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第49話 行動力は地雷を越えて

 ――東京都・首相官邸、執務室前


 太陽がやや西に傾きつつある昼下がり。和田正義防衛大臣は急きょ、総理の源氏朝に呼び出された。それも、自分一人だけではない。


「まさか大臣と共に、総理からお呼びが掛かるとは……」


 同時に総理から指名された土肥直久はそう、恥ずかしそうに和田の横で頭をかいた。

 思惑の一致から、二人は良く行動を共にしたり、互いにコミュニケーションをとったりしていたが、一緒に総理直々に呼び出されるのは初めてだ。


「まぁ、土肥さんと私の二人が呼び出されたと言うことは、十中八九(大江)事案か、H(北条)事案かのどちらかでしょうね」


 中庭を透かす大きなガラスを横目に、和田もそう苦笑しながら土肥に言う。

 立場こそ和田の方が上ではあるが、それでも土肥より一回りほど年下。自然と口調も敬語になる。とはいえ、距離があるかと言うとそうとも言いきれない。互いに信頼のおける、適切な距離感と言えるだろう。


「その二人のうちどちらかが関わってくるのは明白ですね。来月には2プラス2で大臣自ら渡米することになりますし、そことも絡んできそうです」

「あぁ、そう言えば……今から胃が痛いです」


 お互い似た者同士の苦労人は、そう言って目を見合わせてまた苦笑した。

 日米安全保障協議委員会、通称2プラス2。

 日本の外相(外務大臣)防衛相(防衛大臣)と、アメリカの国務長官(外務大臣相当)国防長官(防衛大臣相当)の二名ずつで行われる安保政策を巡る不定期の閣僚協議だ。

 これまでも両国の安全保障上の節目の時期に開催されてきており、今回もまた例外ではない。


 フルダイブ技術の軍事・防衛転用。今回の議題の中心は、恐らくそれになる。前政権で外相だった源が作り上げたマニラ条約機構との繋がりも踏まえて、しっかりと協議することになるだろう。


「確か国防長官のクニヒラ氏は、土肥さんのお知り合いでしたよね?」

「ええ。何年も前に日米共同演習を北海道で行ったとき、当時在日米軍中将だったクニヒラさんに良くご指導頂きました。今でもたまに連絡を取っていますよ」


 語学やコミュニケーション能力に長けた土肥は時折、驚くような人脈の広さを披露する。それが事実役に立っているのだから、和田は彼に頭がまるで上がらない。そんな、低姿勢な役回りばかりだ。


「さて、と。もうついてしまいましたね、大臣」

「……土肥さん、トイレ済ませました?」

「大臣がご不安なら、ご一緒しましょうか?」


 二人は笑って、執務室の扉を叩いた。



 *



 ――ヨルムンガンドオンライン・ヴァイスブルグ領鉱山内部


「ストップです!」


 突入してから十数分。先導していたフォックストロットが、そう言って後続のミツル達を手で制す。


「どうしたんです?」

「この先、トラップが設置されています」


 不思議そうな顔で覗き込む茶々丸に、彼は真っ直ぐ地面を睨んでそう返す。先ほど話で出てきていたものの一角だろう。


「彼はスキル『鑑定・罠レベル4』で、地面や宝箱に設置されているトラップを見抜くことが出来るんです」


 すかさずライトが解説を挟む。坑道の地理に明るく、おまけにトラップも見抜けるとは……


「今回の作戦にうってつけ、と言うことですね」

「ここまで僕良いとこ無しでしたから、なんとかお役に立てて良かったです。解除する時間も勿体ないので、僕の後ろをついてきて下さい」


 嬉しそうにそう振り返った彼は左手を真上に挙げて、坑道をジグザグ蛇行しながら歩いて行く。


「俺達も行こうか」

「はい」


 ミツル達もそれぞれ武器を構えて、彼の後ろに一列になって追随する。


「まさに地雷原だなこりゃ……今攻撃されたら堪らないな」


 思わずミツルはボソリと呟く。肩にしがみついている九龍も、「お前が引っ掛かったら私までアボンだからな?」と釘を刺す。と、そんなとき、


「皆さん止まって下さい」


 今度は茶々丸が、低い声でそう言った。


「どした?」

「何かあったんですか?」

「正面の角、敵が隠れてます。もう少し進んだところで一網打尽にするつもりかと」


 茶々丸がそう、正面を指差した。確かに奥は曲がり角の死角。退くことも難しい地雷原でそれをやられたら、全滅の恐れすらあるだろう。


「少しここで待っていて下さい。ちょっと、行ってきます」


 瞬間、茶々丸はミツル達が止める間も無く飛び出していった。

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