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記憶の回転画

いつも読んでいただき

ありがとうございます。

 すっかり興醒めした俺は、

拗らせ童貞野郎全開で不貞腐れ

座り込みを実施していた。


「プンプン」


 と怒りの度合いをサクヤにも声で伝える。


 ……我ながらキモかった。


 そんな俺の態度に

 困った顔をしたサクヤが宥めようとする。


「あー、旦那様、本当にすまなかったのだ

 お願いだから、機嫌を直して欲しいのじゃ」


 俺が勝手に拗ねてるだけなので

 困り顔の美人が目の前にいれば心が痛む。

 しかし、なかなか素直になれないのが童貞と言う者。


 そんな俺を見かねた困り顔のサクヤが隣に座る。


「しょうがないのぅ、ほれこちらに来るが良い」


 サクヤはそう言って、

自分の膝をポンポンしてこちらを促してくる。


「うっ、それは……」


 男子憧れのひとつ膝枕のお誘いだった。

 もちろん不貞腐れてる俺でも抗う事など出来ず。

 フラフラと誘われるままに頭を沈めた。


「ふふ、懐かしいのぅ」


 目を細め、優しく俺の頭を撫で始めるサクヤ。


「旦那様は、覚えていないかもしれないが

 よく桜の樹の下でこうしてあげたものじゃ」


 どこか遠くを見つめ、

愛おしそうに頭を撫で髪を梳く姿に胸が痛む。


 目の前に見えないはずの

 舞い散る桜の花びらが見えた気がした。


 自然と手が伸びサクヤの頬を撫でる。

 嬉しそうにサクヤが上から手を添える。


 上と下で見つめ合うと、サクヤが微笑む。

 そのまま、ゆっくりと頭を下げてくる。

 柔らかくしっとりとした感触が唇に感じられた。


「この現し身ではファースト接吻じゃ」


 唇を離し照れた顔でサクヤが告げる。


「…………」


 俺はそんな感動を余所に、

流れ込む得体の知れない感覚に白目を剥いて気絶した。


「……旦那様……旦那様?…旦那さまぁぁぁ」




 真っ暗な部屋に一人佇む。


 突然目の前にスクリーンが現れ映像が写る。


 今とは違う雰囲気のサクヤだった。

 また直ぐに別の映像が現れサクヤの映像と繋ると、

円を描きながらパノラマを展開していく。


 同時に映像と共に頭に流れ込んでくる情報に、

これらが全て自分の記憶だと理解する。


 大神の命を受けこの地に赴いた。

 サクヤと出会い妻にした。

 修羅場になったが子供も産まれた。

 命に従って国を統治した後

 現し身の体は寿命を迎え転生した。


 何度も転生を繰り返して

 その度サクヤと出逢って


 ところが転生に不都合が生じた。

 俺の魂が異世界に飛ばされ

 向こうで生まれ変わってしまった。


 元より神の力を持っていた俺は無双した。

 向こうの世界の魔力は神力より扱いやすく

 容易く使うことが出来たからだ。


 何度かこちらに戻ろうと試行錯誤を繰り返したが

 あちらの世界のクソ女神に邪魔され

 なかなか戻ることが出来なかった。


 だが俺は世界を超えて転生し直す法を完成させ

 ようやくこちらの世界に転生し直すことが出来た。


 全ての記憶が記録として俺の頭に収まると

 目の前のパノラマはひび割れ崩れ落ちた。



 目を覚ますとそこはまだ膝上の桃源郷だった。


「旦那さまぁぁ」


 俺が気絶したせいで泣きじゃくるサクヤ。


「大丈夫だ、あと記憶が戻った」


 何気なく言ったつもりだっだが、

サクヤは泣きながら驚くと次第に目を更に潤ませ、

もっと盛大に泣きだしてしまった。


「あー、何だ、待たせて済まなかったな」


 俺はそう言うのが精一杯でサクヤを抱きしめると

 『ヨシヨシ』と頭を撫でて宥める。


 実は俺も泣いてたのはサクヤに見られなかったと思う。




読んでいただきありがとうございます。

少しでも楽しめましたら。


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