第6話 「城内部での選定 ― 姫の過去 ―」
──そして「ソラの覚醒前兆」
竜の背中に聳える城が、ゆっくりと大地へ降り立った。
長い時を経て再び息を吹き返した“空の城”。
その門が、まるで待ちわびていたかのように音を立てて開く。
中に足を踏み入れたソラは、思わず息を呑んだ。
そこはまるで“花園”だった。
光を宿した花弁が風に舞い、淡い香りが空気を満たす。
壁には蔦が絡まり、天井からは光の滴がこぼれていた。
「ここが……姫の城、なんですね」
ソラの声は、どこか震えていた。
「そう……かつて私が“選ばれた”場所。
そして、私が“失った”すべての始まりでもある」
姫の表情は一瞬だけ、寂しげに曇る。
その瞳の奥に、幾千もの時の重みが宿っていた。
「姫……“選ばれた”って……?」
問いかけようとしたその瞬間、
周囲の花々が淡く光り始める。
まるで呼応するように、城の奥から
金属音のような低い響きが鳴り響いた。
「……誰かが、あなたを見ているわ」
姫が小さく囁いた。
空気が震え、床に古代文字が浮かび上がる。
光はやがてソラの足元に集まり、
彼の身体を包み込んでいく。
「な……何だ、これ……っ!」
ソラの腕に、灼けるような紋章が浮かんだ。
心臓が早鐘のように鳴る。
視界の端に、一瞬“剣の幻影”が見えた。
それは、血の契約の証──
姫の力と、ソラの“内に眠る何か”が共鳴した瞬間だった。
「ソラ……あなたの中にも、力が……?」
姫の声が震える。
「俺の中に……何かが、いる……」
彼の瞳が、一瞬だけ紅に染まる。
それはまるで姫と同じ、血の色。
──その時、花園の奥で何かが目を覚ました。
鎖の擦れる音。
そして、闇の奥から囁く声が聞こえた。
「ようやく来たか……“新たな契約者”よ……」
姫とソラは顔を見合わせた。
城の奥に潜む“もう一つの真実”が、
いま、ゆっくりと動き始めようとしていた──。




