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バ革命  作者: 、、
〜不可侵の救出戦線編〜
17/96

#17 ハジマリの予兆


「んんんー!!気持ちいいーーん」


立ち上る湯気の中、覗かせる美しい女体がやけに神秘的に映るのはそこが女湯と言う名の聖域だからなのか。

『女湯』と聞くと覗きたくなる衝動に刈られるのは、もしかしたら聖域サンクチュアリと言う名の楽園(エデン)が男達を(つど)わせているからなのかもしれない。




「……って、んなわけないだろ。ただ単に性欲の(おもむ)くままに覗こうとしてるだけだ。」


天条心二(てんじょうしんじ)の一人言が露天にポツリと漏れる。


回りには心二以外誰もいない。他の奴らは屋内の風呂を堪能(たんのう)しているところだろう。

心二は好物を先に食べてしまう派の人間だ。

なら屋内からお風呂を堪能している彼らは好きなものは最後に食べる派の人間なのだろう。

嫌に分かりやすい性格の違いだ。


心二は欠伸あくびをしながら目一杯体を伸ばし、暖かいお湯に顎まで浸かる。

すると(まぶた)が重くなってくるのを感じる。

晩ご飯からの温泉。これはいつの時代も眠気を誘う最強コンボと言えるだろう。


そんなウトウトしている心二の目を冷ましたのは露天風呂の壁の向こう側、すなわち女湯から聞こえてくる今西優璃(いまにしゆり)の色っぽい喘ぎが聞こえた。


(……優璃か?くそっめっちゃ覗きたい。)


そんな欲に刈られていると(ようや)く屋内風呂を満喫した奏也がガララ、と屋内と露天とを仕切るスライドドアを開けて入ってくる。


「お〜…これはまた、気持ち良さそうな露天やなぁ」


ひゃひっ!?と変な声を上げてしまう心二。

露天に入ってきたのは外見完璧美少女の男…という矛盾を纏いし太刀川奏也(たちかわかなや)が腰にタオルを巻いて入ってきた。


「心二、顔が真っ赤やぞ?逆上(のぼ)せとるんか?」


「へ!?だ大丈夫ですはい!」




挿絵(By みてみん)





顔はほんとにみた限り女の子なのに、堂々と何の膨らみもない胸、包み隠さずに言うと乳首を見せられると、なにか罪悪感みたいなものが心二の心を渦巻く。


(何だろこれ、合法的な覗き?)


そしてお湯に浸かるときに邪魔な腰に巻かれたタオルをスラリ、と床に落とす。


「ッ潜水!!」


勢いよくお湯に顔を沈め、奏也の暴れん坊将軍を視界に入れることを阻止した。

前に一度だけ奏也のをトイレで見た……らしいのだが、あまりその時のことを覚えていない。

守郎が言うには心二自身が突然数分前の記憶を忘れるくらい頭をどつきまわしてほしい、と涙ながらに懇願してきたことがあるという。

理由を聞くと「奏也のを見てしまったんだ!オレは奏也を奏ちゃんとして見ていたいんだ!こんな記憶を残しておいちゃダメなんだよ!!!」とさらに鼻水を垂らしながら吠えてきたらしい。


(どんだけ見たくなかったんだよオレ。)


お陰でキレイサッパリ忘れ去ることができたのだが、友達に対して記憶を失うくらいの暴力を振るってくれた守郎に少しばかり犯罪の臭いが漂う。


(……ほんとどれだけ殴られたんだよ。なんか怖い。)


ぷはぁ!と潜水を終了し目を開ける。


目の前には、天使がいた。男湯に降臨せしその天使の名を心二は知っている。

そう………


「…………奏ちゃんマジ天使」


「奏ちゃんゆうなっての。」


腕を伸ばし色っぽい声を漏らす奏也。

伸び終えると上を見上げながら目を薄く開き甘い息を吐く。


「……………………………おぉ。」


奏也の仕草がいちいち心二の男の子センサーを刺激する。


「……………な、なんや心二?」


心二の視線に気付いた奏也は少し恥ずかしそうな素振りを取る。


「あ、いやぁ。脇毛生えてねぇんだなぁって。オレもまだ生えなくてさ~ははっ」


(ってなに言ってんだオレのバカ!奏也に脇毛?そんな絶望想像すらしたくない!)


「そ、そやねんなぁ。いつ生えてくるんやろか。下ならもうとっくに…」


「あ!そう言えば守郎とかはまだ中に居んの?勿体ねぇなぁ!こんなにも気持ちいいのにぃぃぃ!!!」


奏也のデリケートゾーンの話をする前に懸命な話題転換を強行した心二。


「せやかて中もめっちゃ気持ちええで?心二も入ってきたらええやん」


「いやいや!せっかく二人きりなんだし!互いに語り合おうぜ奏ちゃん!」


風呂から出たくても先程の奏也の色っぽい声のせいで心二のデリケートゾーンが反応しきっている。

……今風呂から出たらとんでもない醜態(しゅうたい)を晒す羽目(はめ)になるだろう。


心二に残された道はひとつ。


心二のデリケートゾーンのほとぼりが覚めるまでは露天風呂で粘らねばならない。



「………そ、そっか!なんや嬉しいこと言ってくれるやんけ!あと奏ちゃんゆうなや。」


無邪気な笑顔を心二に見せる奏也。


「せやなー、心二は好きな女子はいんの?」


そんな笑顔とは裏腹にいきなり答えにくい質問が心二に突き刺さる。

答えられるわけがない。下手したら隣の風呂の女連中に聞かれる恐れがある。

奏也は案外簡単に向こう側の風呂の会話が聞こえてしまうことを知らない。


先ほど隣から露天風呂を堪能する優璃の喘ぎが聞こえるほどに男子風呂と女子風呂の境界線は薄いのだ。

そしてうっかり下の毛の話をしようとした辺りをみる限り、奏也は天然だ。

当然のように下ネタをぶっ込んでくる予感しかしない。

下手な会話は墓穴を踏んでしまう。


「好きな女子?…………バカ言えよオレは男が好きだよ。」


……だから下手に女の子の話を引き出すより、自ら話題を曲げる必要があるのだ。


「…………お、おう。そっか。」


…………………………………………………。


(いやぁぁぁぁぁ!!!!この場面での沈黙は死を選びたいレベルゥゥゥゥゥ!!!!)


「わ、わいは、せやな〜……」


人差し指を顎に当てながら考える仕草を取る。


(え?待て待て好きな女子いんの!?……まぁ一応男だしな………ってえ?言うの!!!?)


女子風呂には優璃は確実にいる。

もし奏也の好きな女子が優璃だったなら……


「ま、待て待て待て!!」


慌てて言葉を紡ごうとする奏也を(さえぎ)る心二。


「……な、なんや?どしたんや?」



心二のマジなテンションの声音に若干引き気味に尋ねる奏也。


「それよりあれだ。もうおっぱいの話をしよう!」


せめて触れやすい下ネタを話題に選んだ心二。


「お、おっぱいの話。せやな!おっぱいは大好きや!」


(あぁ……外見と発言のギャップがすごいよ。)




「おっしゅー優璃ぃ!温泉気持ちいい?…………ってどしたの?」


屋内風呂を堪能し終えた古旗由美(ふるはたゆみ)が露天に入ってきた。


「あぁ、由美。いや〜隣から聞こえてくる歌が…ね」


腹を抱えながら優璃が答える。


由美が小首を傾けると耳を澄ますまでもなく隣からの声が聞こえてくる。



「おっぱぱーい!おっぱぱーい!おっぱぱおっぱぱおっぱっぱーい!!」


男風呂から聞こえてくる謎の歌。

心二と奏也のデュエットで歌われているようだ。

ところどころにハモりとかも織り混ぜている。


「……………男のテンションってわからないよ。」


そんな由美とは違い、今だお湯をパシャパシャ叩きながら、優璃は笑う。




「ぐは〜〜〜〜〜〜〜。」


妙な声を漏らしながら敷かれた布団に倒れ込む心二。



夜も更け現在は二十三時前。

毎日深夜まで起きている心二にとってこの時間帯はまだまだ活動時間内。


「あ〜、疲れた。寝るからおやすみ〜」


しかし心二は眠りに就こうとしている。流石に疲れたようだ。


「え〜、もう寝てまうんか心二〜。みんなどうする?」


まだまだ夜はこれからやで!といった感じで同部屋の垣峰守郎(かきみねしゅろう)狭山陽志(さやまようし)を活気付ける。


「………まぁ、まだ眠くはねぇしな」


そう呟く守郎に「マジか、オレはちょっと眠いぞ…」と目を(こす)りながら漏らす陽志。


「二人で起きてても仕方ねぇか。寝ようぜ、奏也。」


「うー。しゃぁないか」


守郎の言葉に妥協する。余韻を残しつつ奏也は電気を消す。


明日は何しよかな〜。


朝への期待に胸を(ふく)らましながら、奏也も床に就く。




「………ね〜ね〜みんな!ちょっと提案があるんだけど……」


同時刻、女子部屋ではまだ会話が続けられていた。


「ん?なになに?」


興味津々といった感じで優璃の提案に耳を傾ける由美。


「明日の夜に心二達を驚かせてやろうよ!」


声を潜ませながら優璃が言う。


「……?どうやって驚かせるのだ?」


尋ねる菜川李女(なかわりな)に優璃が即答する。


「あたし達が幽霊役で肝試し……ってのは?」


「おっほー!面白そう!!」


変わらず興味津々の由美。


「でしょでしょ?それで、何かいいアトラクションない?」


「………なら、こんな方法はどうかしら」



弥富深海(やとみあくあ)ことくーちゃんが身振り手振りで可愛らしく説明を始める。


……やがて日にちが変わり、二日目。



「……おはようございます。すみません、朝早く。ここに先客で来てる『橿場』の連れ何ですけど。」


朝七時、心二たちの泊まる旅館の受け付けに一人の男が来客として訪れていた。


「あ〜、はいはいもちろんですよ。」


ゆっくりとした口調で受け付けのおばさんがそばの宿泊者記入用のタブレットを差し出す。


「お名前と住所、書いてくださるかい?」


「はい。」


男はすらすらと個人情報を入力していく。


「それにしても、もう夏休みかね?昨日も学生さんが三泊の旅行に来ていてね。」


「はい、夏休みですよ。まぁここは他の旅館に比べりゃァ大分お手頃な値段ですしね。学生も泊まりやすいッすね。」


書き終えると紙をおばさんに差し出す。


「あー、はいはい。では、お連れさんの部屋を案内しますよ。」



波乱の二日目が幕を開けようとしていた。

ひそひそと近付く暗雲は『不穏』と表現するに相応しいモノだろう。

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