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バ革命  作者: 、、
〜結集の絆桜編〜
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#88 終焉の予兆

人への態度は伝染していく。

その伝染元が強大な程、その感染力は絶大だ。

その感染症こそがこの世界に蔓延まんえんする『低成績者ノン・エリートを叩く風潮』。

最初に自身の環境に異変を感じたのは中学2年の時だ。

きっかけは何て事のない進学直後に行われた只の実力テストの結果の露見だ。

その日から、彼の人生は180度変わった。


予想を上回る劣等生に対する侮蔑の態度、視線。

そんな虐げられる生活は、彼を落とすところまで落としていってしまう。


日に日にこの世界を映す彼の瞳は濁り切っていく。気が付けば周りには仲間がいて、一緒になって周りのモノ、人を傷付けてきた。


目の前の男は、そんな自分と同じだと思って

いた。何度も何度も自分を映した鏡に映されていた濁った目。こんなにも明るい世界が、ドス黒い事を知っている目。

この男も自分と同じ、この世界を憎む劣等生

であると。


「……テメェは、どう思う。この世界を」


スキンヘッドの不良、山口龍介やまぐちりょうすけは尋ねた。

対峙する、綾瀬堅志あやせけんしの瞳を覗きながら。


「んむんむ、何その質問。思わず本気で考えちゃうなぁ。興味深い質問だうんうん」


堅志はてのひらに灯る漆黒の焔を弄びながら怪しい笑みを浮かべる。


「気に入った。少し遊んであげるよ。ハゲ」


グッと手中の焔を握り潰す……すると山口の脇腹が黒く発光し始める。

焔を転移させ、一定箇所に穴を穿うが

黒炎の圧槌(バーン・プレシオン)だ。


普通なら狙いを定められれば必中のチート技だが、山口は回避を可能にする能力を持っている。

時空間超越の能力、Lilithリリス


「……誰がハゲだ。」


刀をスッと横に薙ぐとまたしても山口の目の前に全てを飲み込む次元の裂け目が現れる。

裂け目に吸い込まれるように自身に付けられた的が消えていく。


「んむ?何その能力。」


軽い笑みを浮かべていた堅志の表情が消える。

本能的に察知したのだ。目の前の能力者は危険である、と。


「お、おい綾瀬。一人じゃ無理だろ」


後ろにいた心二は堅志の横に並ぶ。目に浮かぶ闘志。正体不明の能力と対峙しても閉ざさぬ戦いの姿勢は立派なものだ。呆れ半分に心二を流し見る。


「……なぁ何あれ?どんな能力なんだよ」


「わっかんねーよ。多分技を吸収する類のモンだと思うけど」


「それだけじゃないわ、しんくん」


優璃の肩を借りながら紅空は額に汗を滲ませながら言葉を紡ぐ。




「……厄介よあのパチンコ……いいやチンコ玉の能力は」


「おい、天条。なんでこの人わざわざ言い直したんだ。」


「突っ込んだら負けだぞ。」


心二は頭を抱える。


「で何なのかなお姉さん。あのチンコ玉の能力ってのは。」


「えぇ。それが……と、来るわね」


紅空は見逃さなかった。地面と平行に傾けられた山口の得物。


「チン玉の能力の一つ。超遠距離の斬激攻撃。」


「最悪の略称にしやがった!……ってなんだよ結構何とかなりそうな能力だな。」


「……言ったでしょ。それは能力の一つ。」


紅空は姿勢を低くしながら山口の手元から視線を外さない。

山口が得物を横にスッと薙ぐと同時、紅空は山口目掛けて突っ込んだ。


「は?姉ちゃん!?」


話の途中だと言うのに構わず走り出す紅空に心二は引き止めるべく紅空の肘へと手を伸ばす。


「はいお触り禁止。」


グイっと後ろから自分の肘を掴まれる心二。そのおかげで心二は走り出す紅空を引き止めることは出来なかった。

そして、自分の肘を未だ掴んでる紅空にジト目で振り返る。


「……分身まで持ち出して、何がしたいんだよ。」


「まぁまぁ。それより、ほら。」


紅空は一切の説明はせずに何度も目にした便利な能力、飛び出していった火薬入りの分身体を指差した。

指先に釣られて心二、優璃、堅志は手ぶらで走ってる紅空を目で追う。

モノの一瞬で彼らは驚愕する事になる。

山口が剣を縦に薙ぐと同時。

見えない何かが、走る紅空の身体を左右に引き裂いた。思い切り開かれた頭部からはブシュッ……と脳漿らしき液体が飛び出す。縦に開かれた腹部から溢れるように出てきた腸が自主規制とばかりに自身を爆発させ跡形をも残さずに消え失せた。


「……んむんむ。なるほどね、見えない斬撃ってわけ?」


堅志は面倒そうに口の端を下げる。


百聞は一見にしかず。


これが、山口の能力。超遠距離斬撃と紅空は表現したが、心二にはそう簡単なものではないように思えた。


「……なぁ姉ちゃん。綺麗に分身の身体を真っ二つに刻んだくせに後ろのオレたちが無傷ってのはどういう事なんだろう」


紅空の分身を切断したのだ。それでは、切り裂いた見えない斬撃の流れ弾ならぬ流れ斬撃は、一体どこに消えたのか。


「……つまり、私たちが思ってる規模の能力じゃないんでしょう。」



「紅空さんもしかして分かるの?相手の不思議能力」


優璃の問いかけに紅空は固く引き結ばれた唇をほどく。


「多分チン玉は、次元を切る能力。」


次元……。

本来なら頭が付いて来れない話だが、事実山口は空間を引き裂いて紅空達の攻撃を吸収している。


「んむんむ。つまりさっきお姉さんの分身を切ったのは、見えない斬撃を飛ばしたわけでもなく……」


地面と平行にスイー、と宙を薙ぐ俯く堅志の右手が語尾と同時に仰向けに翻される。


「……お姉さんの腹に次元の裂け目を作った。」


心二達は見えない斬撃を放って攻撃しているものだとばかり思っていた。

しかし導き出された予想は、そんな生易しいものではない。

離れた敵に狙いを定めて放つ斬撃は必ず剣を薙いでからのインターバルが生じる。


ところがどうだろう。


剣を薙いだ瞬間に距離のある空間をも引き裂く山口の能力は凄まじく厄介だ。

気が付いたら切り裂かれてるレベルの必殺。


「どうすんだよ、勝てる気がしない。」


「んむんむ。ならオレが行こう。」


ザッと数歩前に出るのは堅志だ。

離れた空間を切り裂き、特殊攻撃を吸収する強力な能力を持つ敵を相手に一人で挑むというのか。


気だるそうに首を鳴らし、堅志の右半身が不気味なもやに包まれる。


「さっさっ、来いよ」


硬質そうな化け物の右手が堅志の右手に宿る。

堅志のシステムスキル、異種人格へテロジニアスだ。


「上等だ。すぐに殺してやるよ」


山口は剣を縦に振り下ろす。次元を引き裂くこの攻撃を堅志は如何ようにして回避するのか。

すると堅志、目立った動きは取らずに悪魔の右手を差し出すだけだった。


「切れねーよ。そんなんじゃ」


バツン!!


強大なエネルギーが差し出した堅志の右手の前で誤爆する。

次元を切り裂く山口の能力も特殊攻撃の一種。異形のモノを宿す今の堅志の右手は、次元を切り裂く程の大きな力を無に帰した。



「……面白ぇじゃねーか」


そう呟いた山口は地を蹴り堅志を狩るべく猛進してくる。


「んむんむ、頭が悪いな。」


そう言って口の端を吊り上げる。

さっきみたいに右手を伸ばして、獄炎を宿す。


「あぁ!?なに言って……!?」


急に山口は足を止めた。

膝が折れて、視界がグワンと空を映す。


山口の胸には大きなあなが穿たれていた。


雨凪を戦闘不能に追いやり、心二を追い詰めた遠距離攻撃、黒炎の圧槌(バーン・プレシオン)


「……ぐっ、グゾがッッ……!!」


倒れる身体に鞭を打ちながら地を蠢く。再び立ち上がって目の前の堅志こいつをぶち殺す……!血走った山口の目はそう告げていた。


「んむんむ。急所はギリギリ外してある。」


「……ッ。ぐっ……」


「とっとと連れの野郎全員引き連れて失せろ。」


苦しそうに脂汗を流しながら、ようやく山口は言葉を紡ぎ出す。


「……ケッ、憐れな野郎だ」


「……あ?」


堅志は目の色を暗く沈ませる。目の前でくたばる不良に憐れまれるいわれなどないからだろう。

腹を立てて暴力を振るわないか、案じた心二は思わず二人の元へと歩いていく。

後ろに付いてくる優璃と紅空の気配を感じながら、ふと山口の苦しみが篭った聞こえてくる。


「こんな腐った世界の操り人形で満足かよ。」


山口の言葉に心二は足を止める。



「……劣等生を人として見ないこんな世界に、どうしてお前みたいな野郎が味方すんだよ……なぁ、堅志よ。」


「……てっきり他人のふりを通すのかと思ったけど。」


二人の会話が成り立つ。

奇妙である。二人は初対面の筈だ。学校を荒らしに来た不良と学校を守る生徒にどんな関係が隠されているというのか。


「堅志?そいつと……知り合い?」


心二の疑問に堅志はあっさりと返してくれる。


「昨日話した野球部の話。そん時実行犯の野宮達と一緒にボコっちゃったセンパイだよ。」


昨日堅志の口から明かされた彼の悲劇。その当事者という事だ。


「知ってるぜ?退学クビ食らったあとロクな扱い受けなかったんだって?よくもまぁ未だに腐らず生きていけんなァ。」


過去の古傷を抉るように嘲る山口。

堅志は、何も喋らない。心の傷を抉られる痛みは想像を絶する物だろう。


オレら(・・・)んところに来いよ。低成績者ノン・エリートのオレでもここまでこの世の強者共に抗える力をあの人は与えてくれた。堅志、気に入ると思うぜぇ?」


「…………んむんむ。」


ようやく堅志は口を開き、その場にしゃがみこむ。

地面に倒れる山口の目線に合わせる為だろうか。少なくとも、堅志は何か大切なことを話すように見える。


「センパイは、この世界をどう思うって聞いたな。」


二人が対面した際、山口が尋ねた言葉を今になって堅志は返答する。


「この世界に平等なんてモノはない。弱肉強食を形にしたようなモンだ。生まれた瞬間から容姿、周りの環境、ある程度の人間関係全てが決まる。オレもセンパイも良いとは言える環境じゃなかった。だからここまで落ちぶれた。」


だけど……と堅志はらしからぬ真っ直ぐな目を山口に向けて話す。


挿絵(By みてみん)



「……最近知ったんだ。どんな理不尽が人生に立ちはだかっても、それを乗り越える力はみんな持ってる。」


グッと拳を握る堅志。

まるでこれまでの自分の罪を手中に閉じ込めるように。


「センパイは、その乗り越えるべき壁を他人の力に頼った。……操り人形なのはアンタさ。」


「…………っ。」


言葉を失った山口を一瞥した後、そっと堅志は立ち上がり校舎内へと向かう。


「お、おい堅志?」


「天条、あとは任せた。」


振り返りもせずに堅志は手を気だるげに挙げる。

あと……とはつまり、事態の収束だろう。

敵戦力の大将は戦意喪失。もう強襲騒動は終わりを迎えたと言っても良いだろう。



「……まだ終わってねぇ。」


ふと、山口が不気味な一言を漏らす。


固まったように心二、優璃、紅空は彼に視線を落とす。


「どういうことだよ。」


「世界の終わり……世界の終わり……世界の……終わり。」


心二の問いに彼は答えない。

答えにならないような意味深なことを繰り返

し呟くだけだ。

……世界の終わり。


物騒なそんな言葉に現実味が持てなかった心二達の耳には直に忙しない喧騒が聞こえてくる。

何者かの通報によってやって来た大勢の警察官だ。

校内に侵入した不良達は一人残らず連行されていった。


「結局、何しにきたんだろうね。」



大勢の不良を乗せたパトカーを見送りながら優璃は言った。

いくら夏休みの件で因縁を持ったからと言って、今回の強襲はあまりに無謀と言えるだろう。

それに未知の『コード』。

そのコードを与えた黒幕の存在。

……世界の終わり。



多くの謎を残したまま、桜南祭は再開を遂げた。




本当、前の話の更新から時間が空いてしまってすみません。

テスト期間だったりバイトだったりで書く時間があまり無くて……。

何よりの理由はアメブロに載せるようにバ革命の序章から三章までを再編集して、数枚だけですが挿し絵も新規に書き直したりしてます。

特に第三章はかなり修正を加えたのでどうか、ご一読お願いします。

次回で今シリーズを締めていきます。

近日後にまたお会いしましょう。

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