成長したガチ戦闘
「そ、そう?そうかな?えへへ」
もちろん、そんなユウの呟きをニカが取りこぼすはずもなく、照れながらもマスクの下から盛大に笑みをこぼす
「よし!元気満タン!じゃあ、一番槍いっくよ〜!」
やる気と気合が頂点に達したニカは突撃槍を構えると気の抜けそうな掛け声と共に
消えた
否
突撃したのだ
「っ!?」
この一瞬でニカは既に武蔵へと肉薄しており、槍の穂先が彼の胴を捉えていた
ユウがそれを認識したのとほぼ同時に目の前の大地、ニカが踏み込んだ箇所が抉れ
ー ゴォオッ! ー
ー ズドォン! ー
遅れて砂塵と轟音が周囲を支配した
ー キィイイイイイイイイン! ー
全てを置き去りにしたニカの一撃は、しかし、武蔵の刀にいなされ、金属同士が打ち合わさった甲高くも鋭利な音が武器同士の衝突から一拍置いて鳴り響く
ー ヒュオン! ー
武蔵は返しに、いなした刀とは別の刀でニカの胴体を寸断しようと振り下ろすも、ニカの疾さが勝っており刀は空を斬る
そこに驚きや悔しみはなく、みえるのは憎悪の感情のみ
二刀を構え直した武蔵は、既に圏外まで駆け抜けたニカの背を憎しみの眼で捉え、獲物に飛びかからんとする狼のように、姿勢を低くして力を溜め込み、そして、力を爆発させた
ー ドォン! ー
ニカ程でないものの、大地を抉る踏み込みで疾走る武蔵は驚異的な速度でニカへと迫る
方向転換後、2回目の突撃をする為にニカは槍を構えようとするも、既に武蔵は己の間合いまで詰めてきていた
飛び掛かる前の最後の踏み込みで更に加速した武蔵の二刀が、爪や牙の如く獲物の体へと突き立てられる
左の金重がニカの胴体目掛けて同時に三閃し、右の兼重が首元に突き刺さる
ー ブォオン! ー
速度の対価として削られた現装備の脆弱な防御力では武蔵の斬撃に成すすべなく、ニカは軽々と引き裂かれ
まるで雪女のように、あるいは陽炎のように揺らめいて消えた
「チッ、幻影か?」
ー 共同作業です! ー
手応えのない事に訝しげな表情を浮べるも、離れた場所から聞こえたニカの自慢を聞き流し、次いで、近距離から放たれた灼熱の横薙ぎを紙一重で躱す
ー ゴォオオオオウ! ー
周囲の空気を歪ませながら、橙色に染まり上がった剣が武蔵の眼前を通過する
ー ブオッ! ー
ー ガキィイイン! ー
超微量の熱ダメージを受けて僅かに顔をしかめた直後、抉りこむように突き出されたユウの籠手盾を武蔵は刀の背で受け止めた
「熔けない!?」
「この程度で俺の金重と兼重が削がれると思うな!」
ー ザシュッ! ー
「ぐっ!」
返す刀で兼重が振るわれ、灼熱の龍鱗によって軽減されたとはいえ、僅かながらもダメージを負う
「このっ!」
ー ゴォオウッ! ー
更に追撃される前に、相手のペースに呑まれないよう、ユウは先んじて左下から右上へと斬り上げる
半歩引きユウの攻撃を躱した武蔵を再び白い閃光が襲った
ー キィイイイイイイン! ー
再び衝突
甲高い衝突音が鳴り響く
ー ザッ! ー
自身のペースに持ち込む為、打ち合いの衝撃を利用して武蔵は後退する
しかし、そこへスキルの関係上、1分1秒が惜しいユウが逆に追撃を掛けた
ー ブォオオン! ー
「チィッ」
息をつく暇もない武蔵は、悪態をつきながら袈裟斬りを避ける
一方のユウは避けられる事も想定していたのか、空振った勢いのまま回転し、強烈な横薙ぎを放つ
武蔵は二刀で迎え撃ち
ー ギィイイイイイイイ! ー
凄まじい火花を撒き散らしながら
ー ズサササササ! ー
大地を削って後退しながらも斬撃の勢いを抑え込んだ
「無力を嘆いて死ね」
ー ザシュッ ー
火竜姫の騎士の重撃を受け切ってみせた武蔵は、攻撃後に僅かな硬直をみせたユウの喉を、兼重で鋭く斬り裂く
喉は急所ポイントである為、目に見えてHPバーが減り、危険域に達する
そして
ー ゴォオオオオオ! ー
喉という逆鱗に触れられたユウは、激しく燃え盛る炎の音と共に、『憤怒強化』により赤い煌めきが増した鎧で以て、周囲を広く揺らめかせながら武器を構え直した
「悪いけどもう少しだけ付き合ってくれ」
ー スキル解除まであと2分 ー




