第五話 『息災と宅食のすゝめ』
前回までのあらすじ:
死線から一夜明け、平和な学生生活を人知れずことほぐ衛介。同級生の桧取沢歓奈に鼻の下を長くしたりして、大いに快哉を叫ぶ。そんななか連続殺人事件の続報が飛び交ったりもするが、衛介は難しくは考えないようにしていた。
その夜、夕食中の彼を訪ねて来た女の正体とは……。
一
朋有り遠方より来る、また楽しからずや。――云わずと知れた論語の一節である。
ところが当世、例えかつて中学で同じ師に学んだ朋とて、斯くして夜分遅く唐突に訪ね来られることとなると、それは素直に楽しと感ずる以前にあまりにも意想外でいけない。もしその相手が野郎なれば寧ろ一瞬の考も無く追い返すところやも分からない。
但しここで、それがうら若き娘であったとなれば果たして如何であろうか?
思えらく、云うに及ばず話は別と。
そもそも男子高校生とは夢見がちなる年頃につき、妙な夢を見てしまうも得てして常といえよう。何せ、これは我らがY染色体と本能の然らしむるところなのであるから。
然り。事もあろうに訪ねてきた客とは住吉千歳その人だったのである。当分は会うことも無かろうと踏んでいたものが、何と昨日の今日だ。
彼女は中型スーツケースを引きずり、背には薙刀が入っていると思しき武道用の袋を担いでいた。
そしてその憂さげな表情に、嫌な予感が泉のごとく沸き起こる。一体その身に何が降り掛かったのやらはいざ知らず、ともあれ一まず卓へ上げて事情を訊くべきであろう。
――そう思い先刻より卓袱台の元にかけさせて飲物、食物など与えてはいるのだが、どうしたもんかこの女、何一つ話す前に、我が夕飯のつもりとして買ったツナマヨを呑む様に胃へ込めてしまった。
一方こちらが何をいくら訊かんと問うても、等閑な生返事の他何も返っては来ない。座するままに、つくねんというか呆然というか、その様相には晴れぬものがあった。
「…………」
「なあ、いい加減にせんか。一体何があったんかくらい説明したらどうなんだよ」
「べ、別に?」
こんな調子であっては埒も明くまい。鳴かぬなら、鳴かせてみせよう不如帰。と、徒にも羽柴の太閤を気取って俺は一つ鎌かけを試みた。
「アレかぁ。親と大喧嘩でもして家出を決め込んだは良いが宿無し浪人ってか。俺はそういう娘を呼び込むよーな掲示板なんぞ、使った覚えはねえんだが。全く、こりゃ今日は夜が長げえぞ」
「ち……違うから。やめてよ、変態」
それ見よ、存外早くも変化が見られる。
「あのな、こちとらお前さんが何も云わんから冗談の一つも扱いて和ましてやってんじゃあねえか。云うに事欠いて変態はなかろ」
「…………ご、ごめ。えと、あの、ね……何ってゆうか、その……」
しめたり。
さて、彼女の話のあらましは以下の通りである。
まず我々が災難に遭う前日より、住吉家の家族は千歳と、名古屋に単身赴任中の父を除いて奈良に在る母方の実家へ帰省していた。学校のある本人は黄金週間に突入する明日には現地へ着けるよう、一足遅れて今夕新幹線で発つ予定であったそうだ。
ところがそこからが問題であった。
昨晩の一件から無事生還して翌日、つまり今日は俺と同じく一応普通に学校へ行ったというが、帰宅の際友人らと分かれた段階で後を付けて来る者が現れたのだ。足早に家まで辿り着くと、あろう事かその人物は昨日同様見た事もない動物に姿を変えて家へ押し入ってきたというのである。
何としてでも護身すべく居間と台所で薙刀を振り回し奮戦したところ、最後には灯油を浴びせる事で辛勝したらしいが、その結果もはや家は住むべからざるになり終んぬ、とのことらしい。
鶴亀、鶴亀。先ずは知人の無事を喜ばねばならん。して、それ以上に戦慄を覚う。何せ昼間の悪い予想は現実となってしまっていたのだから。
――加え、前回より明らかに手口が荒くなっているではないか。追跡して行き成り家へ殴りこむなど、最早隠密に事を遂行せんとする意思は見受けられない訳だ。
縷々一通りに語り終えた千歳は、膝を抱えてがっくりと項垂れている。
こればかりは素直に気の毒と言う他あるまい。定めし辛からん。只、これほど退っ引きならぬ状況に置かれても泣きべそ一つだに掻かずにいるのは、彼女の強さというものやも知れぬ。
同情と感心の混ざった妙な気分にかられる吾人であった。
「アー、それにしても天晴れ、よくぞ今度はただの一人で退けもんだ。もしや喧嘩の才能あるんでねえか、お前」
「猛獣相手に刃物振り回すのどこが喧嘩だっての? ねえ、ふざけてる?」
「や、すまん。褒めたかったのさ」俺は一呼吸おくと、女の剣幕にたじろぎつつ「……まず俺たちゃこの武器がどんな代物なのかすらよく分からんのに、首尾良く使いこなすとは。それで昨日ん時も思ったがよ、やっぱし流石に元・女バスのスポ魂ちゃんは運動神経良いのな」と付け足した。
「昨日はむこうが弱ってたからってだけ。かんけー無いから、そういうの」
時に先程までとんと忘れていた話として、この女は中学生時代、女子バスケット部の主将を務めていたのであった。
我が校自体が殊更強豪たるということこそありはしなかったものの、個人の技量で評するなれば千歳の実力は相当な折り紙付であったと云えよう。それは学年全体でも有名であったがゆえ、こんな俺でもよくよく認知している。
然りとて昨日駅からの道中で聞いたところに因れば、今は帰宅部なのであろう。なるほど道理でコギャルの気が出ている訳か。
「お前がやけに強えのは置いといて、あのオバサンがそいつを貸しっパにしといてくれたのには一先ず感謝だなァ。幾ら何でも武器が無きゃどうにもならんかったろう」
千歳の薙刀袋を指し、そう云った。
「うん……相手は今度こっちに武器があるなんて予め把握はしてないし、気ぃ抜いてたんだと思う。でも最後は火い付けて無理やりやっつけちゃった感じもあるわけで……ね。ハァ、実際昨日以上に生きてんのが不思議だわ」
大したものである。例えば俺一人ならば、仮に刀を以て全力応戦を試みたところで劣勢の挙句に首をもがれていたに違いない。咄嗟に油を撒くなども当意即妙、その弊害はどうあれ非凡な機転の利かせ方なのではなかろうか。
「そんで、これからどうする。とりまァ奈良へは行くのかい? 何より燃えた家はどうすんだ。親御さんが戻ってから大騒ぎじゃねえか」
「……それ、ね。新幹線の券なら……燃えちゃった。今から買いなおすお金なんかないし。あと別に家は全焼した訳じゃないんだけど、何かもうシッチャカメッチャカでさ……はぁ。ワケわかんないよね、ホンっト」
心より同情せん。前世に何をしたのやら、これ程までに運悪き人間がいつの時代にあったものか。これを捨てておけと云うのは酷である。――しかし詰る所、この女は我が家に何を求めて来たのであろうか。そこを未だ聞いていない。
「ンでもって、そろそろご用件をだな。俺は何か手伝えそうなのか? 困った時は何とやらだぜ」
「じゃあ…………」
「おう? どうしたい」
妙な沈黙が走る。丸で俺が今から刑罰の宣告でも突きつけられるが如き空気である。次に一瞬だけ歯を食い縛ったかと思うと、彼女は以下の通りに述べた。
「っそ、その、つ、つまり、暫く泊めて……くんない、かな」
「んー。……んんん?」
何たる事か、如何なる話か。
この九尺二間で共に寝泊まりするとは。女子が、女子高生が。
暫くとはどの位であろうか。三日、五日、一週間か、もっとか。一ツ屋根の下で。そもそも我々は決して親しい間柄ではないのに、しかもこういった女に限って俺なんかの部屋に寝起きするなどと本気で宣っているというのか。……それに千歳よ、何だその顔は。
「ちょ、ちょ、ちょいと待てやい。泊まるとて他にもっと家あんじゃねえかっ。元中の女子で近所に住んでるのとか、仲良い奴いくらでも居るのだろ」
「だって……あたしもこんな所来たくなかったよ。でも昨日の事情話してちゃんと通じんのって、どー考えても衛介しかいないんじゃん」
然もありなん。こればかりはやむを得ない。事態が事態なることは重々分った。
良かろう、理由はどうあれこれを喜ばずして以て漢は名乗れぬ。快諾以外に思わしき選択肢は存在せず、と見たり。…………いや、一応断ってはおくが、俺は特別やましき事をば考え期待している訳ではないと承知されたし。八幡に誓ってだ。
しかしながら不可抗力的な経緯を経るものや、据え膳として供されたものに関してはその限りとしない。あわよくば“卒業”などと巡らせているのは飽くまで本能の然らしむるところなのである。人類が動物種に分類さるる以上、不可避の性なり、とのみ記しておく。
さて、これに先立って問題たるのは他ならぬ生活費であった。安い仕送りのみで実際に一週間二人分物のを買うのは、恐らく中々厳しい。居候からも金を徴収する必要はありそうだ。
「オホン。まぁその……オトコ一人ん家にお前もタダで泊めてもらおうなんて、思っとらんよな」
――はてな。
何を際どい云い草をしているのか俺は。肝心な時にこの愚かさよ。これでは丸きり下心丸出しの如く映るではあるまいか。否、縦しんば邪心を抱けどそれを窺わせぬが紳士ではなかったか。
「え…………ウっソ……嫌……そんなマジ……で? アンタ、まさか……」
南無三、勘違い甚大にして、弁解の巧拙まさに身の活殺を分かたん。しおらしかった相手は、その顔・声両色の変わることこれ著しい。全く夕べ肉体を亡ぼしかけたと思えば、今宵は社会的死亡とは。こんな剣呑、如何せん。
「誤解だ! 今のナシだ! えい、もういっぺん云い直させろ!!」
「ヤっ、ヤダ! こっち寄んな! 獣! 野獣っ!」
「待ぁて待て、待っとくれよ。そ、“そういう”意味じゃねえってんだ。一度俺の話を聞けって」
「は? なァに? “そういう”って一体どーゆー意味なのッ」
「えぁっ……? ぃやいや。それは、その」
嗚呼、軌道修正不可能。
「……キモ」
「な!?」
出たりや、女子高生。羽虫が居ればきもい、蛙が出ればきもい、おたくを見ればきもい。恐らく酸性雨が降りても黄砂が舞いても、彼女らに云わすれば「きもい」のであろう。これだから口の悪い輩は嫌なのだ。
元は我が失言に因した事とは云え、もう我慢が罷りならぬ。
「あ……阿ッ呆が、それ以上ぬかすと泊めてなんかやらんぞッ。ここにお前を住まわせるにあたり、ちったあ役割持ってもらおうってだけの話だい!」
「……なぁんだ。どんな感じの?」
「俺ぁな、見ての通りここで一人暮らしをしとる訳だが、仕送りだけじゃアお前さんと二人分の生活をすんのは難しい。だからそっちのバイト代も、ある程度生活費に回してもらう。文句あるめえな?」
「まぁ、そんなら良いけど」
そして、あと一つ思いついた提案がある。
「それからもう一個。さっきコンビニオニギリを食って解ったとは思うが、この所俺の飯は毎日あんなもんばっかしだ」
「へ、嘘でしょ? ないわぁ……」――心底呆れている顔だ。
「残念ながら、ほんとなんだわコレ。で、このままじゃあ寿命は縮む一方だかんね。物は相談だが、ここは一つ俺にまともな飯を提供しちゃあくれんか」
千歳は怪訝そうに首を傾ぐ。
「ふうん。後一つって、そんなんで良いんだ。勿論あたしだってここで毎日そんな生活なんかしたくないから、料理くらいは全然面倒じゃないよ。ま、大したもん作れませんけどね」
事も無げに、今度は首を縦に振った。これぞ万々歳なり。俺は自今少なくとも数日の間、晴れて暖かい飯を食うに叶った環境を得たのである。何であれ、還元される物は充分に多い。
「うお、っしゃ! ん、んじゃア決まりでな。所詮何日かの話だ、是非ゆっくりしておいきよ」
「……助かっちゃった。えっと、一応挨拶………宜しく、お願いします。不束者ですが」
「へっええ、こりゃこりゃ何か妙な感じだ」
千歳は笑った。
今や何ら接点もない中学の同級生を、同じ部屋に住まわせるなど、傍から見れば実に可笑しな話であろう。
後はただ恙無きことを祈るのみだ。とは云え挿し当る不安な要素は、見た所この女が魔を呼び寄す厄介な体質持ちたるらしい、ということくらいである。
一つにして“珠に致命傷”と云わざるを得まい。
二
年頃の乙女が、俺が如き生臭坊と寝起きを共にするのは困難をきわめる。
万一我々が恋仲であるともなれば話は別だが、今回は事情が事情とあって、文字どおり拠所無き身の知人を泊めてやるだけの話である。困難さゆえ、折角平和的に話を纏めていたところに早くも暗雲が立ち込めだしていた。
元来我が家、即ち「南井然ハイツ203号室」は親父と俺二人で住んでいたもので居間の広さ六畳、いずれも小さな台所、便所、風呂と申し訳程度の物干し台を備えた部屋だ。今昔とおして掃除は行き届いていた例が無い。
まず打ち当った壁は眠る場所である。布団自体は前にお袋が置いていった物を使わせるにせよ、斯くも狭き部屋で雑魚寝、というのを千歳は何より嫌がった。
居候の分際で随分な身勝手にも思えるが、先の失言に因って彼女が今一つ俺を“そういう”面で信用していないことと、寝相の悪い俺が夜中に蹴りでも入れてしまっては拙いのは事実だ。
前者は獣にとっても高々一週間弱の辛抱故に兎も角として、後者には自覚があるだけに捨ておけぬ課題となった。しかしそれすらもそう簡単には決まらざるが現実である。
「……あんたさぁ、暫く押入れとかで寝てちゃくんないの。いや、ちょっと悪いかなとは思うんだけど」
如何にぞや、厚かましきこと極まりなき要求が出た。幾ら相手が女だからといって、おいそれと唯々諾々に屈す訳にはゆかぬ。泣寝入りなぞ断固御免、徹底抗戦いざやいざ。
「乗っけから酷でえなオマエは! 馬鹿も休み休みほざけッ!」
「だってあたし夜中に蹴っ飛ばされたくないもん!」
「良いか? 押入れで寝んのは、伝統的にド○エモンの方なのだ。だから今回はお前がそうせえよ。以上!」
「あたしがドラエ○ンみたいだって云いたいわけえ!?」
「少なくとも、の○゛太じゃァあるまいッ」
「ひっどォ。そーゆーのセクハラって云うんだから」
「うぬっ。居候の例えだ、説明せにゃ解りもしねえとは救えん奴め!」
喧々諤々。為すべき取り決めを話し合い始めてから、もうずっと双方喧嘩腰である。何、この小生意気な娘が野放図に文句を吐くのが悪いのだ。当方は権利者として、至極当然な主張の他していない筈なのであるから――。
三〇分にも渡る酷い茶番と水掛け論の末、居候は目出度く押入れへと追いやられる事になった。どうやら「追っ払うぞ」と云うとこの女は比較的従順になるらしい。
……我ながら少々強引に事を決めてしまったかもしれぬ。まあ、軒先貸して母屋取られてしまってはやりきれない。これ位で丁度良かろう。
風呂掃除は交互に行う事となった。一番風呂に関してまでごねられては敵わぬから、今度は始めからそれを譲ってやると、千歳は大層機嫌良く頷いてくれた。
「――っと大体こんなところかね。キリも無えかんな、ここらで終いにしよう」
随分論ったからか草臥れてしまい、二人して深く溜息を吐く。
「まぁ、良んじゃない。まだ云い足りない事が無いではないんだけど。そんで? 明日の朝とか何食べるの」
「そりゃ、台所はお前さんに任すわ。米だけなら炊いてある。もう冷や飯っぽくなっとるけどよ」
「えーっ、パンは?」
「食パンは長げえこと買っとらんなあ」
然るものか。女子高生の朝はトーストを食うのが相場であったとは一つ利口になった。これが役立つ知であるか否かは別問題である。
「なら……いいや。ある物で適当に作ってみんね」
「そうさな、食いたきゃマーガリンと合せて買ってきたって良いぜ。俺とて別にパン嫌いな訳じゃねえからさ」
「あはっ、ありがと」
女はにこやかに答えた。
そんなこんなで長々とやっていると、既に日付は変わって居った。
決すべき事はすべて決め終えたので、代わる代わるシャワーを浴びて各々の時間に移る。しかし個人の部屋でない空間に於ける個人の時間というのは、幾許も制限を受けるものだ。
それぞれ部屋の両隅に陣取って自分の携帯電話や何やらに目を落としたが、俺としてはこやつが親が連休明けに奈良から戻った際現状を何と説明する気なのであろう、とか早い所パソコン内のアダルトサイト系リンクを消すか隠すかせねば、だとかが気になってしまい些も落ち着かぬ。
それに引き換え相手はと云えば、丸で俺など端から眼中に無さげな素振りでイヤホンを着け、せっせか己のスマートフォンを繰り繰りしている。恐らく、ミイハアな女子など普通に何処でもあんな感じなのであろうとは推察するに容易だ。
スマートフォンで思い出した事だが、千歳のそれにぶら下がっていた手製の勾玉ストラップは見当たらなくなっていた。
惟るに、それもその筈であろう。
初回の襲撃が起こる際も、敵は“妖石”と称した勾玉が目当てであると明確に述べた。それが失敗するや否や殆ど間髪入れる事なく第二波を送ってくる大きな「何か」がおり、それが例の古墳の一件とも密接に関わっているとあらば勾玉を厄源とみて捨てて仕舞うのが当然だ。俺でもそうする。
しかし目当ての物を捨てたとすると如何なるのか。穏便にそれを回収して済ますか、更にこちらへ何か求めてやってくるのか。油断は大いに憚られよう。
最早一連の出来事はあまりに常軌を逸脱し過ぎていそうで、既に警察へ伝えるも躊躇われる程となっている。
そもそも妖石とは、妖力とは何ぞや?
あの女運転手なら詳しく知っていそうなものだが、彼女らがどういった組織なのかすら覚束ぬ上に連絡先も判らずにいるのだからかなわない。この刀も全く以て詳細不明だが間違いなく高価な品なのであろう、御上にばれて押収される前に何とかして返さねばなるまい。
今は本当に分らない事だらけなのだ。ついでに少し話でも聞ければ幸いと思う。えんやら、暫くはどうにも忙しくなりそうである。
然れど一まず明日は友等と遊び呆け、その後またゆっくり考えたとて罰も――……恐らくは当るまい。いざとなれば用事は迅速に済ませうるに違いない。何せ、我が家の人手も増えているのだから。