12 ついに再会
黄金の宝飾がされた大きな書斎机に向かってこちらを見ている男性がいた。立派な身なりの男性は思った以上に若く、年齢は三十代半ばのようにも思える。
口髭を生やした国王の顔は何処か見覚えがある。
「お前が『モリス』国のミレーユか……」
「はい、左様でございます。陛下」
お辞儀をする。
「なるほど、確かにその顔には見覚えがある。どうやら本物のようだな。それで何故突然、敵対する我が国に自ら赴いたのだ?」
「それは……」
そこまで言いかけて、私はあることに気づいた。
この声……それにあの姿は……まさか……!
「どうした? 急に青ざめたりして? まさかすぐに殺されるとでも思っていたのか?」
国王が首を傾げる。
「い、いえ。そういうわけではありません……」
震えそうになる声を無理に押さえて首を振った。
「安心しろ。姫は重要な人質だ。殺すような真似はしない。客人として丁重に扱おう。ただし……時には戦場に赴いてもらうがな。何しろ、姫は炎の魔法を自在に操ることが出来るのだろう?」
「……そうですね。あの、ところで……陛下のお名前を教えて頂いてもよろしいでしょうか?」
「名前だと? 妙な話を尋ねてくるな……まぁ別に良いだろう。私の名前はクラウス・フォン・シュタイナーだ」
「!」
その名前に全身の血が凍りつきそうになった。
クラウス・フォン・シュタイナー……十年前、私の婚約者だった第二王子。突然突きつけられた婚約破棄。そして……恐らく彼の陰謀によって私は……
「私の名前がどうかしたのか?
クラウスが首を傾げる。
「……いえ、何でもありません」
まさか、こんなにも早く憎いクラウスに再会出来るなんて……! 私は思わず歓喜で身体が震えそうになるのを必死にこらえた。
クラウス一人を今ここで葬るのは容易いことだ。だが、それだけでは足りない。
オフィーリアも私を陥れた憎むべき存在だ。
彼らの血は根こそぎ絶やさなければならない。
「陛下、私はもう『モリス』国には何の未練も無いのです。あの国では私を戦争の道具としてしか、見てはくれません。今まで戦地に行かされることを何度拒んでも、許して貰えずに何度も命の危機にさらされてきました」
「ほう……なるほど」
クラウスは私の話に興味を持ったのか、身を乗り出してきた。
「そこで、私は『モリス』国に見切りをつけることにしたのです。そこでこちらの国に自ら人質となるために参りました」
「……つまり、母国を裏切るということか」
「はい、そうです」
裏切るという言葉を使うクラウスに頷く。
十年前お前は私を裏切り、オフィーリアと結託して私を殺したのだから……今度は私が報復する番なのだ。
「姫の意思が強いことはよく分かった。では表向きは人質ということだが、大事な客人として扱わせてもらおう」
クラウスは不敵に笑った――




