琉璃色のたまご(再)
真珠宮の中央。
──“始まりの海”。
ギルターとゼータ、そしてツムギはそこに足を踏み入れた。
ミルゥも付いてきている。
ツムギは部屋の中心で光を放つ、青い球体を見上げる。
満月の夜以来、初めて見る卵。
それは、ギルターたちの背を超えるほどに、大きくなっていた。
その閉じられた海の中を、三匹の小さな竜が悠々と泳いでいる。
「綺麗……」
“生まれるまで母親に会わせない”というあの掟は、確かに子どもたちを守るためのものだったのかもしれない。
けれど、孵化できない竜が増えたのは、それも一つの原因ではないだろうか。
──愛情不足。
子どもたちをストレスから守るために、母親の愛情からも切り離してしまっていたから。
隣を見上げ、不安そうなギルターと、あくまでしかめっ面を貫くゼータに、微笑んでみせる。
これほどまでに愛したがりで愛されたがりの、愛情を必要とする、愛しい種族。
卵の中の竜たちが、ツムギに気付いて集まってくる。
キューキュー、と愛しい声がする。
──こんなはずじゃなかった。
ツムギは思う。
閉じられた部屋で、ずっとあのまま、死ぬまで一人。
結婚することも、子どもをもつこともないはずだった。
ギルターがツムギを抱いたまま一歩踏み出す。
海に、透明な橋がかかる。
橋の下にはナギウモが滑るように泳いでいる。
ギルターは卵の側へと歩み寄る。
ツムギは手を伸ばし、額を卵に押し付けた。
六つの青が、まっすぐツムギに向けられる。
「あたしの赤ちゃん……」
うっとりと目を閉じると、胸元の祝珠がやわらかな光を放つ。
ツムギは、あの日は口に出せなかった言葉をゆっくりとつむいだ。
「あたしを、お母さんにしてくれてありがとう」
三匹の子竜が応えるように、卵の中で、くるりと舞った。
──ニライカナイの花嫁 第一部 [完]──




