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バ革命  作者: 、、
〜七人殺しの七不思議編〜
6/96

#6 夕焼けの射す教室

※軽めのグロ描写ありです。

これは夢だ。これは夢だ……と天条心二(てんじょうしんじ)は自分に言い聞かせる。

大抵夢で奇想天外な出来事が身に起こると「あぁ、夢だから問題ねぇな」と諦めが付いてしまうものだが、今回の夢に関しては少し違っていた。


早く覚めないと非常にまずいことになる。

たかが夢でこんなに焦るのは、怖いとかそういう身に迫る恐怖から逃げるためではなく、

ただ単に目の前の一糸纏わぬ妖艶な体を晒す天条心二の異性友達、今西優璃(いまにしゆり)から逃げるためだ。


……状況が分からない。


そんな戸惑いを隠せない心二の後ろで何故か熊の着ぐるみを纏う垣峰守郎(かきみねしゅろう)が両手を挙げながら回っている。

守郎から視線を外しもう一度裸の優璃に目を向けた。

夢とは思いがたいくらいにリアルな女の子の体がそこにはあった。


(てゆーかヤバイヤバイ。乳首まではっきり見えてんじゃん!?下も……………!?)




「見ちゃダメなんだァァァァァァ!!!!」



ガタッと突然の奇声に驚いた授業中のクラスメイト達は一斉に奇声を発した張本人である

天条心二の方を振り向いた。

夢だったことに心二は安堵の息を漏らすが、しかし現実問題。居眠りしていた挙げ句授業妨害までやらかした心二は教師から特別指導のため授業後に呼び出されるという目に見えた結末に頭を抱える。

……これは夢だ、と自分を安心させても現実こればかりは無意味。



授業終了のチャイムが校内に流れる。

心二は昼休みなのにも関わらず教師にどこかへ連れていかれてしまった。






挿絵(By みてみん)



心二のいない昼休みの教室では何ら変わらないいつもの昼休みが過ぎていく。

そんな中、守郎と優璃そして通学路が真反対で一緒に帰る機会はない二人の男女が昼食を共にしていた。


「それにしても、最近の心二呼び出されすぎやな」


関西弁混じりに茶化しながら箸で卵焼きを頬張るのが少々長髪の前髪をセンターで分けてる外見女の子な少年、太刀川奏也たちかわかなやは話題を提示した。


日頃の行いだ、と数日前に心二と一緒に呼び出された守郎が偉そうに言うのを横目に守郎には言われたくないでしょ、とからかいながら優璃。

その優璃の弁当箱からこんにゃくを摘み、口に放り込む女の子。

彼女の名は古旗由美ふるはたゆみ。黒髪を横にフリフリしながらもきゅもきゅとこんにゃくの食感を楽しんでいる。


「ちょっとー!あたしのこんにゃく食べないでよー!!」


すかさず由美の弁当箱からウインナーを取ろうと立ち上がる優璃。


「甘いんだよ優璃は!この世界は弱肉強食、強いものが勝つる!!」


「だから今から下剋上してあげるよ!!」


賑やかな昼食。言葉を選べばそんな心暖まる言い方ができるが、守郎から言わせれば『行儀悪い』の一言しか出てこない。


「うっすー。…ってなんだなんだ?行儀悪すぎだろお前ら」


守郎の一言を代弁するのは隣のクラスからいつもわざわざこっちに来て弁当を共にする男子生徒、狭山陽志さやまようし成績優秀者エリートである。

この桜南高校の成績優秀者は先日心二と守郎に戦科試合で敗れた橿場直之のように自分より成績が下の者を見下したり、そもそも関わりを持ちすらしない生徒が大半だが、陽志はそんな態度を一切見せない。

本人(いわ)く「そんなのわかんないな。とりあえず遊びに行こうぜ」だそうだ。

そんな陽志はテスト前でも平気でそんなことを言ってしまう男なのだ。

そんな彼が成績優秀者なのを気に入らない成績優秀者はいるだろうが、大抵の人間からは大変好かれているであろう青少年だ。

その陽志の横にいるのは同じく成績優秀者であり、一目でわかる金髪美少女の容姿を持つ帰国子女の弥富深海やとみあくあ

いわゆるきらきらネームだ。深い海と書いてAQUAアクア。深海本人はあくあと呼ばれるのが少し嫌な様なので親しい友達はくーちゃんの愛称で馴染んでいる。


挿絵(By みてみん)




「あー!くーちゃんだー!!」


ウインナー強奪を諦め深海に抱きつく。

そしてスキンシップの口づけを交わした。



「「「…………………(ぽっ)。」」」



その場にいる三人の男勢は頬を赤く染める。

帰国子女の深海は挨拶のあとに口づけを交わす習慣のある所で育ったため最初に深海へ喋りかけた優璃はいきなり金髪美少女から唇を奪われ恥ずかしさの余り目を回して倒れたことがある。

その当事者の心二は語る。


「男にも挨拶代わりにキスしてくれると思ったらね、日本代表の優璃達に教育されちゃって女の子にしかしなくなってさぁ…卑怯だよ!オレも金髪美少女とキスしてみたいよ!!!!」


さてさて、そんなスキンシップという名の口づけが深海とは当たり前の日常茶飯事にまで馴染んだ入学からの一ヶ月。

この心二を入れて計七人がいつもツルんでいるお馴染みの面子である。


その賑やかな昼食をドアから見つめる視線が一つ。

教師から解放された心二だったのだが。


「…………なんか、あの雰囲気に入りにくい。」


シャイな一面を誰も知らないところで発揮する心二はいつもの仲に入れずにいた。






「何も怒る気はないんですよ?」


時は数分前に戻り。


もはや連行されるのに慣れた心二は職員室に連れてこられていた。


担任の花江幸(はなえゆき)先生から聞かされたのは衝撃の事実だった。


「実は、天条くんがお昼寝してる間に学級委員を決めててね、男の子の方の委員長に天条くんにいっぱい票が入ってて…垣峰くんが「寝てるヤツが悪いんだから勝手に決めちまおうぜ」って決めちゃったんですよ」


「花江ちゃんひどい!!ひどすぎるよおぉぉぉぉぉ!!」



職員室にも関わらず叫ぶ心二。

端から見ればDQNそのものな奇行に室内の教師陣からの視線を感じる。……特に鬼神勇次郎(おにがみゆうじろう)の視線が飛び抜けて目立つ。


「女の子の方は菜川さんが喜んで引き受けてね。さっそく仲良く放課後に文化祭のことで残ってほしいんだけど…」


菜川李女(なかわりな)。入学式の時から近寄りがたい雰囲気を醸し出し、これまで彼女が笑顔で人と喋っているところを見たことがない。

無論、心二は話すらしたことがない。



(気まずいよぉぉぉ~……。)






無人の教室に男女が二人。


例によって花江先生から文化祭のクラスの出し物の相談、という名の先生がいない時のクラスの雰囲気や雑談を話し合うだけの会議を済ませ、李女と二人他愛もない雑談をしていた。


「ほぅ、天条にはお姉さんがいらっしゃるのか。」


「あぁ、それがちっと困った姉ちゃんでよ~」



この放課後でわかったこと。

菜川李女はとても話をするのが好きだった、ということだった。

いつも一人本を読んではいるが実は慣れない周りの環境に気圧されて話しかけられずにいた、らしい。


心二は自然に彼女の笑顔を見ることができた。

普段見ていなかっただけにクールな顔立ちから時々こぼれる笑みには心にキュンと来るものがある。



「おっと、そろそろ帰らなくてはな。」



時計を見るとすでに短針は6の文字を回っていた。

どうりでいつの間にか夕陽が射し込んでるわけだ。


「んじゃ、オレも帰るかね。昇降口まで一緒に帰ろっか!」




「あぁ、行こう。」




……突如、心二は歪む視界に上体のバランスを崩し転倒する。

……目の前が真っ暗になった。






気がつくとまだ心二は教室にいた。

目の前には恐怖に顔を歪ませた李女の姿。


状況が読めない。


とりあえず後ろに目を向けた。



「……………え?」



目を疑った。


心二は李女に背を向け振り返り教室のドアを見た。


そこには人がいた。

体つきからして間違いなく女の子だ。


心二が目を疑ったのはその彼女の頭だ。

あるはずのものが、分かりやすいくらいに欠如している。


目を凝らす。



そして理解した。


彼女の右の頭蓋が半分、(いびつ)に砕かれていた。




挿絵(By みてみん)




「う……うっ…うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」



悲鳴を上げながら腰を抜かす心二。

李女を見る。焦点があっていない。


(放心してるのか?………おいおいマジかよ!!)



「菜川!!しっかりしろ!菜川!!!」


乱暴に肩を揺する心二。

半ば強引に李女に正気を戻させた。




「て…て、天条。あれは…一体」



「わからない!とりあえず…」


頭蓋を砕かれた彼女の足元には血溜まりが出来ていた。頭蓋の中身から臓物のような物が…



「に………逃げよう、逃げよう!!!!」



不気味な正体不明の女の子のいるドアとは違う後ろのドアから教室を脱出する。夕陽が当たらず電気の()いていない薄暗い廊下を李女の手をぎゅっと握り、ひたすらに階段を降りた。




無事に校門までやって来た心二と李女。


悪夢のような光景だった。人間の頭が…。頭の中身が……。

お昼前に見たあの夢の続きなら、早く覚めてほしいと願うくらいだ。

隣の李女を見ると、さっきまでの凛とした彼女の面影は見当たらない。それほどまでに足を揺らし顔が真っ青だった。李女の柔らかなそうな唇からはカチカチと歯が音を立てている。


「……………な、なぁ菜川。さっきのあれ、見たよね?」



唾を飲み込み首を縦に揺らす。


「なんだろうあれ。死体?頭が…頭が……!」



しゃがんで頭を押さえる。


無理もない。あんな人間の姿を生で見てしまったんだから。

と言うことは、フィクションではないのだ。

実際にそこにあった。そこに存在していたノンフィクションの死体だったのだ。


辺りが闇を纏い始めた。

校門前の時計はすでに6時半。



「なぁ菜川。お前一人で帰れるか?」 



「わ、私。今家族が新婚旅行で一人なんだ」


こんな状態の彼女を一人で誰もいない家に帰してもよいのか。

心二は思わず提案した。


「な、なら…今日はオレん家に泊まってくか?」


家には家族もいるし紅空だっている。

なにも問題はないはずだ。



「い、良いのか?そんな急に…ご家族に悪いんじゃ…」



「問題なし。さ、肩を貸すよ。」


実を言うと帰り道約徒歩30分の道のりを一人で帰るのは、気が滅入りそうだったからというのが心二の本音だった。



というわけで第2シリーズです!


新キャラも一気に増やしごちゃごちゃしちゃいましたが一人ずつ、そして確実に個性あるキャラにしていこうと思います。


どうぞこの続きもお付き合い下さいませ。

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