君と残された時間の中で
朝 目を覚まし、カーテンを開けると強い日光が薄暗い部屋に広がり全体を明るく照らしてくれる。
あの頃の君のように。
木曜の6時間目、チャイムの音で目を覚まし、目を開けると周りの皆が椅子を引き起立する。急いで自分も起立し、終わりの挨拶をした。その日は特に用事もなかったのでもう一度机に横たわり目をつぶった。
何時間か経過し目を覚ますと外も教室も真っ暗だった。
ぼやけた目を擦りながらカバンを背負い下駄箱へ向かうと。着いた所には靴に履き替える同じクラスの好きな子が居た。彼女は学校を休む事が多く今日来たのも2週間ぶりくらいだった。 この運を逃す訳にはいかないと、
「駅まで一緒に行かない?」と勇気を出して言ってみると「それじゃあ駅まで行こっか」と返してくれた。そして靴に履き替え学校を出て駅に向かった。
友達と話していると話題が浮かび色んな話をするが、何故だろう好きな人の前だと言葉がいきずまる。そう考えて歩いていると、目的地の駅に着いた。
彼女は左、僕は右のホームへ別々の方に進む。
「まって!」咄嗟に言葉が出た。
「どうしたの?」
その言葉に心臓の鼓動が彼女の耳に伝わるくらい早く鳴り響く。息を飲み言葉を発した。
「僕と付き合ってください!」
正直自信はなかったので振られる事は既に分かっていた。
「ごめんなさい」
やっぱりな、と思いながら返事を返し解散した。分かっては居たがやっぱり辛い。
今日は早く寝よう。そう思い、家に着くとお風呂に入りその日は直ぐにベットに着いた。
翌朝、昨日は早く寝たので今日はいつもより早く目を覚ました。
朝ごはんを食べ時間に余裕を持ち家を出た。
いつもより30分早く学校に着いたので暇潰しに小説を読んでいると、扉が開く音がした。
扉の方に視線を送ると、昨日の事を思い出させるように彼女と目が合った。
「おはよう」
「おはよう」
「今日早いね」
「早起きしたから」
「なるほどなるほど」
場を和ます様に彼女は話しかけて来た。
彼女が筆記用具を机に出していると、朝のチャイムが鳴り響き続々と皆が入ってきた。
僕は読んでいた小説に栞をハサミいつものように寝る事にした。
「寝てる人皆おきろ」
先生の一言で目を覚ました。目を覚ますと、火災装置機の音がなっており、寝ている間に火災の訓練が始まって居た。
「皆廊下に並んで昇降口から運動場に早足で歩いて綺麗にならべよー」と先生が合図をだしみんなが指示に従う。
皆が凄い勢いで進んで行く中、息を切らして苦しそうな人が居た。昨日と言い今日と言い、何回僕は彼女と話すのだろう。嬉しながらも気まずい気持ちに囚われながら
「大丈夫?」と声を掛け保健室に連れて行った。
「ありがとう、助かった!」
「いえいえ、じゃあ僕は戻るね」
そう言って戻ろうとした時、
「まって!もう少し居て欲しい」
予想外の言葉に驚いた。
「君は僕の事好きじゃないんだよね。思わせ振りは辞めて欲しい」
そう言うと
「好きじゃ無いなんて言ってない。本当は好きなの」
「それじゃあなんで告白断ったの?」
そう聞くと、思わぬ返答が帰ってきた。
それは、僕が聞いた言葉の中で何よりも重い言葉に感じた。
「私、週末期がんって言う病気なの」
なんて言葉を返したらいいか分からなくなり
数秒沈黙が続き時計の針の動く音が1秒1秒長く感じる。
「冗談だよね?」
そう言葉を返すと
「お医者さんにもう長くないって言われた。」
僕は自然と涙が溢れた、
「君を傷つけたくなくて告白を断ったの」
言葉を続け君はそう言った。
僕は涙と一緒に君に伝えたい事が溢れ出す。
「僕は君を守りたい。君の幸せが僕の幸せ。君が居るから僕も今ここに居る。どんなに傷ついても僕は君が好きだ。」
君は少し寂しそうに涙を流した。
「僕と付き合って欲しい」
「私で良ければお願いします」
君はそう言った。
かと言って彼女には時間が無い。
「時間は少ないけど思い出作ろうね」
「一生の思い出を作ろう」
そう話し合った。
僕が彼女に出来る事は、少ししかないだろう。けど、僕にしか出来ない事もきっとあるはず。だから、幸せと思えるような思い出を作ろう「君と残された時間の中で」。