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No.16【ショートショート】ねがいごと

作者: 鉄生 裕

久しぶりの投稿になります。

超短編なので、よければ一読いただけますと幸いです。


また、ご意見やご感想いただけると非常に嬉しいです。


ジャンル設定はこれで合ってるのかわからず。。。

間違えてたらすいません。


男は己の願いを叶えるために、とある旅館に宿泊することにした。

そこは座敷童が出ると有名な旅館で、しかも座敷童を見た者は

願いを一つだけ、何でも叶えてもらえるという噂があった。


「いらっしゃいませ。長旅お疲れ様でございます」


旅館に着くと、女将だという七十代くらいの女性と

小学生ほどであろうか、三人の子供が出迎えてくれた。


子供のうち二人は、男から荷物を預かると部屋まで運び

残りの一人は旅館の中を案内してくれた。


それから部屋で夕食を食べ、

旅館の中にあったお世辞でも豪華だとは言えない小さな温泉から戻ると

部屋からこれまた小学生くらいの女の子二人が出てきた。

どうやら彼女たちは、僕が温泉に入っている間に布団を敷いていてくれたらしい。


出迎えてくれた三人の子供も、部屋に料理を持ってきてくれた子供も

布団を敷いてくれた子供も、皆別人であった。


しかし、女将から事前に、

“当旅館は家族で経営しており、孫たちも仕事を手伝ってくれています。

もし孫が何かご迷惑をおかけした際は、すぐに仰ってください”

と言われていたので、特に何の疑問も抱くことは無かった。


部屋の電気を消し、布団に入ってから二時間程が経った頃だった。

部屋の隅の方でガサガサと音が聞こえたかと思うと、

明らかに人の気配がするのを感じた。


男は電気をつけずに部屋の隅の方にいる人影をじっと見つめていると、

その人影は徐々に男の方へ近づいてきた。


するとその人影は、男に向って、

「願いを一つだけ叶えてやろう」

と言った。


間違いない。

座敷童だ。

背の高さも120~130センチほどで、声も幼い男子の声のように聞こえた。


「本当に、何でも願いを一つ叶えてくれるんですか?」

男がそう尋ねると、座敷童は、

「ああ、何でもだ。ただ、当然タダと言うわけにはいかない。

それなりの代償をお前には払ってもらう」

と言った。


「代償?代償とはいったい何ですか?」

と男は尋ねたが、座敷童はその代償については教えてくれなかった。


「わかりました。どんな代償でも払います。

だから、どうか彼女を助けてください」

男は座敷童にそう願いを伝えた。


男は昨年、五年ほど連れ添った女性と共に車に乗っていたところ事故に遭い、

それ以来、その女性はずっと寝たきりであった。


「わかった。お前の願いを叶えてやろう」

座敷童がそう言った瞬間、何か光のようなものに包まれたかと思うと、男は気を失った。




あれから三年が経った。

この三年の間に、多くの者が座敷童に願いを叶えてもらうためにこの旅館に訪れた。

しかし、彼らは座敷童が求める“代償”に怯え、大概は願いを諦めてしまう者がほとんどだった。


それでも、男のように座敷童に願いを伝えた者は

その願いを叶えてもらう代わりに代償を払っては、

代償の終わりが来る日々を今か今かと待っていた。


そして、今日も座敷童に会うために一人の女性が旅館を訪れた。


「願いを何でも一つだけ叶えてやろう。

だが、当然タダと言うわけにはいかない。それなりの代償は支払ってもらうぞ」

座敷童がそう言うと、女性は答えた。

「わかりました、代償ならいくらでも払います。

だから、どうか彼を返してください。三年前から、ずっと行方不明なんです」


その声を聞いて、すぐにわかった。


“ダメだ、やめてくれ。そんな願い、僕に叶えられるわけがない”


しかし、一度お願いされたら、座敷童はその願いを叶えなければならない。

その代わりに、座敷童は“代償”からやっと解放されるのだ。


「わかった。お前の願いを叶えてやろう」




そして、男は男としての姿を取り戻した。

しかし、代償はあれだけではなかった。


「ここは何処なんだ?どうして僕はこんなところに?

そもそも、いったい僕は誰なんだ?僕は、何者なんだ?」


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