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言ノ葉  作者: はぎぽん
三章 揺ラギ
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宣告と繁華街

 曇天の空が、辺りを包んでいた。

 生徒が消えて十一日、舞先輩から一通のメールが届いた。

『話があるの』

 メールの文面は、それだけだった。



「よく、ここだと分かったわね」

 バタバタと校旗が風に揺れる。先輩は、考えた通り屋上にいた。

「この前、妹がボソッと言っててな。気に入ってるんだろ?ここ」

「ええ、ここにいると気分が安まるの」


 屋上に佇む、舞先輩。その姿はとても儚げで、美しいものだった。

「あなたに来てもらったのには、理由があるの」

「失踪事件について―――だろ?」

 彼女は一瞬躊躇(ためら)うと、重く口を開く。


「そう――よ。来てもらったのは、失踪事件についての事」

 とても申し訳のなさそうな表情をする彼女。一体、どうしたのだろう。

「良人君には悪いけれど……あなたには、身を引いてもらいたいの」


―――は?

「ちょっと待てよ、どういうことだ?始めはあんなに手伝え的な事言ってたのに、どうして急に――」

「――とにかくっ!!事情が変わったの」

 オカシイ。今の彼女は何かがおかしかった。


「ごめんなさいね、良人君。あなたを、危険な目に合わせたくないの」

 そう言い捨てて、屋上を去ろうとする先輩。オレは、彼女を呼び止めていた。

「―――ちょっと待てよっ!!自分勝手な事言いやがって!!」

「ええ、私も……自分勝手だと思うわ」


 彼女は、そのまま姿を消してしまった。







 ドカリと、ベッドに頭から飛び込む。オレは、あまりの彼女の変化にイラ立っていた。

――ガチャリ。ドアノブを捻る音が聞こえる。そこに立っていたのは、妹の(あかね)だった。オレの乱暴なドアの閉め方に反応したのだろう。

「後にしてくれ茜、今は話をする気分じゃないんだ」

「――何かあったの、お兄ちゃん?」


 寝転がるオレの横に、腰掛ける茜。その目は、心配そうにこちらを見ていた。

「生徒会長さんと、何かあったんだね」

「アイツ、あんだけ巻き込んでおいて今になって事件は調査するな、だとよ。戦力外通告だろ、コレ」

「生徒会長さんとの間に、何かあったの?」

「――いや、全然。急に言われて、コッチも混乱してんだ」

 考えれば考えるほど、彼女の本当の目的が分からなくなった。


「何考えてんだよ、アイツ――」

 なぜ、今更オレを遠ざけたのだろうか? 

 彼女らしくもない不可解な行動に、オレは困惑していた。


「――何か、お兄ちゃんを遠ざけなきゃいけない理由が、あったんじゃないかな」

「ソレが分からなくて、苦労してるんだ。普通なら、先輩があんな事言うはずがない」

 それに、あの時の先輩は少し様子がおかしかった。まるで、何かに取り憑かれたような、焦り――



 そう、それはまるで――


――あの時、目の前で錯乱していた―――


――あの時の少女のようだった。



「どうしたの?お兄ちゃん」

 心配そうな目でオレを見つめる茜。自分でも気がつかない内に、身体には汗がじっとりと滲んでいた。


――呪い―――


――錯乱した少女―――


――不可解な先輩―――



 恐らく、この三つは繋がっている。

 嫌な予感がした。これからもっと最悪な事が起こる、そんな予感。

「――やっぱり、納得行かねぇ。アイツともう一回話してくる」

 オレは不安げな妹をよそに、自室を後にした。






 誰もいない公園で、オレは舞先輩を待っていた。

 彼女に電話をしても、プツリという音と共に留守電へと切り替わる。ダメもとでメールを送ったが、やはり返事は来ない。

 とりあえず、指定した待ち合わせ場所で彼女を待っているが、何分、何十分待っても彼女は来ない。

「何やってんだよ、先輩――」

 オレは、無意識のうちに駆け出していた。



 人通りの多い繁華街。

 オレは、彼女を探す手がかりもなく、とにかく探すために街中を探して回っていた。

 相変わらず、携帯は一度も震えることは無く、彼女とは音信不通だった。

「どこにいるんだよ、アイツ」

 上がる呼吸を無理やり働かせ、もう一度走る。日は完全に沈み、街灯がポツポツと明かりを灯し始めた。


 

 どれだけ走っただろう。駅前に、学校に、先日のケーキ屋に―――彼女が行きそうな所へは、全て行きつくした。

 彼女は電話にも出ることなく、メールも帰ってこない。結局、見つからないままだった。

「いや――まだ、探しきれてないだけかもしれないな」

 そう自分に言い聞かせ、もう一度来た道を戻ろうと走り出そうとする。丁度その時、一人の少女がオレの横を通り過ぎた。


 茶色がかったブレザー。少し茶色のスカート。オレの、学校の制服だった。

 背丈も丁度舞先輩ほどで――

――オレはその少女を追いかけた。


「おいっ!待ってくれっ!!」

 急いで彼女を呼び止めると、少女はゆっくり振り向く。

「あれ――?君は確か、良人君――だっけ」


 そこにいたのは舞先輩では無かった。確か――

「琴葉――先輩?」

「ああ、やっぱり良人君か。久しぶり」

「え?あ、どうも」


 間延びした口調と、マイペースな性格に、一瞬言葉を詰まらせた。

「それにしても凄い急いでたけど……どうかしたのかい?」

 琴葉先輩に聞かれて、答えるべきかどうか迷った。しかし、言ったとしても舞先輩は怒らないだろう。オレは今日あった事を全て話した。



「ふうん……生徒会長さんが、ね――」

「何かいつもと様子がおかしかったんだ。もしかして、アイツの身に何かあったんじゃ―――」

 

 オレの言葉は、琴葉先輩の指によって遮られた。

「そういう不吉な事を言うもんじゃないよ、良人君」

 パッと、指を離す先輩。舞先輩みたいな事をするヤツだった。


「言葉っていうのにはね、魂が宿っているんだよ。言ってみれば、言霊ことだま。不吉な事や縁起の悪い事は、口に出すと本当に起きてしまうの。だから、そういう事は言っちゃダメ――」

「じゃあ、いい事を言ってれば実現するってのか?」

「あくまで言い伝えだよ。それこそ、本当に起きちゃったら笑えないからね。大丈夫、生徒会長さんにはちゃんと会えるよ」


 じゃあね、と腕をブンブン振る琴葉先輩。最初から最後まで、彼女はマイペースで――

――どことなく、不思議な感覚がするヤツだった。



アイデア―――が――

絶望的に無いです。はい。

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