5 歓迎されない私
「ふぅ……歓迎されていないとはいえ、ここまでの行動をされるとは思わなかったわ」
イゴール卿の目は私を完全に見下し……軽蔑していた。恐らく、ミレーユ姫が国では冷遇されていることも当然知っての上でだろう。
けれど、彼のような眼差しを向けられるのには慣れていた。ユリアナだった頃に婚約者だったクラウス殿下や、戦場でどれだけ冷たい目で見られて陰口を叩かれてきたことか。
「別に、誰の手助けもいらないわ。私は公女でありながら、私は戦場で戦ってきたのだから」
この部屋が相当格上であることは分かっている。なら相応の物が備えてあるはずだ。
私は早速部屋の中を確認することにした。
「どこかに着替えは無いかしら‥…?」
私が今着ている服は薄汚れた麻地のブラウスにスカート姿だった。この城で働く使用人達よりも貧しい身なりであるのは間違いない。
そこで早速、備えつけてあったクローゼットを開けてみた。
――カチャ
扉を開けて、落胆する。
クローゼットの中は着替えどころか、空っぽだった。
「少しは期待していたのに」
思わず本音が口を突いて出てしまう。別に私は美しく着飾るのが好きという訳ではない。何しろ戦場では土と汗と……そして血にまみれて戦ってきたのだから。
けれど、今は話が違う。
これから私は大公に謁見する。そしてミレーユとして、ベルンハルト公爵家を滅ぼした者達に報復する。
その為には大公に少しでも気に入られ……協力を得なければいけないのに。
「これは、困ったことになったわ……」
廊下に誰かいないか扉を開けて確認してみるも、廊下はシンと静まり返り人の気配が感じられない。
「……どうしてこんなに静まり返っているのかしら?」
もしくは私が誰も使用人を引き留められないようにするために、人払いをしたのかもしれない。
「だとしたら、もう諦めるしかないわね」
ポツリと呟き、それならせめて身体だけでも綺麗にしなければ。私は部屋に設置してある扉を開き、バスルームが無いか探した。
「あったわ。……お湯はどうかしら…‥?」
コックを捻ってみると、やはり水しかでてこない。それでも水があるだけましだ。何よりこの身体は自在に火を操れる。
「良かった。石鹸はあるのね」
バスタブに備え付けられている石鹸を見つけると、身体を綺麗に洗う為に着ている服を脱いだ――
****
――コンコン
『ミレーユ、俺だ。準備は出来ているか?』
扉の外でジェイクの声が聞こえてきた。
「はい、どうぞ! 丁度準備が終わったところですから!」
声を掛けると、扉が開かれてジェイクが現れた。
「それじゃ、行こうか……え? そ、その姿は……?」
ジェイクが私の姿を見て目を見開いた――




