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バ革命  作者: 、、
〜結集の絆桜編〜
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#79 悪逆非道の謝罪

彼は真っ先にある人物の所属クラスへと足を運んでいた。


1組(ここ)からは一番離れている5組のクラスである。


途中の他クラスから漏れ聞こえてくる楽しそうな声とは相反して彼の顔付きは鋭く重たいものだった。



彼は何を思いながら廊下を歩くのか。

一体何が彼の表情をそこまで暗いものにしているのか。


ガララ、、、と5組の扉を開閉する。


クラス全員が彼に視線を向ける中、ハッとした表情とムッとした表情を浮かべる二人の女子生徒。


彼はその二人のうち、ハッとさせた表情の方を名指しで呼び出した。



「添神、ちょっといいか?」


「……え、私?」


戸惑いの表情を浮かべながら隣にいるクラスメイトの雨凪に目を向ける。


「……早苗と話したいことがあるんでしょ?」


訪ねてきた彼、橿場直之かしばなおゆきをキッと睨む雨凪。

そんな雨凪の態度に気分を害することもなく直之は頷く。


「……早苗、行ってあげて」


「う……うん。わかった。」


そう言う早苗の声は震えていた。


内心、雨凪は一人で直之の元へ行かせることを良しと思ってはいなかった。

それもそうだ。早苗が今までずっと長い期間の入院生活を送っていた原因は直之が彼女に暴行を働いたからだ。


心を病んでいた彼女を元凶の野郎と一緒にさせるなんて今すぐにでも止めに入ってやりたい。


……と、今までの雨凪は思っていたかもしれない。

今西優璃と出会うまでは。


彼女から聞かされた直之の印象は自分が抱いていたものと違っていた。

……クズなことは認めていたのだが。


正直直之の事がよくわからない。


一体彼の身に何があったのか。

もし二人の話し合いに付いて行ったらそれが分かるかもしれない。


「……ちょ……ちょっとだけ、ね。」


二人に続いて雨凪はコソコソと教室から出て行く。




直之が呼び出したのは中庭だった。


まだ出店が開いていないためか殆どの生徒は教室でダベっている。


広い中庭には直之と早苗の二人きりだ。



「あの……何の用?」


やはり戸惑う様子の早苗に直之はすぐに本題へと入る。


「……友だ……じャない、知り合いから添神が今日登校してくるッて聞いてな。一言言ッておきたかッたことがある。」


地面の草をゴスゴスッと小突きながら言葉を紡ぐ。


「ッあの時はごめんなさい!」


サッと頭を深く下げる直之を見て早苗は更に戸惑う。



「か、橿場?」


「ごめんなさい……ごめんなさいッ」


ただただ赦しを請う直之。以前の彼からは考えられない行動だ。



「前までのオレはどうかしてた、馬鹿みてェに人を見下し暴力を振るってきたッ。」


しかし当時の直之は、それに気付かなかった。強者こそが絶対。それにひれ伏す者共が弱者。

この世はエリート主義思想だ。それは完全に強者が弱者を嘲笑う世界。

確かに成績優秀者エリート低成績者ノン・エリートを虐げることはどうやら黙認されているこの世界。


しかし気付かぬうち、虐げる側は人道的思想が無くなっていく。直之が事実そうだった。



それに気付かせてくれたのは敗北。

天条心二てんじょうしんじ垣峰守郎かきみねしゅろうの戦科試合での敗北だ。



「あの時のオレを……赦してくださいッ!」


声を掠らせながら直之は地に足を着く。


未だ、早苗は戸惑っていた。違う、過去の彼とは全く違う。

その大きすぎる変化に戸惑わざるを得ないのだ。


……ただ、相手の謝罪に返す言葉を早苗は一つしか知らなかった。

優しい彼女らしい、まさに一言。



「……許します。」


優しい笑みを浮かべながら直之の元へ近寄り目線に合わせるようにしゃがむ。


「ありがとう……添神ッ。」



「もういいの。だから顔を上げて。」


早苗は直之の目をまじまじと見つめる。違う、目付きから全然以前の彼とは違っていた。


一体何が、彼をここまで変えたのか。雨凪同様、やはり早苗も疑問符を浮かべずにはいられなかった。


「な、何だ?」


あまりにも真剣な表情で凝視される直之は思わず尋ねる。

ふと我に帰る早苗は慌てふためきながら直之から離れる。


「おっとっと、ご、ごめんなさい。それじゃ私行くね。」


急に恥ずかしくなってしまった早苗は早々にその場から離れる。


一人になった直之は、さっきまで早苗が立っていた一点をただただ見惚けていた。


「……本当に、ありがとう」



直之の独り言を拾う者が居た。

早苗ではなく、雨凪だった。

壁に背中を預けながら二人の会話を聞いていたがやはり最後まで直之の事が分からない。


自分が冒した間違いをしっかり分かっていて、一所懸命に頭を下げて赦しを請う。


直之に一体全体……何があったのか。


彼との距離を縮めれば、それが分かるのか。


なんて、ありえもしない事を考えてみる。





挿絵(By みてみん)





「いやっは〜おはよう!」


元気よく手を振りながら教室に入って来る遅刻犯優璃はやけに笑顔を浮かべていた。


「こら今西さん。もう少し申し訳なさそうにしなさい!」


なんて態度を取っていると担任の花江先生から叱咤の声が飛んでくる。


「てへへ、ごめんなさーい」


「遅いよゆりー」


頭を下げて優璃はササッと声を手招きする由美達の元へ駆け寄る。


「まだ奴らは来てないの?」


声を潜めながら優璃は尋ねる。

奴ら……とは当然黒翅(ブラフロ)の事だろう。ロッカーを背中に預けながら心二は口を開く。



「今のところはな。まぁこのまま何もない方がいいんだけど。」



「そうか?オレはぶん殴りたくてしょーがねーけどな」


ボソリと物騒な事をつぶやく守郎。


こっわ〜いこの人怖い。


「思ったんだが……」


ふと、菜川李女ひだかりなが考え事を口にする。



「夏休みの時はこちらのバーチャルシステムの展開を封じていたから拉致なんて大胆な事をした訳だが……」


李女の言わんとすることを瞬間的に理解する。……つまるところ


「今回は全校生徒が手持ちの『次元石』で速攻に展開が出来る。危険性は無い……様に見える。」


……ということだ。


バーチャルシステムを手軽に展開出来るようになる『次元石』の登場で自分の身を守る事が可能になった。

逆を言えば、その次元石を無力化してしまえば自衛の手段は無くなり暴力事件の危機に晒される。

それが心二達の経験した夏休みの黒翅による拉致騒動だ。

そして今回。

正直言って、総合的に桜南側がパニックに陥ることは無いと思う。何せ強力な成績を持つ成績優秀者達が一つの学校である以上には数多く存在する。



「……そう言われてみりゃ、確かに奴ら……どうやって暴れるつもりなんだ?」



「ん?」


心二の懐から騒々しい着信音が鳴り響く。


「心二、音!先生おんのに……」


「たはーマナーモード忘れてたー」


慌てる心二と奏也にまたしても花江先生からの叱咤が飛んでくる。


「天条くん!さっさと電源を切りなさい!」


「すんませーん」


謝りながらも心二は着信先の名前を確認する。


「…………!」


心二の見開かれる双眸に守郎が目敏めざとく拾う。


「どーした心二。」


守郎を無視して心二は構わず着信を受け取る。


「もしもし木場か!?どうした!」


心二が声を荒げて電話に出る。

こちらを睨んでくる花江先生の視線が痛い。

先生を宥める優璃と由美の声が後ろで聞こえる。


「心二……やべーぞ、あいつら。」


ひゅーひゅー、と肺を殴られた様な掠れた息遣いと共に木場音祐きばおとすけは言葉を紡ごうと酸素を取り込む。


「あいつらッ……どういう訳か成績優秀者並みの力を持ってやがる……」


「は、は?一体どういう……」


キーン、コーン、カーン、コーン、、、。



挿絵(By みてみん)

その時、不気味なチャイムが校内に響いた。


「校内に多数の侵入者!校内の運営委員は至急正門前へ向かい、受付係と合流してください。それ以外の生徒は教室に戻って待機をしていなさい。」


教師の焦りを滲ませた様な声音での放送ですべての状況を把握する。


「来やがったか。」


拳を握る守郎は颯爽と教室を飛び出す。


「ま、待ちなさい垣峰くん!」


「先生、すんません!」


頭を下げる心二、そして、走った。


「天条くーーーん!怒られるのは先生なのよーーー!!」


今にも泣き出しそうな花江先生の声を背に心二は守郎を追いかける。


「おう心二、お前もか。」


後ろから同じように教室から飛び出した狭山陽志さやまようしの声に後ろ髪引かれる。


「陽志か……悪い予感が的中したみたいだ」


心二は苦い顔で再び携帯を耳元に持っていく。


「……木場、まぁ任せろ。多分なんとかなる。」


それだけ言うと心二は通話を終了する。


「陽志、相手側どうやら厄介みたいだ」


「厄介……か。」


面倒そうな表情を浮かべながら廊下を疾駆する。

色々気になることはあるが、全ては正門前まで行けば明らかになる。

……が、何より気になるのが多数の規模である。





正門前は非日常と化していた。


「何だお前ら!その背格好で当校の学園祭へ参加させるわけにはいかないぞ!」



正門前に溜まる威嚇的な髪型、服装の青年達を門前払いする受付係の二年生だが、向こうの数に気圧され声音が震えている。


彼の様子を見て彼らは嘲笑いながら前進する。



「退け、ここの生徒にひでー暴力振るわれたからなぁ。ここの学校はどーいう教育方針何ですか!?あぁ!??」


「……ぐっ」



有無を言わさず受付の生徒を殴り倒す巨漢は声を張り上げる。


「ヨォォシお前らぁ!暴れてコォォイ!」


おおおおおおぉぉぉぉ、と物凄い数の連中が一斉に桜南高校の敷地内へと侵入した。



出店の屋台で開店準備をしていた三年生達がその騒ぎに気付き顔を上げる。


「……おいおい、放送マジじゃん。どーすんのあれ」


「どうするも何も……あっ!」


起こった異常事態に嘆く彼らの前に威勢良く仁王立ちする生徒達が登場する。


その中でも一際異彩を放つ二人がいた。



「はーい、女子は下がってな。……ったく、ようやく最後の桜南祭に貢献できるってか。なぁハニー!」


「おいダーリン、あまりはしゃぎ過ぎるなよ。口は効ける程度に済ませるんだ。事情聴取しなければならないからな」




挿絵(By みてみん)



互いに余裕を漏らしながらゆっくりゆっくりと猛進してくる不良達を迎え撃つべく歩みを進める。


「あぁ!?なんだ二人きりで相手か?嘗めやがって!!」


「やっちまえぇぇぇぇ!!」


不良達の怒号と同時に、男は地を蹴り疾駆する。


「ハニー!頼む!!」


「了解したダーリン!」


ハニーと呼ばれる彼女は手早く手元の次元石を起動させバーチャルシステムを構築する。


「っし!んじゃご挨拶代わりに一発決めてやんぜぇぇぇ」


続いて疾駆するダーリンは両手に爆炎を出現させる。

その炎、発射するでもなければ燃やすわけでもない。

ただただ……


「っっらぁぁぁぁ!!」


殴る!


「ほげっ」

「ふぐっ」


両腕から放たれるストレートは爆炎を纏いながら接近してくる不良二人の顔面を見事に捉える。


だがしかし、後ろからは無限に不良軍団が続いている。

炎熱の纏い手、如月雫きさらぎしずくを無視して出店エリアまで侵軍を許してしまう。


「まったく、まぁダーリン一人で全員足止めは無理か。ここでの私達の役目は最低限ここで門前払いをすること」


ひゅー、、、と辺り一帯を冷たい風が吹き抜けたと同時、彼女の両手から美しい刀身の刀が出現する。


一振りすれば空気を震わせ、二振り目には空気凍て付く。


「……何だ?あの女の周り、やけに冷てぇ」


三振り、それが最期の一太刀。


空に伸ばされた両腕を勢い良く地面へ薙ぎ下ろす。

深々と地面に突き刺さる二刀からは即座に地を這う蛇の如く氷が地面を泳ぎ行く。


気付いた時にはもう遅い。


「へ。」


彼女の前方を走る不良が氷漬けの層を成す。


「ふむ……多いな。」


しかし後方に続く不良軍団、勢いは衰えず。


爪を噛む暇さえないこの戦場で彼女……風紀委員長青山礼愛(あおやまれあ)は手元のトランシーバーに口元を近付ける。


「案外早い出番になりそうだ。準備をしておいてくれ。」


『おう、了解しました姉御』


「……その呼び方何とかならんのか。」


『いんやいや、ハニーよりゃマシでsh』



ブチリ、と強制的にトランシーバーの電源を落とす。


ふぅ、と一息吐いて礼愛は顔を上げる。


「さて、後輩の重荷を出来るだけここで除くとしようか。」


再び構える二刀に彼女は誓う。

……桜南祭の不滅を。




頑張って更新ペースを上げてます。

冬休みの間になるべく話を進めないと書く時間がなくなりますからねぇ笑



新シリーズ二話目にして早くも話の本筋に入りました。

やりたいエピソードはもう決まってるので、不良と戦わせながら展開する予定です。


まぁそれなりに相手側にも秘策的なモノはあるので適当な戦いは出来ないこともあってそれに時間食われそうです。

是非次話もよろしくお願いします!


あとがきイラストは不憫なネーミングの雌龍代音姫ちゃんです。

本当ゴメン……(結構気にしてるんです。)



挿絵(By みてみん)





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