表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ニライカナイの花嫁  作者: 望月冴子
第3章:満ちていく気持ちと月

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/28

水も滴る

 ミルゥが、ぶるぶるっと身震いして水を払った。

 飛び散った水滴が、陽の光を受けてきらきらと輝く。


 見上げると、太陽はすでに高く昇っている。


「太陽の動きは、あたしがいた世界と同じなんだねぇ」

「月と星もな。空は天の神様の領域だから、よく知らねえけど……」


 そんな話をしていると、宮殿の方からゼータの声がした。


「──昼飯ですよ」

 

 顔だけ出して短く告げると、すぐに引っ込んでしまう。

 ツムギは自分のお腹を押さえた。


「確かにお腹空いたなぁ」

「よっしゃ、早く行こうぜ」

「くぅーん!」


 ギルターはツムギをミルゥに乗せる。


 二人と一匹は意気揚々と宮殿へ向かう。

 その入口で、ゼータが待ち構えていた。


「そのまま入ってこないように!」


 両腕には、タオルが十枚ほど抱えられている。


「砂まみれですよ、お前たち」


 ゼータは大量のタオルを思い切りギルターに投げつけた。


「おわっ!」


 慌てて受け止めるギルター。

 加減を知らないゼータに、ツムギは思わず笑ってしまった。


「しゃーない、身体洗うぞ。ミルゥ、こっちだ」


 案内されたのは、宮殿入口の脇にある小さな円形の部屋だった。


 壁を見るなり、ツムギは目を見開く。


「……え?」


 何かが、ぺたりと張りついている。


 淡い青色のぷにぷにした生き物だった。

 半透明の体の中に、水がたっぷり詰まっているように見えた。

 表面はつやつやしていて、まるで水饅頭みたいだ。

 呼吸するみたいに、ゆっくりと膨らんでは、また戻る。

 

 部屋の壁のあちこちに、全部で三匹くっついている。


「ほわぁ!ウミウシ……?アメフラシかな?」

「こいつは“モチウミ”って言うんだ」

「モチ……?かわいい名前だねぇ」


 ギルターは、にやりと笑った。


「まあ見てろ。──おっと、息止めろよ」

「え?」


 ギルターは上の方にいるモチウミの体を、ぷにっと指で押す。


 次の瞬間──


 バッッッシャアアアア──────!!!!!


「ほわあっ!!!?」


 頭上から、豪快な水の滝。

 ツムギたちはびしょ濡れになる。


「な、なにこれぇ!!?」

「シャワーだぜ」

「えぇぇぇぇ!?」


 口に入った水を舐めてみる。

 しょっぱくない。

 真水みたいだ。


「すごっ!この子が水を出したの?」

「おう」


 ギルターが笑いながら濡れた髪を片手でかき上げる。


 ツムギは思わず見惚れた。


「ほわぁ……水も滴る……ってやつ?」

「ん?なんだ?」

「なんでもなぁい」


 ツムギは慌てて視線を逸らし、モチウミを見つめる。


「どういう仕組みなのかなぁ。ぷにぷにされて、嫌じゃない?」

「つつかれるのが嬉しいらしいぜ」

「えぇー?」


 ツムギは、にこにこしながら指を伸ばす。


「じゃあ、ちょっと失礼して……」


 ぷに。


 ──バッッシャア!!


「あははっ!なにこれぇ!」


 楽しさに、体が揺れる。


「えい、えいっ」


 ぷにぷに。

 クセになる感触だった。


 ひとしきり水を浴びたあと、壁を見たツムギは小さく悲鳴を上げる。


「……やだぁ!しぼんじゃったよぉ!」


 モチウミたちは、明らかにさっきより二回りほど小さくなっている。


「つつきすぎたかな。ごめんねぇ……」

「ぷぅー」


 小さく水を吐くモチウミ。


 それを見て、ギルターが笑った。


「海に浸すと戻るから大丈夫だぜ」

「あらぁ!そんな都合のいいシステムなの?」


 見ていると、モチウミたちは砂の上をすりすりと這い、そのまま自分で海へ戻っていった。


「うーん、いい子だねぇ」


 すっかり砂と海水を洗い流され、ニ人と一匹は玄関へ戻る。


 ゼータが用意したタオルをギルターが手に取る。


「人間は濡れたままだと風邪をひくんだろ?乾かさないとな」

「え?竜人はひかないの?」


 ツムギが目を丸くする。


「ひいたことねぇな。風邪って、どんな感じだ?」


 そう言いながら、ギルターがツムギの服に手をかざす。

 ふわり、と布が乾いた。


「ほわっ!魔法──あ、神気かぁ」

「そう。神気を編み込んだ布だから、効きやすい」

「すごすぎぃ!」


 ギルターは照れながら、自分の服もあっという間に乾かす。


「ほら、髪も乾かしてやる。そっちはタオル使うけど」

「え、自分で出来るってばぁ……」

「俺がやりたいんだって」


「──どっちでもいいから早くしなさい。料理が冷めます」


 ゼータの冷たい声が、二人の間の温かい空気を切り裂く。


 二人は顔を見合わせて、吹き出した。


 結局、ギルターに髪を拭いてもらい、二人と一匹は、ようやく食堂へ向かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ