると、付いて来ないと思っていたレイルが、後から付いて来た。
「見張りまでにちゃんと寝といてね。疲れただろうけど、きっと明日には全部見つかって帰れるよ」
「そうだな。そうなると嬉しい」
レイルの言葉に返事をして、俺は仮眠室に入った。
廊下に残ってそんな俺を見つめるレイルが、ため息を吐いた気がした。