第7話 『封印の間 ― 姫の選定とソラの覚醒』
花園を抜けた先、重厚な扉が二人の前に立ちはだかっていた。
表面には古代文字が刻まれ、中央には“血の紋章”が輝いている。
姫は静かに手を伸ばした。
その指先から一滴の血が落ち、扉が鈍く赤く脈動する。
「ここが――《封印の間》。
私の“過去”と、“罪”が眠る場所よ。」
扉が軋む音を立てて開かれると、
中には巨大な魔法陣が幾重にも刻まれ、
宙には封印の鎖が無数に絡みついていた。
中央の祭壇には、黒い水晶が浮かんでいる。
その中には、まるで誰かが眠っているかのような人影が見えた。
「姫……あれは?」
ソラが問う。
だが姫は答えず、ただ苦しげに目を伏せた。
「かつて……この城は“血の王国”と呼ばれていた。
私たちは、永遠を生きる種――吸血の王族。
でも、永遠には代償があった。
“血の契約”を結んだ者は、愛する者を殺める運命にある……。」
静寂が落ちる。
ソラは息を呑んだ。
姫の赤い瞳が、わずかに揺れていた。
「私は……彼を殺してしまった。
私が、いちばん愛した人を……」
その言葉と同時に、黒い水晶がひび割れる。
封印の鎖が悲鳴のような音を立てて弾け飛び、
空気が一変した。
「姫、危ない!」
ソラが身を投げ出した瞬間、
赤黒い霧が噴き出し、彼の身体を包み込んだ。
「ソラっ!」
視界が白く染まる。
胸が焼けるように熱い。
頭の奥に、誰かの声が響いた。
──“お前は選ばれし者。血を継ぐ者”──
腕の紋章が灼けるように輝き、
ソラの背に紅の光が走る。
その瞬間、空気が震え、祭壇の魔法陣が反応した。
姫はその光を見て、息を呑んだ。
「まさか……“彼”の血を受け継ぐ者……?
ソラ、あなたは……!」
紅い閃光が弾ける。
ソラの瞳が紅に染まり、
その手には“血で形作られた剣”が現れた。
「これは……俺の……力……?」
彼の中で、何かが目覚めた。
それは“姫の血”と“かつての王の血”が混ざり合った、
新たなる存在――《半吸血》の覚醒だった。
姫はその姿を見つめ、震える声で呟いた。
「あなたは……運命を繋ぐ者。
そして、私の……赦しそのもの……」
二人の紅の瞳が交差した瞬間、
封印の間に残っていた最後の鎖が砕け散る。
黒い水晶から、ゆっくりと“影”が立ち上がる。
それはかつて姫が愛した男――
そして、血の呪いによって堕ちた“初代王”だった。
「……やっと見つけたな、我が娘よ」
城が軋む音を立て、風が唸りを上げる。
覚醒したソラの力が震え、姫は剣を構えた。
血と愛と運命が交錯する戦いが、
いま、始まろうとしていた――。




