#80 Asmodeus
疾駆する黒翅その他不良連合軍の目的はただ単に桜南祭の破壊である。
その為に彼らが真っ先に制圧を目指すのは校舎内の放送室、職員室、事務室である。
「けけっ!簡単に正門突破出来たぜ」
正門前で校舎侵入を阻止する如月雫、青山礼愛の間をくぐり抜ける少数は必ず出て来てしまう。
述べ50数人。
その拾いこぼされた彼らは慢心し切っていた。
「さぁて先ずはどこから攻め落とすか……」
「それならオススメがあるんだが」
下駄箱の陰から姿を現したのは威嚇的な金髪を手で乱暴に掬う少年だった。
「職員室なんてどうだ?オレ的には成績差別の権化みてーなモンだから是非暴動起こしてほしいんだがな」
「あ?誰だテメェ。」
ひぃ、ふぅ、みぃ。指差し確認で金髪は校舎に侵入した不良を数える。
「……9人か。案外多いな。」
「おい……何無視してくれてんだボゴッ!」
容赦ない金髪の右フックが不良の脳天を揺らす。
「おいおいてめーらの仲間から聞いてねーのかよ。夏休みン時あんなに可愛がってやったのによォ!!」
打撃で上体が沈む不良の顎部に更に蹴り上げを放つ。
「ガフッッ!!?」
容赦ないその攻撃は、事前に実体に無害のバーチャルシステムを起動させているからだ。
現実の身体の顔面に蹴りを入れるなんて下手をすれば後遺症モノだろう。
ケッと吐き捨てながら金髪、垣峰守郎は対峙する8人を煽るように手招く。
「不本意ながら思い出させてやるよ。薄汚ぇ獣の名前をな!」
守郎が羅亜と呼ばれる所以。非道なる鬼が目を覚ます。
不良達にも頭脳はある。
礼愛、雫の防衛線を突破したとして、固まって行動をすれば校内で囲まれでもすれば呆気なく終わってしまう。
故に彼らは散った。
校内のあらゆる箇所から校内への侵入にすでに成功していた。
「ゲッヘヘ、案外簡単に校舎内まで来れたな。どーするよ?早速職員室攻める?」
「いやいや、放送室乗っ取って独占放送ってのも悪かねぇ」
方針は定まらないまま、二人の不良は階段を上る。
周りに人影は無い。それもそうだ、校内は今教室待機の放送が巡っている。
「……おい、誰だ。」
しかし、二人は感じ取る。気配はあった。それも規則に縛られない強い意志を持つ、同じく二人が。
「あり、バレちった?……まぁ陽志の言う通りだったな。ゴキブリみたいにあちらこちらから入って来やがって」
カッターシャツの襟元を緩めながら、心二は侵入者二人を一瞥する。
「丁度二人……けどまぁオレ一人で充分か」
「あ!?おい待て陽志!オレも戦うぞ!」
ダン!……と心二、陽志のやり取りに苛立ちを地面を蹴って発散する。
「とっとと退けやゴラ」
「退くワケないだろ。オレたちはあんたらをこっから追い出す。」
陽志は言いながら手元の指輪に手を伸ばす。
戦う為の手段を手に入れる。
「……パパッと片付ける、コード展開」
言うが同時、陽志の足元を中心に僅かな風が吹く。
彼のコード名は『神無』。あらゆる超常現象を創造することができる。
例えば足元に空気を集め、放つと……。
「!?き、消えた?どこ行った」
「後ろだ」
この通りの高速移動で敵の背後を取ることが出来る。
次いで不良一人の胸を鋭い雷が貫ぬく。
「高速移動……んで、超雷波」
「ガハッ……!!?」
まさに一瞬で敵を一人殲滅してしまう陽志。続いて残る一人に視線を……
「!?な、何だそれ」
陽志、そして心二は不良の手を見て思わず口にする。「何だそれは……と。」
それを言葉にするなら紫の靄だ。不良の掌に紫の靄が纏っている。
「何だそれ?おいおいお前のコード展開と同じだぜ?ただし、オレらのはちょっと特別産だ」
フッ……!とすかさず目の前の陽志の肩へと紫の靄を纏う右手を伸ばす。
乱暴に肩を掴まれる陽志。彼の目の前には不気味に口を歪める不良。
「コード展開、『Asmodeus』の力、思い知れカスが」
ボキン、、、。
嫌な音が陽志の肩から聞こえたかと思えば不良は思わずグヒッ、と下卑笑いをこぼす。
「折れたろ?」
「……!?」
すぐさま陽志はダランと垂れ下がる右肩を物ともせずに後ろへ跳ぶ。
只事ではない陽志の表情を横目に心二はその異様な右肩に視線を向ける。
「お、おい陽志その腕……」
「……あぁ。右肩折れてる。」
平静を装ってるつもりか、即座に状況を言葉にするが信じられない。
他所から見た感じ、ただ触られただけで折られた……様に見えた。
「間違いない。あの靄纏ってる手に触られると、壊される。」
ゴクリ……と生唾を飲む心二は先ほどの音祐からの通話を思い出す。
『あいつらッ……どういう訳か成績優秀者並みの力を持ってやがる……』
つまり、コード展開の能力を使える不良が少なくとも複数攻めてきているということだ。
「……これ、結構やばいよな?」
「こいつみたいなコード持ちがいっぱいいるってなると……やばい。」
心二は真っ先に出て行った守郎を思い出す。
……まずい展開だ。
「よし、とりあえずこいつ倒そう。」
自信満々に心二は格好付ける様に指をパチンと鳴らす。
そして、キメ言葉。
「コード展開!武刄雷!!」
ファッ!!?と陽志はギョッとした目で心二を見る。
「お前……何でコード使えんの?」
「んー、まぁ後で話す!それよりオレが合図したらあの不良目掛けて最高火力の必殺コード放ってほしいんだけど」
必殺コードとは天条紅空の反爆破、菜川李女の水圧砲射のように成績優秀者がコード展開を用いた戦いに慣れると扱えるようになる必殺技さながらの一撃だ。
当然陽志も例外なく必殺コードを有している。
「いや、あの不良の手を何とかしないと必殺コードもクソも……」
「それは大丈夫!とにかく合図したら頼むぜ」
当然の陽志の言葉にも心二は強気な笑顔で返す。
すると心二は背中をフワフワ浮遊するライトブルーのポリゴン片を従わせて不良目掛けて接近する。
「さぁて、テメェはどこを壊されてぇんだ?」
「へっどこでも壊せるもんなら壊してみろ」
不良の余裕な笑みに心二も適当に笑みを返してやる。
懐から伸びる心二の右掌からポリゴン片を結集させた光線が空を切る。
「まずはそのひ弱なビームを壊しタルァ!」
不良は小蝿を払うように右手で光線を弾いた。弾く、と言うより打ち消すといった感じだった。
確かに陽志の言葉通り何でも壊せるようだ。
「さぁ!生意気なテメェはタマぶっ壊してやルァ!!」
むんず!っと嫌な感触が心二の股間を襲う。
「うぎゃーー!」
睾丸を潰される。想像するだけで苦汁を飲むように苦い顔になってしまう。
勿論バーチャルシステムを展開してるこの状況下では痛覚を伴うことは決してないのだが。
「……あり?」
一方不良は一瞬で笑みを引っ込める。
「壊した感触が……ねぇだと?」
その不良の反応に心二は二ヘラっと笑んだ。
武刄雷の能力の一つ。相手のコードスキル、システムスキルを不発に終わらせる『欠壊の太刀』だ。
「陽志!頼む!!」
「任せろ!」
陽志は一呼吸置いて不良の足元を見つめる。狙いを定めているらしい陽志の集中力はこちらからでも伝わってくる。
さて、この世で危険な現象に部類する中にこんな物がある。
火災による熱で可燃物が熱分解すると引火性のガスが発生した室内に充満した場合や天井の内装などに使われている可燃性素材が輻射熱などによって一気に発火した場合に生じた時、実に1,000℃を超える高温の環境が一気に広範囲に広がる、というものだ。
これが発生してしまうと人類の逃避は不可能。消化に至っては延焼を防ぐ程度の対応しか出来なくなる。
全焼は一言に、必至である。
そんな室内限定の脅威的現象は、もちろん陽志の有する神無の一つで実現可能である。
「心二、伏せてろよ……」
やがて陽志の口から発せられる。
一度発火するとあらゆるものを燃やし尽くすまで蹂躙するその脅威を、人類はこう明言した。
「……不焔。」
それは、一瞬だった。
不良の足元から一気に炎上した不焔は瞬く間に姿を消す。悲鳴などあげる間も無く不良は焼き焦げた肉塊へと姿を変えた。
「……っはぁ、疲れた。」
陽志はグタッとその場で倒れこんだ。
全てを燃やし尽くす廻焔を召喚する代償は決して小さくはない。
「……すげーな陽志。流石一年の成績第二位
だな」
「……おうよ、オレは少し休んだら行く。とりあえず心二は先走ってやがる守郎ん所行ってこい」
ヘラヘラ笑いながら陽志はシッシッと追い払う様に手を振る。
「……分かった、疲れ取れるまでゆっくり休んどけよ」
それだけ言い残して、心二は守郎の通っていった経路とされる正面玄関目掛けて駆け出した。
「……はぁ、やっぱ疲れるなこの技。もうこのまま寝たいくらいだ」
陽志の目蓋がゆっくりと閉じていく。
無理もない、ただでさえ強力な必殺コードを使っているのに、骨折なんて痛手を負っているのだ。バーチャル体は疲労に正直だ。
やがて現実の体に意識が戻されるのも時間の問題だろう。
「……いつ侵入者たちに襲われるかも分からないのに何でこんなところで寝てるのかしら」
聞きなれた女の声が、陽志の耳に最後に残る。
既に意識は現実体の夢の中。
先の心二や陽志の戦況通り、やはり幾らかの不良の手中にはコードが握られている。
まさに今、正門前ではパニックに陥っていた。
「如月!こいつらコード持ってやがる!」
「そっちもか!オレの相手も……っ!?」
背中を見せた如月雫に重たい何かが飛んでくる。
「おいおいケンカん時に背中見せるってどーなのヨ、生徒会長さぁん」
「……っだぁ?口だけは立派じゃんか不良もどき」
雫の言葉にイラっと額の青筋を浮かせる不良は両手を一杯に広げる。
「こんのチキン生徒会長サマに見せてやるよぉぉ!オレのコード能力、『Lucifer』の威力をッッッッ!!」
威勢の良い怒号と共に広げられた両掌に生成される光の円柱。長さは1メートル程度の物だが、彼はそれを軽々しく投げて来た。
「……!?」
炎を灯す雫の両拳はその二本の円柱を同時に殴り壊す。
「……ッ、そこそこ頑丈だな……」
先ほどの雫を襲った重たい何か、とは恐らくこれだろう。
「さぁさぁ!どんどん投げるゼェェ?」
既に不良の両手には先ほどの円柱がスタンバイされている。
「……これじゃキリがねぇな、おいハニー!ちょっといいか?」
「何だダーリン!?」
双剣を振り回しながらも青山礼愛の忙しそうな返事が返ってくる。
「アレを使うぞ!コード持ちは確実に1人ずつ倒していく!」
「アレだな?了解した!」
何やら了承すると礼愛は足元から氷の円筒を突き出して遥か上空へ打ち上げられる。
宙返りを幾らかの披露した後離れた雫の元へ上から礼愛が降ってきた。
「やるぞ。」
「移動の仕方がダイナミック過ぎてカッケーよハニー……」
素振りをした礼愛の双剣から冷ややかな威圧が飛んでくる。
早くしろ、との事だろうか。
「よし!行くぞ!」
雫は不良の間抜けヅラ目掛けて地を駆ける。
そんな直情的な行動にカモを見る様な目で不良は迎え撃つ。
「潰れろチキン!!」
乱雑に光源を放つ円筒を投げまくる不良の攻撃を冷静に回避、撃破する。
だが間髪入れない不良の攻撃は雫に接近を許さない。
そんな雫のすぐ後ろを走るのは礼愛だ。
「今だ!頼むぜハニー!」
「任せてもらおうダーリン!」
雫は右掌から炎を灯す。
そんな雫の右掌に礼愛が右手を添える。
二人の武器が一つに合わさる。
炎と氷、交わることのない二種の属性が交わる時、それは一つの奇跡を体現する!
「炎と」
「氷で」
「「凍て貫け!!」」
小さく灯っていた炎が一瞬にして火力を上げ不良目掛けて延び始める。
そんな火の槍を追うように火が氷へと姿を変える。
それにより行く手を阻む光の円筒を貫き、一気に不良の喉仏へと進行していく。
「んだとぉぉぉ!?」
不良の驚愕を物ともせずに二人の攻撃は加速する。
炎と氷の融合技。
「氷澪の炎焔!!」
「えっ何それダサいぐはっっ!!」
強烈な鋭い槍は無慈悲なツッコミを最期に不良の喉仏を貫いた。
不良の身体を貫いた氷の槍は瞬く間に炎に変貌し、不良を焼き尽くす。
「決まったな。」
「……ダサいのだろうか。この名前。」
「……そんなことない!カッケーって!」
技名の発案者である礼愛は次戦にまで技名のセンスを否定された恥辱を引きずることになるのは、言うまでもない。
「つぎ行くぞハニー!」
「お、おう。」
各地でコード能力を用いての戦いが繰り広げられる中、やはり苦戦を強いられるのはコード能力を有していない桜南生徒であった。
「ぐっ……」
「おいおいさっきまでの威勢はどーしたぁ?」
相手は五人。その全員が、コード所有者だ。
腹部に貫かれた大穴から大量の血液ポリゴンが流れ出している。
朦朧とする意識の中、遂に守郎は床に伏してしまう。
守郎の頭を足蹴にしながら不良達は先へ進む。
「よし、行くぞ。」
正面玄関が突破され、校内には続々と不良が侵入してきている。
「な……何あれ」
偶然トイレで外へ出ていた女子生徒は階下を見下ろすと不良がぞろぞろ歩いているのを見つけてしまう。
「校内に入ってきてる、これってマズいんじゃ……」
そんな彼女は気付かなかった。後ろから忍び寄る魔手の存在に。
「動くな。」
「ひっ!?」
刹那の悲鳴を最期に彼女……護道孤夏は引きずられていく。
クリスマスですね!皆さんは退屈なく過ごしてらっしゃるのでしょうか。
僕はそんなクリスマスの日に同じ中学で同じバイト仲間の子から「バイト先潰れるらしいで」なんてメッセが届きました。
……マジでか。
新しいバイト先探さな……!と同時に今まで通ってきたこのバイト先でもう働けないのか……と嘆息つきました。
いやいやだってですよ、時給900円でバイト終わりに残った食べ物食べさせてくれる、なんて高待遇なバイトそう探してもないですよ。
バイト先の唐揚げ、味噌汁、クロワッサン、カニクリームコロッケはもう食べられないんです。
そんなバイト先の忘年会に明日呼ばれてます。そんですぐ僕ん家でクリスマス会、そんでオレん家でお泊まり会。
僕にとっては明日が本当のクリスマスです!
さてさて雑談はここまでにしておいて、次回もよろしくお願いします。
あ、よろしければ僕のブログもよろしくお願いします笑↓
http://s.ameblo.jp/xma100xma100
あとがきイラストは心二、優璃、守郎の三人です。
ちなみに上のリンクの12/25の記事に別バージョンのクリスマスイラストが載ってます!
では、merryXmas!




