妖精さんの旅
静かな森の中にある一つの小さな湖の畔に一軒の家がありました。
石と木で造られたその家はとても小さな家でした。
その小さな家には一人の小さな住人が住んでいます。
黄色のパステル色の洋服に同色の帽子を被っている愛らしい妖精さんです。
妖精さんは毎日森の動物達と遊んだり、助け合ったりして楽しく過ごしていました
けれど森には自分と同じ妖精はいませんでした。
ある時、自分には他の動物達の様に同じ種族がいないことに気付いた妖精さんはとても寂しくなりました。
そこで妖精さんは仲間探しの旅に出ることにしました。
森の動物達に旅に出ることを告げて妖精さんは一人旅立ちました。
妖精さんは生まれて初めて森の外に出ました。森の外はとても広く、森の中とは違った景色がありました。
ある日妖精さんは青い羽をした鳥に出会いました。
妖精さんは訊ねます。
「自分と同じ仲間が何処に居るか知らないか?」
青い鳥は答えました。
「この先にある人間の国に君と同じ種族を見掛けたよ。」
青い鳥に聞いた通りに妖精さんは人間の国に向かう事にしました。
一日かけてようやく妖精さんは人間の国にたどり着きました。
人間の国はとても大きなものばかりでした。妖精さんは自分より大きな人間や建物に驚きました。人間の子供ですら自分よりはるかに大きいのです。
妖精さんは人間に踏まれないように道の端っこを歩きながらどう声を掛けたら良いのか考えました。
悩んでいた妖精さんに一匹の年老いた猫が声を掛けてきました。
「何を悩んでいたんだい?」
妖精さんはその声に振り返り答えます。
「自分と同じ仲間を探している。人間に訊ねたいけれどどうすれば良いのかわからない。」
その答えに猫は、
「人間に?止めときな。奴等はお前を見たら捕まえようとしてくるよ。」
妖精さんは驚きました。そしてさらにどうしたら良いのかわからなくなりました。
猫はそんな妖精さんの顔を見て、
「そんな悲しそうな顔をしないでおくれ。私はこの国に居る妖精を一人知っている。そこに連れてってあげるよ。」
猫は妖精さんをその背に乗せて行きました。
妖精さんが猫に連れてきてもらったのは一本の木の上でした。
その木にあるうろに猫は声を掛けます。
「おーい、居るんだろ?お前と同じ子を連れてきたよ。」
すると、そのうろから緑色のパステル色をした洋服と帽子の妖精が出てきました。
妖精さんは初めて出会った自分と同じ仲間に喜びました。
「こんにちは。」
緑の妖精も妖精さんに挨拶をしました。
その後、妖精さんは緑の妖精と猫と話をしました。自分が森の中で森の動物達と過ごしていた事。そして、そこには自分と同じ種族が居なかった事。だから仲間探しの旅に出た事など沢山話しました。
しばらくして緑の妖精は言いました。
「そうだったのか。でもこの国には自分しか妖精は居ないよ。」
それを聞いた妖精さんは再び悲しそうな顔になりました。
「では、君の他にここには仲間は居ないのか。」
緑の妖精は妖精さんに近寄って頭を撫で、慰めながら言います。
「僕はこの場所が気に入っていてね。でも大丈夫、この国を出てまっすぐ北に行くと一つの大きな森がある。そこの奥に他の仲間が沢山暮らしているよ。」
その話を聞いた妖精さんは嬉しくなり、
「そうなのか!ありがとう。そこへ行ってみるよ!」
元気を取り戻した妖精さんを見て緑の妖精は、よかった。と言ってその森へと向かって行った妖精さんを猫と共に見送りました。
緑の妖精に言われた通りに、まっすぐ北に向かって行く妖精さん。幾日かかけてようやく目的の森へたどり着きました。
ここに仲間が居るんだと思った妖精さんは嬉しくて嬉しくて仕方ありませんでした。
森の奥へと進んで行くと少し拓けた場所に出ました。
するとそこには、石と木で造られた小さな家が沢山建っていました。
その光景に目をまん丸にした妖精さんはすぐさま自分と同じ仲間を探しました。
仲間は直ぐに見つかりました。
赤や青、緑、白や紫、黄色といった色んなパステル色の洋服と帽子の妖精達。
その姿を見た妖精さんは駆け寄って声を掛けます。
「こんにちは。初めまして!」
声を掛けられた妖精達は皆笑って妖精さんに言います。
「こんにちは。」
「初めまして。」
続けて、
「「「妖精の里へようこそ!!」」」
こうして妖精さんは沢山の仲間達に出会い、仲間として里に迎え入れられました。
そして、妖精さんは仲間達に今までの事や出会った者達の話を楽しそうに話します。
妖精さんの旅は静かな森から始まりました、と。