表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バ革命  作者: 、、
〜七人殺しの七不思議編〜
9/96

#9 侵入開始

静寂が支配する夜の空間。


天条心二(てんじょうしんじ)(まぶた)を閉じて眠りにつこうとしていた。


(……あぁ。)



「寝たい。」



「だったら早く寝りゃいいだろが」


同じように隣の布団に入る垣峰守郎(かきみねしゅろう)は心二に苛立ちをぶつけた。


「だって寝れないんだよ…。」


布団に入ってから一時間。

いまだ寝れない心二は一人言をぼそぼそ呟いてはその度に守郎の怒りに触れていた。


「ねぇ、守郎。何か話してよ」


「お前に話すことなんてなにもねぇよ」


「んじゃ好きな女の子のタイプは?」


ゲシ、と痛くも痒くもない布団越しからの守郎の蹴りがヒット。


「……………寝ろ。お前が喋り続ける限り、オレはどうあっても眠りにつけなさそうだ。」


「眠らさないように喋ってるんだから当たり前じゃん。」


チッ、と守郎は舌打ちを一つ。


「姉ちゃんが怪談話してるときに寝たりするから眠れないんだろ。」


「うっせー」


そういえばさっきまで話していた怪談。天条紅空(てんじょうくれあ)から知らされた桜南高校の七人殺しの七不思議伝説。

その内の一つを偶然か必然か見てしまった心二と、隣の紅空の部屋で眠っている菜川李女(なかわりな)

その正体を探るべく夜に学校へ忍び込もうと(くわだ)てた心二たちだったが…。

早々に天条心二、天条紅空の母親である天条一心(てんじょうひとみ)に阻止されるのだった。


夜の外出が許可されない健全な家庭だ。


明日の20時頃にでも紅空は学校侵入を試みている。

20時の外出なら許可を出す一心も一心である。


「そういえば守郎!」



「…………ッ。なんだ」


「そんな苛つかなくてもいいじゃん!あのさあのさ、さっきの七不思議で一番グロいと思った怪談ってなに?」


七不思議全部が幽霊に残虐な殺され方がオチとされる桜南高校で、心二が知っている怪談は『二の腕切断』の怪談と『顔面崩壊(ついでに下の毛)』の怪談の二つ。


「そうだなぁ…。強いて選ぶなら理科室の『紅い花弁(はなびら)って怪談だろうな」


「どんな怪談?」


んー……とため息を吐きつつも守郎は気だるい声で怪談を語る。


「簡単にいうと、昔に理科室の長机で腹を開かれて臓物なんかをあちこちにぶちまけられて殺された女子生徒の死体が発見されたらしくてな。殺されたその生徒が夜に迷い混んだ生徒を理科室まで連れてきて、同じように腹を裂くんだと。」


「なんで紅い花弁って怪談なの?」


「辺りにぶちまけられた臓器が花弁みたいに見えたとかなんとか…」


「おお…。なかなかグロいな。他にはないの?」


「いいから寝かせろよ…」



今度はわざとらしくため息を吐く守郎だった。









胸に謎の重さを感じながら李女は目を覚ました。


「お!おはよー李女ちゃん!」


「あ、えと、今西…さん?」


同じクラスながらしゃべったことすらなかった李女は目の前の自分にのし掛かる女の子の顔と一致する苗字を記憶の奥からひねり出した。



「そういえば、あんまり話したことなかったよね!あたしのことは優璃って呼んでよ李女ちゃん!」


朝からハイテンションな優璃に驚きつつもこの機会に距離を詰めるべくとにかく会話を続かせようと試みる。


「あの、私もちゃん付けで呼んでも………いいか?」


すると優璃は目を見開き、がくりと項垂(うなだ)れる。


(え?私なにか変な事を言ったか!? )


「か、か、かわいいいぃぃぃぃぃ!!!!!」


項垂れたかと思うと急に李女の胸めがけて抱き付く。なにか既視感(デジャヴュ)を感じる李女は頬を染める。


「ちょ、ちょちょ!優璃…ちゃん!優璃ちゃん」



「おーーー?おやおや朝からお盛んですな〜二人とも!」


いつのまにか目を覚ました紅空は布団の上で絡み合う優璃と李女を見ながら……

何故かパジャマを脱ぎ出す。



「え?あの…紅空さん?」


「お!紅空さんもあたしが抱きしめてあげるよ!」


優璃の言葉を受けて、二人の絡み合う布団に迷いもないダイブで飛び込んだ。








「ははっ…ちょ、優璃ちゃん!くすぐったいぞ!!」


「ああぁぁぁん!!」



爽やかな筈の朝。

すでに目を覚ましていた心二と守郎。

二人はただただ無言で隣から聞こえてくる三人の女の子のきゃっきゃうふふなピンク色の声をじっくり耳を澄ましてご静聴していた。



「心二、勃ってんぞ。」


「お前もだろ」


……マジで、あの中に入りたい。死んだ目で欲望に駆られる心二と守郎だった。



天条家でのお泊まり会から一夜が明け、いつものように学校へ向かった。

誰かと一緒に学校へ行くのに慣れていないのか、李女のぎこちない顔が印象的だった。


学校へ着き昇降口に入ると二年生の紅空とは別れ、昨日の悪夢の舞台である1の3の教室へ向かう。


「…………特に変わったものはねぇな」


守郎が呟く。

もし心二と李女が見たものが本物の人間で死体だったならば、大事件になっていそうなものだが。

心二たちの視線の先にはいつもの日常が繰り広げられていた。


「いいさ。今日の七不思議巡りで何かしら分かるだろ。」


「まぁな。高校生にもなって幽霊なんて信じたくねぇが。」


自分の目で見たものしか信じない守郎は未だ心二と李女が見たニンゲンを信じていないようだった。


「ひゃうん!!」


いきなり奇声を上げる優璃に驚きつつ優璃へと振り向くと大きな優璃のお胸を揉みしだく古旗由美(ふるはたゆみ)がいた。


「おぉ、古旗か。朝から発情してんなよ」


心二はばいんばいんと揉まれる優璃の胸を凝視しながら由美に呆れる。


「ちょっと心二ぃ!ガン見しないで変態!!」


「本屋に行ったら真っ先に18禁コーナー行くお前に変態呼ばわりされるとはな。」


むっふっふ〜とゲスい笑みをわざとらしく浮かべながら由美はそばの教室のドアに目線を移す。


「ところで優璃、教室の前でこんなに集まってどうしたの?すごい邪魔だよ?」


「うん、ごめん」


なおも胸を揉まれる優璃。

どうやら慣れたご様子だ。


「さて。」


さっさと教室へ入る守郎。それに続いて李女、優璃と由美も中へ入っていく。


昨日知ってしまった放課後の学校の恐怖。

常に賑やかな声で溢れている学校の裏の顔を心二は見た気がした。







「よし!全員いるーー?」


紅空の明るい声が響く。辺りは真っ暗。完全に夜の時間帯に心二、紅空、優璃、守郎、李女の五人は校門前にいた。

これから恐怖の舞台である学校へ忍び込もうとしているのに、紅空の無駄なテンションであまり緊張を感じない。

各々シャツやジャージ等のラフな格好をしている中、優璃は何故かカッターシャツを着ていた。


「優璃、何でカッターシャツ?」


「谷間を見せるため。」


屈託のない笑顔は、心二には眩しすぎたようだ。




ジャージ姿の李女を見るとやはり昨日と同じく少し乗り気ではないようだ。

両親は昨日から新婚旅行らしいのでこんな時間に外出することを咎める者はいないだろうが………


「ん?」


何か得たいの知れない気持ち悪さに思わず心二は声に漏らす。


「へ?心二なに?」


「あ、いやなんでもない。」


心二は先程のモヤモヤした気持ち悪さを明確化するために、考えていたことを整理する。

李女の両親は昨日から新婚旅行。

何かおかしいくはないか。

……そう。

高校1年生の李女の両親が、新婚旅行(・・・・)に行っていることに。


「………あ。」


今さらながら心二は気付いた。


(……何か複雑な家庭の事情があるのか?)


この時の心二は、その程度のことにしか捉えていなかった。

後に思い返されることになるこの疑念は、記憶の奥底へと沈んでいく。



「んじゃ、行くよ!」


沈みきった夜空を晴らすような紅空の発破をかける声で完全に心二の思考は停止する。


学校の門が閉まっているが普通に校門をよじ登り侵入する心二たちは難なく侵入に成功する。

……が、直に見えてくる最初にして最後の難関。

夜間はセキュリティによってロックされた昇降口。

これを如何(いか)にして潜り抜けるかだが。


紅空は扉に手をかざし、唱える。


「………コード展開。」


扉に触れる(てのひら)が淡い緑の光を放つ。


そして自身のコード名を発言する。


「…………麗艶妖精(ヒュアフェアリー)


それは一瞬だった。

周りに突如(とつじょ)テニスボール大の緑色の球体が出現し、すぐさま消えた。


するとドアは何かに反応したかのようにピピッと小さな電子音を上げ、ロックが解除される。


「え?なんで開いたの?」


思わず心二は疑問を紅空に投げかけた。


「私のコード展開の能力の応用だよ?セキュリティをちっとばかり停止させてみた!てへ♪」


ぺろっと舌を出して可愛い子ぶるが実際にやったことは恐ろしいことだ。


すると守郎も紅空に尋ねる。


「そういえば上位成績優秀者(トップエリート)のコード展開って使用者の姿形が変わるとかって聞いたんすけど…」


「え?そうなの!?」


入学一ヶ月少しではまだ上位成績優秀者のコード展開なんて見れていない心二は驚いた。



「めんどくさいからね、省いた♪」


「そんなこともできるんすか」


驚く守郎だが何で驚くのか全く理解できない心二。

あれだろうか、ポケモンの進化をBボタンで防ぐとかいうのと同じなのだろうか。


難なく校内へ侵入できた心二たちは、いよいよ七不思議巡りに挑む。


「準備はいい?」


紅空は今一度、雰囲気を出すべくみんなに問いかける。


「当たり前だぜ姉ちゃん!」


「もちろん!」


「いつでも。」


「は、はい!」


それぞれが応答し下駄箱を抜け、広い踊り場へ出る。



挿絵(By みてみん)



まずはここから近い七不思議の舞台。

紅空が目と鼻の先にある保健室を指差す。



「まずはあそこから!『黒目の教師』の七不思議!!」


暗闇が支配する校内で、七不思議巡りの幕が上がった。


さてさて、今回で九話目。

更新される度に読んでいただいているあなた様には一度アニメやら漫画やらラノベやらでゆっくり語り合いたいものです!

テストが終わったんで半日で学校が終わる日々が終わりを迎え、バイトへ行く日常が戻って参りました。

1日1話のペースで最近までは更新できていましたがテストの結果云々は置いておいて、小説を書く時間が少なくなっていってしまいます。

イラストも少々テキトーになってしまっておりますね笑

それでも3日に1話ペースでちまちま書き続けますのでこれからも皆さまバ革命をよろしくお願いします!!


そして宣伝!

今のシリーズ明けにやるエピソードが決まりました!


挿絵(By みてみん)


恐らく深海さんにスポットを当てた話になるかと思います。イラストは一応深海さんなのですが、以前出てきた時より格段に美少女っぽく描きました!

美少女って難しいね。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ