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ニライカナイの花嫁  作者: 望月冴子
第5章:帰ってきた場所

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琉璃色のたまご(再)

 真珠宮の中央。


 ──“始まりの海”。


 ギルターとゼータ、そしてツムギはそこに足を踏み入れた。

 ミルゥも付いてきている。


 ツムギは部屋の中心で光を放つ、青い球体を見上げる。


 満月の夜以来、初めて見る卵。


 それは、ギルターたちの背を超えるほどに、大きくなっていた。

 その閉じられた海の中を、三匹の小さな竜が悠々と泳いでいる。


「綺麗……」


 “生まれるまで母親に会わせない”というあの掟は、確かに子どもたちを守るためのものだったのかもしれない。

 けれど、孵化できない竜が増えたのは、それも一つの原因ではないだろうか。


 ──愛情不足。


 子どもたちをストレスから守るために、母親の愛情からも切り離してしまっていたから。


 隣を見上げ、不安そうなギルターと、あくまでしかめっ面を貫くゼータに、微笑んでみせる。


 これほどまでに愛したがりで愛されたがりの、愛情を必要とする、愛しい種族。


 卵の中の竜たちが、ツムギに気付いて集まってくる。

 キューキュー、と愛しい声がする。


 ──こんなはずじゃなかった。

 

 ツムギは思う。


 閉じられた部屋で、ずっとあのまま、死ぬまで一人。

 結婚することも、子どもをもつこともないはずだった。


 ギルターがツムギを抱いたまま一歩踏み出す。

 海に、透明な橋がかかる。


 橋の下にはナギウモが滑るように泳いでいる。


 ギルターは卵の側へと歩み寄る。


 ツムギは手を伸ばし、額を卵に押し付けた。

 六つの青が、まっすぐツムギに向けられる。


「あたしの赤ちゃん……」


 うっとりと目を閉じると、胸元の祝珠がやわらかな光を放つ。

 ツムギは、あの日は口に出せなかった言葉をゆっくりとつむいだ。


「あたしを、お母さんにしてくれてありがとう」


 三匹の子竜が応えるように、卵の中で、くるりと舞った。




──ニライカナイの花嫁 第一部 [完]──


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