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バ革命  作者: 、、
〜侵襲の決戦恋舞編〜
72/96

#65 口づけは血の味わい

自己紹介は基本である。


自身を名乗ることはある種の威嚇行為であるという話を耳にしたことはないだろうか。


勿論あくまで一説なのだが。


ある漫画では殺す相手に自分の名を名乗ることは礼儀であると話しているシーンがある。

自分を殺した相手が誰かも分からぬまま死に逝くのは確かに心残りが出来るかもしれない。



「あたしは今西(いまにし)優璃(ゆり)。」


「私は流星(りゅうせい)雨凪(れいな)。」



名乗る彼女らの目は威嚇そのもの。

臆する素振りを一切垣間見せない攻めの姿勢が全身に現れていた。



「今西、こッから離れろ。」


不意に雨凪を睨む優璃に退けと声をかけるフラフラの直之。


「何言ってんの?あたし、こういう陰で悪いことしてるのを黙って見て見ぬ振りなんて出来ない。」



直之はふと、彼女との初対面を思い出した。

あの頃の自分は低成績者を見下し、あまつさえ財布を脅して取り上げたりパシリにしていたりした……自分でもぶん殴ってやりたいくらいクズだった。

彼女……いや、彼女らはそんな自分と真っ向から喧嘩を売ってきた。


わざわざ成績優秀者の自分に歯向かって来たくらいだ。たとえ女、教師、上級生が虐めていたとしても彼女らは立ち向かって行くのだろう。


……しかし、ここは直之にも譲れなかった。



「……ッ、いいからどッか行けッてんだよ!」


弱々しい声を無理やり荒げながら優璃に怒鳴る。


優璃は……退かない。


直之の言葉を無視して、前の女に向き直る。



「流星雨凪、だっけ?あんたはこいつに何をしてるの?」


へ?と馬鹿にしたように吹き出すと、嘲笑まじりに質問に答える。


「何って、イジメてあげてるんだけど?」


その態度に苛立つ優璃は拳を握り締めながら雨凪の眼前まで近付く。


「趣味悪い女。Sっ気を誰かにぶつけたいならあたしにやってみなよ、悦んであげないけど」


「女の悲鳴……ましてやあんたみたいな正義感振りまく自己満野郎なんかを虐めて……いいや、それもありかしら」


コツンと優璃の額を人差し指で小突く。


「でもね、私はただ虐めたくてこのクズを虐めてるわけじゃないの。こいつは、私の友達を虐めた。いわば報復。」


優璃は黙って直之に視線を向ける。

すると直之は優璃の視線に目を伏せながらも自嘲気味に言葉を漏らす。


「……そうだよ。オレはこいつの友達(ダチ)から金巻き上げて暴力を振るった

最低なクズだ。だからこの女に何されようが、オレは文句なんて言う資格はねェ」


直之はキッパリと言い切った。

脅されるでもなく、怖がるでもなく、ただ受け入れていた。




挿絵(By みてみん)



そんな直之に関心を持つように雨凪は直之を見下す。



「しかしまぁ、こいつも丸くなったものね。前は気まぐれに男女限らず絡んでは暴力振ったり財布奪ったりしてたのに……てっきり反逆してくるものと思ったら早苗の名前を出したらこうしてサンドバックになってくれてるんだから。」


言いながら振り上げた足を直之の鼻骨に蹴り押す。


ドサリと鈍い音を立てながら地に伏せる。

バーチャルシステム外の現実世界で先ほどの蹴りを入れたら間違いなく、鼻を折ってるだろう。



…………瞬間。


パァァン、と甲高い銃声が上がる。


優璃の右手にいつの間にか現れた拳銃の銃口からは硝煙(しょうえん)が空へ立ち上っていた。

威嚇射撃と呼ばれるものだ。



「……確かにこいつはクズだった、あたしも嫌なくらい知ってる。でもね、今の橿場は違う。拉致されたあたしや友達を助けてくれたし、今もこうして過去の自分の非を受け入れてる。今の橿場はあたしの友達なの。これ以上友達に暴力振るうんなら、容赦しない。」


優璃の目にはこれ以上ない敵意のこもった威圧が感じ取れた。

それは自身の貞操を守った彼を守るためなのか、彼女の正義感からなのか。


優璃は髪を(なび)かせて、両手で拳銃を構える。


「……あらあら。まさかここまで本気で邪魔しにくるなんて、ちょっと気は進まないけれど……」


言いながらも右手に召喚した武器のレイピアを構えると雨凪はベロンと下唇に舌を這わせる。


「優璃ちゃんには寝ててもらおうかしら」


「気安く名前で呼ばないでくれる?」



そんな戦う気満々の二人を直之も黙って見ていることなどできなかった。


「おい今西やめろ!」


既に大幅の血液が減らされており、立つこともままならない直之は、制止を促す声を上げるのが精一杯だった。


優璃の持つ拳銃が途端、青白く光を放つ。

そういえば、彼女の持つ拳銃は現実の物と異なる点がある。


銃身の僅か数センチ上の位置にライトグリーンの吹き出しの様なものが出現している。

その吹き出しの右下には弾数を示す銃弾が描かれている。その数二つ。


そして吹き出しの大部分に刻まれている『P』の文字が『R』へと変異する。

その変異と同調するように拳銃から銃身を大幅に増量したライフル銃へと変化した。PとはつまりPISTOL(ピストル)、RはRIFLE(ライフル)のことだ。


優璃の拳銃の変貌に雨凪はわざとらしく驚く。


「あら、便利な武器ね」


その余裕面を撃ち抜くが(ごと)く、優璃は引き金を引く。

優璃の表情は、至って冷静だった。


「銃弾なんか当たらないよ」


言いながら、雨凪は涼しい顔を浮かべ時速1000キロで空を切り裂く銃弾と対峙する。


そんな銃弾は信じられないくらい唐突に軌道を変えて雨凪の頬を掠める事もなく、見当違いの方向へ消えて行った。


優璃のライフルから吹き出る吹き出し右下の銃弾が二つから一つに減っている。

弾が再装填されるのは10秒という僅かな時間だ。


そんな秒単位のインターバルをたっぷり消費して、優璃は口を開けて呆然と立ち(すく)む。


「何で当たらないの?」


優璃の疑問が口から漏れる。

その実、対象物へ照準を定めてから放つバーチャルシステム内でのシステム的銃撃を回避するのは一筋縄ではいかない。


そんな攻撃を一歩も動かずに回避してみせた雨凪は尚も涼しい表情で優璃の疑問に答える。


「私に攻撃は当たらないわよ?」


そんな言葉、とても優璃には信じられなかった。

雨凪の成績を見るに点数は259点。


勿論特殊能力を使用できるコード展開は低成績者(ノンエリート)の彼女には使えない。

何かの力が優璃の銃撃を妨害したのは確か……。

と言うことは、彼女は自身の才能がもたらす能力、システムスキルを所有しているのだろう。

それもかなり上位。最上級のランク3のシステムスキルだ。


「私は成績優秀者の橿場に復讐しようとしてたのよ?当然抵抗されるのも予想して、それを鎮圧出来る力は持ってるわよ」


怪しく微笑む雨凪は、正体不明のシステムスキルのせいもあり、不気味な身震いをする自身の肩を抱く。

ライフルを拳銃のサイズに戻した優璃は、銃弾の残数が回復したにも関わらず攻撃を再開しようとはしない。



「あら?もう戦意喪失?」


言いながら、ゆっくりと優璃の元へ近付く雨凪。


「地面は爆ぜる。」


その言葉通りに優璃の足元から重い爆破音と共に砂埃を上げて優璃の身体を吹っ飛ばした。


「あんっ!」


背中から転倒し、前方……さっき自分が立っていた地面の(いびつ)(くぼ)みへ目線を向ける。


「……爆破系のシステムスキル?いいや、それじゃあたしの銃弾の軌道を逸らせない。」


背中についた砂埃を払いながら、優璃は雨凪のシステムスキルを探る。

まだ彼女は勝利を諦めてなどいない。


すぅ……と深呼吸を一つ。


吹き出す鼻息と同時に優璃は雨凪の元へ駆け出す。

銃のモードは持ちやすく片手で撃てる

PISTOLモードだ。


「地面は爆ぜる。」


先ほどと同じ文言。

優璃は思わず地を蹴り空中を舞う。


優璃自身の持つ運動能力はシステムスキルに反映されており、ランク1の身体強化と言うシステムスキルとして、優璃の腕力、脚力のパラメーターに強化が施されている。

そのため優璃の滞空時間は雨凪の想像を遥かに凌駕していた。


「きみぃ、いつまで飛んでるのかしら」



「これならどう!」


先ほどの銃撃とは違いかなりの近距離。

優璃は照準を雨凪に定め、引き金を引く。


「銃弾は当たらないわよ」


雨凪の眼前に迫る銃弾は何かに下から弾かれたようにヒュンヒュンと円を描きながら真上へ上げられる。


「また当たらないっ!」


宙で嘆く優璃の左頬にビンタを放つ。

ビターンと皮膚を弾く音は体育倉庫裏に響いた。


再び無様に転がる優璃は素早く立ち上がり駆け出す。


「もうやめろ!今西ィィ!」


一方的な勝負に見かねた直之は優璃に再び声をかける。


「くっっらえぇぇぇぇい!」


優璃の可愛らしい声から放たれた飛び蹴りは身体強化により雨凪の顔面を蹴り飛ばせるくらいの高さにまでジャンプ出来ていた。


てっきりワンパターンな銃撃を放ってくるかと思い込んでいた雨凪はだらしなく口を開けてあたふたと手振りする。


「突風!突風よ吹け!」


慌てたように雨凪は命令のような言葉を発する。

言葉通り……優璃の身体を突然現れた突風が吹き付け蹴りを入れることはおろか、何も出来ずに空を舞う。


体育館の屋根と同じくらいの高さまで打ち上げられた優璃には、バーチャルシステム内の空間とはいえ、高所恐怖症でなくとも不安で胸が苦しくなるところだろう。……巨乳とか関係なく。

そんな宙に浮かぶ優璃は地面に不時着するまで口元に笑みを浮かべていた。


「なるほど……。もしかして発した言葉通りに攻撃してくれる能力なのかも。

……いや、でもそれなら何であたし自身を爆破させたり飛び蹴りしたあたしを八つ裂きなり破裂なりしないんだろ」


物騒な考えを巡らす優璃。


しかし答えに行き着くためのヒントは与えられている。成績の悪い優璃は、決して頭の回転が遅いわけではない。


ただ少しの発想……。


それだけで充分なのだ。


「今までの攻撃……全てあたしに向けた物じゃないよね。銃弾を逸らす、地面を爆破させる、風を起こす。」


ぼそぼそと呟きながら見えてきた答えの糸を手繰り寄せる。


「……もしかして、対象をプレイヤーに向けての命令が出せない。」


一つの仮定を求めた優璃は手元の拳銃の弾数を確認する。

残数は二発、マックスだ。


意を決した優璃は再び雨凪へ突撃する。


優璃の表情を伺いながら雨凪は最良の行動を選定していた。


銃撃か体術。


一体どちらの攻撃なのか。


「迷うことないわね。突風よ吹け!」


ブアァァッ、と下から吹き付ける突風を寸前で右方へ飛んで回避。

そのまま雨凪との距離を詰める。


「このっ……地面よ爆ぜなさい!」



続く攻撃も前方へとでんぐり返し、被爆を防ぐ。


「あらあらっ……しつこいねぇ優璃ちゃんっ」


険しい表情を浮かべる雨凪にフンと鼻で笑ってみせるとさらに地を蹴り疾駆する。


「これで終わりよ、地よ割れろっ!」


荒げた声を上げる雨凪の前方の地がメキッボコッと軋みをあげる。

それに影響し、周囲の地面がひび割れ始める。


構わず接近する優璃だが、体重をかけると崩れてしまう足場に気付き後ろへ飛んで一旦引き返す。


これでは地が割れ始めている雨凪の周囲にすら近づくことが出来ない。


「さぁ優璃ちゃんはどうやって私を倒すのかしら?」


ようやく戻した余裕の表情と共に舌舐めずりのいやらしい音。


優璃は疲れ切った表情ながらも再び走行を開始する。


要は雨凪の元まで辿り着ければいいのだ。

足場が不安定であろうと、走れる地面があるなら走ってやる。


強気な今の優璃を誰にも止めることなど出来ない。


ダン、と踏みしめる地面はギシギシと軋みを上げて泥に足を突っ込んだかのように地面の硬さを感じることが出来ない。

それでも前へは進む。


上体を崩しながらも、スカートが(ひるがえ)ろうとも。彼女は必死に駆ける事をやめない。


最後の難関である雨凪の手前に出来た底なしの地割れを不安定な地を目一杯踏み締めて飛翔()んだ。


「かかっちゃったね優璃ちゃん!」


優璃は飛んだ。

飛んでしまった。


さっきと同じ展開だ。

身体の自由が効かない空中では雨凪の出す突風の命令を回避することは出来ない。

そのまま無抵抗に上空へ吹き飛ばされるしかないのだ。


「突風よ……!?」


言葉を濁す雨凪の前には飛びながら拳銃の照準を定める優璃。


「同時に二つ以上の命令は出来ないって予想してたけど、その反応を見る限り当たりっぽいね。」


冷や汗を垂らしながら優璃はキヒッと笑みを浮かべる。

一瞬の動揺が発しかけていた言葉を噛んだ雨凪には突風を吹かせる前に被弾させることなど優璃には容易だ。


発射される銃弾を防ぐべく、息を飲んで冷静を取り戻す。


銃声とほぼ同時に下した雨凪の命令はやはり優璃の銃撃をカクンと逸らした。


スタン、と着地した優璃は迷わず雨凪に手を伸ばす。接近戦を試みるつもりらしい。


「甘いわよ優璃ちゃん!突風よ……!?」


再び濁らせた言葉……しかし今回は濁らせた……と言うよりは防がれたというニュアンスがしっくりくるだろう。

いわば物理的に。



伸ばした優璃の左手は強引に雨凪の後頭部を引き寄せる。

その行動にハテナを浮かべる間も無く雨凪の口は優璃の唇によって塞がれてしまう。


濁さずに言えば、接吻(せっぷん)である。


「むっちゅぅぅぅ」


「んんんんんーーー!?」


かなり濃厚なキスを交わす二人。当然言葉を発して攻撃する雨凪に打つ手はない。右手に忘れられたように握られたレイピアもキスの凶行に思わず手離してしまう。


攻撃を防ぐためにここまでするとは……。


という雨凪の見当は少し外れている。

優璃はこの状態で勝ちを手にする気でいる。

今の雨凪は何の言葉も発することは出来ない。

それはつまり、銃弾を言葉の力で軌道を曲げることは出来ない。


雨凪の左胸下に添えられた硬い感触。


紛れもなく、自分を処する断罪の鉄屑。


ボフン、と篭った銃声は雨凪の身体を射抜いた。

同時に優璃は唾液まみれの唇を同じく唾液まみれの雨凪のプルプルとした唇からゆっくり離した。


んあっ……と生々しい息遣いを漏らす雨凪の口からはゴポリと赤黒い血液が垂れてくる。




挿絵(By みてみん)





情けの一撃がたった今装填された。


「ファーストキスが女の子って言うのも、悪くないかな」


優璃の言葉に血濡れの唇をグッと噛み締めて雨凪は卑屈に笑みを漏らす。


神の天運(ルック・ザ・デウス)と呼ばれた彼女のシステムスキルはどんな成績優秀者に対しても神の一手の如き力で猛威を振るってきた。

しかし、人間相手に直接下せない一手は、使い辛さを強いた。


そんな彼女は現実では驚異的な運に恵まれていた。まさしく神の子。

天才と呼ばれてきた雨凪は勉強に向ける努力を嘲笑(わら)った。


基本成績が全てのこの世でも、天才故の神の天運のスキルで成績優秀者から勝利を勝ち取ってきた。


秀才は天才に勝てない。


言葉通りの戦いをしてきた雨凪は初めて、神懸かりの才にも恵まれず、成績を上げる努力も何らしてこなかった女に敗北した。


しかしそれは所詮主観。


雨凪は知らなかった。


データに載らない才を。


それは一言に思いの力。


他人の為に身体を張る時、絞り出される未知の才。

優璃の場合、それはズバリ単純な発想力。

その一つのズバ抜けた要素が優璃の勝因だった。


「……ふぅー」



とどめの一発を放った優璃は疲労を吐き出すように()いた一息は優璃の全身から力を抜いた。

結果、倒れ込むようにその場へ倒れ込む。


すぐそこには同じく力尽きてすぅすぅ寝息を立てる雨凪。


バーチャルシステムが切断されると現実世界の地面の感触が全身を包み込む。


朦朧とする意識の中、近づいて来る直之の足音。


「オレが前と性格が変わッたのは、あの人のお陰だッたんだ。」



気だるげに腰を下ろしながら話す彼の声音が心地よい。

優璃は聞こうとする意志を残しつつも、無念に微睡みへと身を投じてしまう。


「低成績者の天条と垣峰に敗北したオレは他の成績優秀者に虐めを受けていた。弱者だの成績優秀者の面汚しだのと罵声を浴びせられた。今まで自分のしてきたことのツケが回ッてきたのかと思うと笑えてきたぜ。」


自嘲混じりに独り言を呟き始める直之はふと空を見上げた。


「そんな暴虐されるオレを助けたのが生徒会長の如月雫先輩だった。低成績者ながらも数人の成績優秀者を一気に倒して、心底成績だけが全てじゃないッて思い知ッたよ」


彼は直之に言った。


恩を感じてるなら、家族に何かしてやってくれ。何でもいいんだぞー?


「その日を境に、ろくに口を聞かなかった妹にケーキを買ッてやッたら……妙に懐いてきてな。ギャップッてやつか。オレは本当に無愛想だッたからなァ。」


よっこいせっ、と直之は立ち上がり、去り際に消え入りそうな一言を残した。


「……これでおあいこだ。未だ成績優秀者に絡まれるオレなんかに、もう構うんじゃねェぞ」


返す言葉はない。


耳を向ける者がいないと分かっていながら、それでもここまで自分に踏み込んだ話をしてきた直之は、改めて自身の心変わりに寒気がした。





フロンティア二回戦もいつの間にか終盤。


一回戦より遥かに早い進行もあってかナレーションは二回戦最終試合の組み合わせをコールしていた。


『二回戦最終試合、垣峰守郎と天条紅空は5分後に地下体育館へ来なさい』


呼ばれた守郎はベンチから立ち上がり由美に声をかける。


「優璃の奴がいい場所見つけて帰ってきたら先に行っててくれ。場所をメッセで飛ばしてくれりゃいいからよ」


オッケー!とグーサインを出す由美を背に地下体育館へ向かう。


「守郎!」


紅空に敗北した心二は煽るような目線を守郎の背に向ける。


「負けたからって帰りにくいなんて思うこと無いんだよ?真っ直ぐ帰ってこい」


「てめぇは真っ直ぐ帰ってこなかったけどな。」



奏也も相談室の出店へ戻ってしまい、今や心二、由美、李女しか残っていない。


静かな場所を探しに行った優璃もかれこれ一時間戻ってこない。


低成績者の彼女が成績優秀者狩り(エリートハンター)に狙われることはないだろうと安心しているが心二を苛むこの妙な胸騒ぎはなんだろうか。



地下体育館へ向かう守郎の背中を見送り、心二もベンチから立ち上がる。


「オレ、ちょっと優璃を探してくるよ。待っててくれ」


「りょーかーい。」


「あぁ。」


由美と李女を置いて心二はとにかく人気のないところを探し始める。

まずは部室棟裏の小道だ。





守郎はうつらうつらと地下体育館へ向かっていた。

守郎の戦科試合対戦相手は先ほどのアナウンス通り第二学年第四位の実力を持つ天条心二の姉、天条紅空だ。


弟の心二とは違い、姉の紅空は成績優秀。加えあの美貌だ。

……美貌は、まぁ関係無いわけだが。


とにかく……と、守郎は情けない戦い方はしないと心掛ける。


そんな守郎はそっと誰かが自分の右腕を掴んだのに気付き振り返った。


「やっほしゅーくん」


「……紅空さん」



挿絵(By みてみん)




相手が紅空だと分かると、つい険しく皺を刻んでいた目元を柔らげる。


「いやぁ、試合当たっちゃったね。お手柔らかにね」


「そりゃこっちのセリフなんすけど……」


乾いた笑いを交えながら頭をかく。


体育館に着くまでの間をもたせるための話題を探す守郎は現在進行形でも問題になっている成績優秀者狩りの話を切り出す。


「紅空さんはどう思い「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」……って、え?」


急に何かを思い出したかの様に叫ぶ紅空に守郎は目を点にして紅空を見つめる。


「今ポケットの中触ってたらiPhoneをさっきまで友達と座ってた場所に忘れてきちゃって……先に行っててしゅーくん!」


「あ……紅空さ……って、もう行っちまった。」


相当慌てているらしく凄い速さで校舎の陰へと消えて行った。



「……しゃーねぇ。先に行くか。」


体育館へ向かう守郎の足取りは、足元に落ちた唐揚げを避けて歩くくらいには冷静だった。



……当たり前か。

先日発売されたコープスパーティーの攻略に熱が入っていたため更新が遅れていました。

おかげでクリア出来ました。良樹かっこよかったです。


本日には極黒のブリュンヒルデのBOXも届きました。

寧子さんの鼻歌の中毒性は計り知れないです。


夏休みだというのに集中的な更新が出来ないのは痛いですね。


本編の話をすると、ようやく成績優秀者狩りの一人を倒しました。

残るは蒔枷霧亜のみですが、模倣犯としてややこしく綾瀬堅志も関わってきたのでやはりまだまだこのシリーズは終わりません。


次話はようやく守郎の戦いです。


個人的には楽しく書けそうだなーと楽しみです。


引き続き決戦恋舞編をよろしくお願いします。


あとがきは優璃のピストルモードです。

銃から吹き出しが出てる……というのがいまいちどんなものか分からない人もいると思うので描いてみました。

中心にピストルモードなのでPの文字。

右下には本文通り弾数が表示されています。



挿絵(By みてみん)




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