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スライムと鈍器

 なんとかブチョウを連れ出した一行。

「まったくもう、人様の迷惑考えてくださいよ……」


 そうこうしているうちに、例のスライムがいるというエリアに来た。

 それは町の北側にある城門を出て道から外れた平原のいたるところにあり、膝下まで伸びている雑草に隠れるように蔓延(はびこ)っているとのことである。


 道端から見ても、スライムがいるようには感じられないし、

 初期のころにあった赤く発光する石も跡形もなくなっているようだな。


「なんか、スライムがぜんぜん見当たらないんだけど。ここに本当にいるのかな……」

 不安そうにユウがつぶやいた。


「たぶん草むらの陰に潜んでいるんじゃないかな……っと」

 俺は、道から外れ草むらに足を踏み入れた。

 そして、少し腰を落として雑草を少しかき分け、そっとのぞき込む……。


 それを見ていたミーナが途端に声を上げる。スライムは地面にいたのだ。

「きゃあああ」


「大丈夫か!」

 とっさにバットを構えるブチョウ。

 と次の瞬間、勢いよくそのバットを俺の顔の近くにいる地面のスライムに叩き付けた。


 ――バチュウ!


 音とともに、スライムの膜が破れ、中にある緑色と黄色い体液が周囲に噴き出し飛び散った。

 たとえるならパンパンの水風船を思いっきり地面に叩き付けたような感じだ。

 潰されたことにより、体液が鼻に入るほどにすごい勢いで俺の顔面を直撃。

「ぶっ。プゥアァ……! 鼻がああぁぁぁァ!」


 振りかぶったブチョウだけは、顔にかかることはなかったが、全身スライムの体液まみれとなった。


「ゴホッゴホッ。ぶ、ブチョウ! 人の顔のそばでいきなり攻撃しないでくださいよ!」

 鼻に粘液を詰まらせた俺は、地面に転がった状態でブチョウに振り返り叫んだ。


「す、すまん! とっさに体……、あっ! そこにもスライムが! 危ないぞシン!」

 再び振りかぶって、スライムに叩き付ける。


 ――ブチュウ!

 ――ビチュウ!


「あっ。ちょ!」

 とっさに、両手で顔を押さえようとするが間に合わず、喋ろうとして口を開いた瞬間にそれは襲ってきた。


「ぶっ。ゴホッァ!」

 スライムの粘液が口と鼻に詰まりながら転げまわる。


「ブチョオォォォォォォォォォォォォォォォ! 

 鼻も口も体もスライムでいいっぱいいっぱいですよ!」

 思わず叫び、いきり立った。


 ブチョウは転げまわる俺を見ながら半笑いで謝ってきた。

「わるいわるい。ちっょとスライムがいたもんだからつい……」


「ついじゃないですよまったくもう……」

 顔についている粘液をブチョウに向かって手で粘液を払いながらに言った。


「こらっ、こっちに飛ばすんじゃない」

 逃げるブチョウ。


 そのそばでユウも近づいいてきたスライムを杖でぶっ叩いていた。

 杖のほうがリーチが長いのと、スライム体のギリギリ部分をぶっ叩いているため、粘液が付きづらく被害が少ないのだ。

 つまり、体液が行き場を失って破裂する箇所は手前側で叩いている反対側であり杖の方が安全に処理できるのだ。


 ――ブチュウ


 前方、斜め上方へと体液が飛び散る。

 そこへ、俺の投げつけた体液をひらりと交わしたブチョウが突っ込む。


 そして、ブチョウの顔面下から、スライムの粘液がクリーンヒットした。

「プゴォ!」

 変な声が部長から出た。

「鼻がァ! 鼻があぁァァァ!」

 勢いよく転げまわるブチョウ。


 するとすかさず、ユウが両手を合わせ上目遣いで涙を滲ませ申し訳なさそうにしていた。

「ごめんなさい。わざとじゃないんです……。大丈夫ですか?」


 それを見たブチョウは、緑色の鼻水を垂らしながら、きりっとした表情で言った。

「ユウ君は全然悪くないんだよ。大丈夫。大丈夫だよ!」


 ちょろいな。一同は思った。

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