13 申し出
「あの、陛下。私は今後、こちらの城でお世話になるので是非王妃様にもご挨拶させていただけないでしょうか?」
何としてもクラウスの妻を確認しなければ、ここまで来た意味がない。
「ああ、后に会いたいのか? 分かった。では何処にいるのか確認してみよう」
クラウスは手元のベルを振り鳴らすと、すぐに扉がノックされた。
『お呼びでしょうか?』
「中に入れ」
すると扉が開かれ、ひとりの若い騎士が現れた。
「ここにいるのは『モリス』国から人質で来たミレーユ姫だ。后に会いたいと申しておる。今何処にいるのか分かるか?」
「はい、王妃様は東屋におられます。そちらで侍女たちとお茶を飲んでおられます」
「そうか、ではすぐに姫を案内してやってくれ」
「はい、かしこまりました。では参りましょう、姫」
「ええ、お願いします」
そして私は次にクラウスを見た。
「陛下、ありがとうございます」
「うむ。ではまたな」
私は頭を下げると、騎士とともに部屋を後にした。
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太陽の明かりがさんさんと差し込む広々とした廊下を騎士に連れられて歩いていた。
……それにしても何て立派な城なのだろう。今は戦争の真っ最中だと言うのに、この空間だけはそれを感じさせない。
ホールにはあんなに怪我人が運び込まれ、ろくな手当も受けることなく放置されているというのに……
思わず、歯をギリギリと噛み締めたときに前方を歩く騎士が声をかけてきた。
「……本当にあなたは『モリス』国の姫なのですか?」
「ええ、そうです」
「人質になるためにこの国にいらしたのでしょうか?」
「え? 勿論ですが?」
騎士の何処か含みをもたせた言葉にドキリとする。……何か感づかれてしまっただろうか?
「そうですか……それにしても王妃様にご挨拶なさりたいとは……」
ため息混じりの騎士に尋ねた。
「それが何か問題でもあるのでしょうか? 私はただ、こちらの国でお世話になるので、王妃様にもご挨拶するのは当然だと思ったのですが」
「いえ。とてもご立派な考えだとは思いますが……」
そこで再び騎士は言葉を切る。本当はもっとこちらも色々聞きたかったが、騎士からは、これ以上話をしたくない雰囲気を感じたので私は黙ることにした。
私達は無言のまま、渡り廊下を歩き……美しい庭園が見える場所へとやってきた。
「あちらに王妃様と侍女の方々がいらしております」
騎士が指さした先には石造りの東屋が見える。テーブルを囲み、美しく着飾った三人の女性たちが椅子に腰掛けていた。
「では、ご挨拶に参りましょう」
「ええ」
騎士はまっすぐ、東屋に向かって歩き出し……私は彼の後に続いた。
どうか、あの場にいるのが私の憎むべき敵であるオフィーリアでありますようにと願いながら――




