嫁降臨
読んでいただければ幸いです。
目の前の輝く少女が突然
俺の事を伴侶と言ってきた。
見た目は間違いなく美少女。
その口から出た発言と
今の状況について行けずに一瞬
頭が真っ白になる。
「はっ、それってどう言う事だ」
「なんだ、言葉が難しかったか?
今風の言葉で言えば『嫁』じゃ」
「いや、そのくらい分かるわ!
俺が言いたいのは初めて会ったばかりで
嫁を名乗るこの状況だ」
「ふむ、妾の名はサクヤ、古の神じゃ
そして、そなたは選ばれた妾の夫じゃ」
神云々は正直分からないが何か光ってたし
偉そうなのは何となく分かった。
理解出来ないのは巻き込まれている今の状況だ。
「そこだよ、そこ
俺はいつ選ばれたんだ?
何で夫なんだ?」
「旦那様は質問が多いのう
そんなの決まっておる
転生したときからじゃ」
『転生』その言葉に強い拒絶反応を示す。
「違う、俺は転生者じゃない!!
あんな、クズ共と一緒にするな」
「うむ、勿論旦那様が云う、紛い物の転生者なんかじゃ
ないぞ、そんな物とは比較するのも烏滸がましい
本物の神魂を引き継ぐ転生者じゃ『テルヒコ』よ」
「………はあぁ」
余りにも突拍子すぎて何とも言えない気持ちになる。
そんな俺の態度が気に入らないのか
自称神で嫁のちょっと残念臭がする美少女は
『プンプン』という擬音が視覚化出来そうなくらい
息巻いていた。
「なんじゃ、リアクションが薄いぞ
もっと喜ばんか
こんなプリティな嫁ができたのじゃぞ
神なんじゃぞ!凄いんじゃぞ!」
どう見ても小学生の寸胴体型でプリティは無理がある。
一部には需要があるかも知れないが……そもそもの話が
「俺、力なんてないし!
そもそも、力があればこんなとこ、来てないし」
「こんなとこ、云うな、泣くぞ、だいたい
ここは年中温かいし、霊脈も申し分ない
正に住めば都じゃ」
「辺鄙な事は自覚してるんだな」
「今世の旦那様は意地悪なのじゃ
ずうっと、ずうっと待っておったのに
酷いのじゃあー」
そう言うと『ワンワン』泣き出してしまった。
流石に目の前で美少女に泣かれると
何もしていないのに罪悪感が半端ない。
「いや、済まない。悪気はなかったんだ」
慌てて宥めようとするが
なかなか泣き止んでくれない
困り果てた俺は犬のお巡りさん並みに泣きたくなる。
そんな俺に自称神『サクヤ』が泣きながら
頭の天辺を『うぅっ』『うぅっ』と唸って
突き付けてくる。
「いや……お前、絶対に泣いてないだろ」
「そんな事ないのだ、撫で撫でしないと
もっと泣いてしまうのじゃ」
明らかにもう泣いてはいないのだが…
「………はぁ、仕方ないな」
また泣かれるよりマシな俺は要望通り頭を撫でてやる。
途端、自称嫁『サクヤ』は泣き止むと
美少女がしてはいけない崩れきった笑顔を見せた。
「うわっ、怖っ」
思わず、撫でていた手を離してしまう。
「怖いって、酷いのじゃ
また、泣いちゃうぞ、泣き喚いちゃうぞ」
泣き落としに味を占めた残念な自称嫁は
『ウリウリ』と自分で口に出して頭を突き付けてくる。
「…はぁ、仕方ないな」
正直な事を言えば顔を見て撫でていたら
こちらの方が照れくさくなって誤魔化したのが
手を離した理由だ。
だから、もう一度頭を撫でてあげると
やっぱり『サクヤ』は崩れきった笑顔をしていて
照れくさくなって思わず顔を反らしてしまった。
その隙きを突いて『サクヤ』が
俺に抱きついてくる。
付き合ってきた彼女が居たとはいえ
女慣れしてない俺がそんな事になれば
ドギマギして童貞野郎全開になりそうだが
不思議とサクヤの包容は暖かい気持ちになった。
「……少しは、嫌な気持ちが晴れたかの旦那様?」
「……ああ、ずるいなお前…」
読んでいただきありがとうございます。
少しでも楽しめましたら。
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