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バ革命  作者: 、、
〜結集の絆桜編〜
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#87 妖精進化論

「あぁぁあぁぁぁぁぁ!!!」


怒り、悲鳴、絶望。色んなモノが一緒くたになった早苗の狂おしい怒号が中庭に響く。

自身の存在を誇示するかのように地を踏み締め、右手に片手剣を召喚する。


「げっへへ。キタキタ」


新たな獲物の出現に口端を三日月の様に引き攣らせる。

そんな凶悪な笑みにものともせず、早苗は雨凪を痛め付けた3人の不良達の元へ向かって疾駆する。

複数相手に無策の突撃は愚の骨頂。

早苗の目の前には鋭い笑みを含めて両手剣を振りかぶる脇に控えていた不良。


「うっ……!」


咄嗟に身を引く早苗の鼻先に両手剣の斬撃が掠める。

鋭利な刃物が鼻頭にズブズブと沈んでいく感触。一気に覚醒し、身を竦める。

もしもあともう一歩踏み出していたら顔面を真っ二つに切り開かれていただろう。そこまで想像を広げてしまうと、もう立つことなど出来なかった。

足はガタガタと震えだし唾を飲むことさえ出来ない程に目の前の恐怖に怖気付いていた。


「……あ、あ。」


戦慄く早苗の表情に目の前の大剣を持つ不良は犬歯を剥く。獲物は目の前、あとは仕留めるのみ。


「さぁて……ん?あ〜、何だ追加注文ってか?」


不良は重たい大剣を一旦下ろし、早苗の遥か後ろに現れた人影に視線を向ける。


「私の後輩に何してるのかしら。」


雑草を踏み締めゆっくりゆっくりとこちらへ歩いてくる彼女の左眼は流す前髪で見えないが、右目からは明らかな敵意の光を宿していた。


「……て、天条先輩」


挿絵(By みてみん)


ゆっくりと後ろへ振り向いた早苗も紅空の存在に気付く。少しだけ恐怖の緊張が和らいだのか、ようやく固まっていた表情がほぐれポツポツも涙が流れる。


そんな早苗の背中を狙う猟犬の殺意。


何の躊躇もなく大剣を再び振り上げ狙いを定める。

不良は至高の狂笑を浮かべている。うっすら芽生えた希望を叩き潰す。

狂人が考えそうなシナリオだ。



「……私を嘗めてるのかしら。」


ぼそりと漏らす紅空の低い声。

進む歩幅が大きくなり、敵意が殺意へと塗り潰される。


「私の前で女の子を切り刻もうとするなんて……」


「もう遅ぇ〜ヨッと!」


……瞬間。プシューン……と空気の抜けるような間抜けな音と共に辺りが煙幕に包まれると同時に紅空の肩甲骨から二枚の薄い羽が開く。

紅空の所有するコード『麗艶妖精ヒュアフェアリー』は爆弾生成だけではない。移動速度の上昇、飛行能力が付随される能力は流

石第二学年の上位成績優秀者トップエリートだ。


「……んの野郎ッ」


邪魔くさい煙諸共(もろとも)勢い良く振り下ろす大剣は早苗の後頭部の頭蓋を砕くべく漂う煙を切り裂く。

ボスッ……とめり込むような感触。明らかに人体を断ち切る際の手応えとは異なる。

標的を叩き割れずに地面を割ってしまった、と直感で判断する。それくらいに視界が悪い。


「みーつけた。」


耳元で囁く冷たい恐怖を内包する紅空の声音に体がすくむ。

この時点で、紅空は勝ちを手にしていた。背後を取ればこちらの物だ。

翼を展開し、超火力の爆発力『』を落として早苗を抱えながら上昇、被爆圏外まで一瞬で移動する。

すぐさま吠える爆炎は煙漂う辺り一帯を焼き尽くす。

味方一人が焼かれても顔色一つ変えない残りの不良二人に紅空は冷淡を浮かべる

紡がれる言葉と共に文字通り上から目線で人差し指を指す。


「私も追加注文。キミ達全員の悲鳴で。」



「今度は手応えのありそうな奴じゃねぇか」


紅空はゆっくりと下降し早苗を降ろす。まだ少し震えている早苗を案じる紅空は早苗の肩を優しく抱き寄せた。


「そこで大人しくしててね。友達の仇を取ってくるから。」


「…………。」


自分の無力さ非力さが悔しくて声を出すことも出来ずに俯く。雨凪の様に強くなれない自分が嫌で嫌でしょうがない。何もない自分が……恥ずかしい。



おもてを上げると既に紅空は不良達の元へと歩み出していた。紅空の背中が語りかけている。


『あとは任せろ。』と。


「……お願いします。」


声にならないような小さい声で、早苗は戦場に繰り出す紅空を送り出す。




「一番偉いのは、キミでいいのかな?」


向い立つ二人の侵入者の内、学ランを羽織るスキンヘッドの巨体に紅空は圧を声に乗せて問いかける。


「……あぁ、そうだぜ」


厳つい外見だけで彼に尋ねた紅空だが、どうやら正解のようだ。無駄だとは思う紅空だが念の為にこんな質問も投げてみる。


「今からお仲間全員で大人しく帰ってはくれない?」


丁寧な口調ではあるがその眉間には薄ら皺が刻まれている。相変わらず敵意は向けている紅空の問いにスキンヘッドの不良は鼻で笑う。


「そりゃ駄目だ。」


その言葉を聞くや否や、紅空は鬱陶しそうに後ろ髪を払う。

未だにさっきの煙幕が辺りを漂う中、紅空を中心に無数のテニスボールの様な球体が出現した。勿論それはテニスボールではない。紅空のコード『麗艶妖精ヒュアフェアリー』本来の能力、爆弾生成により作り出した爆弾そのものだ。

怪しい深緑色の光を宿す爆弾を周囲に待機させながら紅空は更に敵である不良達に近づく。

そんな紅空へ意思を持った様に付いていく爆弾の幾つかがゆっくりと上へ挙げられる右手と同時に勢い良く標的である二人目掛けて飛び出した。


「げっへへ」


特に焦ることもなく、不良は目の前の空間を切り裂くようにゆっくり刀を横一線にスライドする。切り裂かれた空間の裂け目から見える暗黒に散らばる多色の星々は天体の様だ。


「それで一体何を……」


紅空の疑問はすぐに解消されることになる。球状の爆弾は導かれる様に裂け目から覗く星屑が散りばめられた溟海に飲み込まれていく


「……何かな、それ」


「こんなこともできるぜ」


自身の攻撃が不発に終わった紅空へ更に畳み掛けるように不良は刀を今度は縦にゆっくりと下ろした。


「……っ!?」


紅空は、回避した。目に見えぬ高速の斬撃。直之の身体を切り開いた一見回避不能の一撃を。

勿論直感でも予感でもなく、紅空が今尚立っていられるのはただ単に人類が皆生まれ堕ちた時に持っている少し優秀な反射神経。緊急回避能力。そんな紅空の辺りを包む先ほどまでの煙幕が不自然に切り裂かれたりすれば、何かの襲撃だと身体が反応するのだ。

咄嗟に横合いに飛べたのは結構な奇跡だと言える。


「……本当、何それ。」


相手の挙動から目を離さずに身体を起こしす紅空は正体不明の攻守兼ね備える目の前の不良の能力に苦虫を噛み潰す様に苦笑する。

滴る汗がいつの間にか紅空の下顎に池を作っていた。


「……下品な戦い方になっちゃうけど、仕方ないね。」


くすぐったい汗の雫を手の甲で拭き、平静を取り戻すべく深呼吸。

鼻から吸って、口から吐く。そんなマニュアル通りの深呼吸を心の中で呟きながら、両手をパン!と一発打ち鳴らす。


孔雀くじゃくの装……。」


途端に紅空の背後を扇型の羽が出現する。その羽は純白の様に真っ白だ。そんな麗美で煌白な羽から無数の目玉の様なものがバクバク見開いた。


「……それも爆弾か。」


先の紅空を纏う爆弾の数と比べると天地の差があるのだが、不良は至って冷静だった。


「そうよ。全部爆弾」


豆鉄砲をいくら用意しても所詮は豆鉄砲。数を打ってもそれは変わらない。

しかしそれらは……


「……そして、全部が必殺。」


……果たして本当に豆鉄砲か。


「……っ!」


地を蹴り急加速で不良二人に接近する紅空。手始めに紅空の魔手が捕らえたのは厄介な視えない斬撃のスキンヘッドではなくお供の不

良の襟元だ。


「なん……がっ!?」


反応する前に左手で襟首を引っ掴み迅速に止めを刺すべく右手は扇の羽に実を成らす手の平サイズの爆弾を1つ掴み取る。


廻爆丸ア・ラウンド。」


紅空は手の平の爆弾を不良の喉元に押し付ける撃ち込んだ。

すると不良の身体は一気に四散し、爆ぜ散った。

今までの紅空の生成する爆弾とは違い、今回の爆弾はただ爆ぜるだけではない。

回転を加えながら爆ぜることで爆発領域を拡げかつ、斬撃の様な爆風をも起こすことが出来る。

そんな一発を喉に受けるとどうなるか。

頚動脈を断ち切り周囲の顎や顔面、両肩を砕く。

必ず殺す武器こそ、本来あるべき必殺技の姿。それが紅空の反爆破アンチ・メテオに並ぶ必殺技、廻爆丸。

反爆破が遠距離武器ならば、廻爆丸は近距離武器。


「次はキミね。」


怪しい笑みを纏いて振り向く紅空の視界にはスキンヘッドに晴れ間が指す不良の愉悦な表情。

曇天が晴れた瞬間だった。


「来いよ。」


紅空はバッと勢い良く後翼に実を成らす爆弾を両手に一個ずつ掴み取る。

撃滅態勢は万端の様だ。


「キミ、状況分かってる?」


紅空は確実に勝負を帰する為に喉元を狙いを定め右手の廻爆丸を放つ。


「アンタこそ分かってねぇなぁ。」


喉元を散らすべく近けられる爆弾にも奥億さ

ずに口端を吊り上げる。


「その危ねぇもんが自身の弱点だってことがよ。」


サラリと右手の廻爆丸を躱しながら余裕面を魅せる。

しかし密接する以上、紅空の追撃を試みる。

左手の廻爆丸を懐から突き出す。

そんな必殺を見て、不良は剣を容赦なく紅空の左手ごと突き刺す。


……廻爆丸諸共に。


「……な、何をしてるの?そんなことしたら」



挿絵(By みてみん)



紅空の手に持つのはあくまで爆弾だ。そんな物をこんな近距離で突き刺しでもすれば……


「オレは助かるから良いんだよ。」


不良は左手の親指を下に指す。釣られて視線を落とした先。

不良の立つ地面にはそこには穴が空いていた。なぜ地面がないのに立っていられるのか、なんて疑問は先ほど爆弾を吸い込んだような次元の裂け目が穴の正体だと気付くと同時に消え失せた。

次元の裂け目が作り出せる時点で常識なんて通用しないのだ。


「天条先輩!!逃げてーーーーー!!!」


悲痛な早苗の声は紅空の耳に届くも、何も出来ない。

……動く事が出来ない。


開闢ひらけ。」


突き刺された廻爆丸が不良の言葉と同時にパックリと割れた。


「……くっ」


それが決着の合図。

思わぬ衝撃を受けた廻爆丸はそのまま螺旋爆発を起こす。標的の不良は足元に出現させていた次元の裂け目の中へと消え、紅空は逃げることも出来ず廻爆丸の誘爆を一身に……


「……あれ?」


受けることはなかった。


左手にあったはずの廻爆丸はどこにも無く、貫かれた左手の生々しい傷のみ。


「馬鹿姉ちゃん何やってんだよ!!」


突如後ろから聞こえて来たその声で紅空は全てを理解する。


(……そっか、また助けられちゃったのか)


遠くの中庭に面する校舎一階の窓から飛び出してくる二人の人影。


「しんくん、ゆりっち」


急に腰が抜けてその場に座り込む。直ぐに優璃が紅空の身体を抱きしめる。


「大丈夫?あたしが誰か分かりますか!?」


「分かる分かる。ゆりっち」


ホッと安堵する優璃は心二にグッ、右手でとサインを送る。


「……さて、アンタか。姉ちゃんの敵は」


心二の視線の先には次元移動を終えた不良が余裕綽々と鼻をほじっている。


「そーだ。んでもって襲撃の主犯っヤツだ。」


「……ほー。それはイイ事を聞いた」


心二はグッと拳を握る。

その小さな挙動を不良は見逃さなかった。


「げっへへ。オレが憎いか?」


「憎い?んな訳ねーだろ、ぶち殺したいレベルだ」


ガッと心二の言葉に苛立ち地面を蹴る。


「……あぁ?調子乗ってんのか」


「乗ってんのはお前らの方だろうが。」


煽り合いでは付かない決着に双方は地を蹴り飛び出す。腹の立つ相手をぶちのめすべく。


「「……!?」」


視界の端で怪しく光る何かに気付いた二人は足を止めてその方角へと視線を巡らせる。


「……え、」


間抜けな声を漏らす心二は咄嗟に紅空の廻爆丸を打ち消した『欠壊の太刀』を発動して自身を襲う漆黒の炎を打ち消した。


「……ッ。いきなり何しやがんだボケが!」


暴言を吐く不良は次元移動で難なく回避したようだが、相変わらず怒りのボルテージが上がっていく。


「……んむんむ。怒ってる理由が分かんないな。オレの学校に喧嘩売って来たのはお前らだよな?」


ギリギリ聞こえてくるそのボヤき。気だるげ

に正門の方角から右手に黒炎を宿しながら心二達の方へ歩いてくる彼に心二は見覚えがある。

昨日と比べて後ろで束ねて背中に流していた髪型が今は後ろ髪をバレッタで止める髪型だった。

スッキリした外見ではあるが、やはり内面は変わらずご機嫌斜めの様だ。


「あ、あれは……!」


優璃が彼を『あれ』呼ばわりする唯一の存在。


「綾瀬!」



挿絵(By みてみん)


心二の反応に綾瀬堅志あやせけんしは溜息を吐く。


「……天条心二。文化祭はこいつらのせいで止まってやがんのか」


「お、おう。そうだ」


心二の返答を聞くや否や堅志は分かりやすく舌打ちを鳴らす。


「……せっかく気分改めてのんびり過ごそうかと思ってたのによォ。」


更に堅志のご機嫌が右肩方向へ下がってしまう。


「お前、許さん」


「あ?……ってウォ!?」


いきなり堅志の指す人差し指の先からパン!と黒炎の弾丸が飛んでくる。

空間を裂いて攻撃を吸収する能力を使う時間もなく、半身にひるがえし回避する。


「……いきなり巫山戯ふざけんなよテメェ」


「だからだーかーらー。巫山戯てんのはお前だろ?」


心二は唖然としていた。

自分と敵対し激闘を演じた堅志がこちらの味方側にいる。

何より、不登校だった堅志が今日も学校に来てくれたことに。


昨日の敵は今日の友。


まさにこの言葉だ。


「さぁさぁ、警察に行きましょうねぇ」


メラメラ堅志の右手で燃え上がる黒炎は、昨日のよりも頼もしく温かいものだった。

更新遅くなってしまって申し訳ございません!

定期考査の勉強やらで中々進みません……!


……と、早々に宣伝させていただきます!


現在アメーバブログにて、『バ革命』の再連載をしています。

……というのは、毎日更新してるブログがテスト勉強で毎日更新出来ないから使いまわしてるってだけなんですけど。


そんなアメブロにて、先日に今回活躍した天条紅空の中学生時代の短編を載せています。

是非ご覧下さい。

そして、普段のアメブロの時間を使ってテスト明けより『天条心二と垣峰守郎・邂逅の物語』を連載することになりました。

挿絵(By みてみん)

不良少年と平凡な少年の出会いの物語です。

なろうでは今の長編を終了し次第心二と守郎の過去編を連日投稿していくつもりです。

そちらの方もよろしくお願いします。


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