幕間 忘却の思い出
◯◯が死んだという報告を聞かされたのは年に1度の戦い・・・俺達の逢瀬からしばらく経ってからだった
敵国の有力な将が消えた事に周囲が歓喜する中、俺は状況が、理解が追い付かず、ただただ呆然としていた
いや・・・理解が追い付かなかったのではなく、理解する事自体を拒絶していた
何故なら◯◯は俺の愛する者だったからだ
俺と◯◯はお互い軍人、いつ命を落とすか分からぬ身分
ゆえに覚悟は常にしていた
していたつもりだった
しかし、短いながらも彼女と過ごした時間、語り合った言葉は思いの外、俺の心の奥底まで浸透していて、いつしか彼女は俺にとって掛け替えのない存在になっていた
決して失いたくない存在
失わないだろう存在
だからこそ、心のどこかで彼女の事を軍人としての存在でなく、いつまでも隣にいる存在、いつか結ばれる存在として認識していたのかもしれない
◯◯の死を聞いてからの俺は日々、心に穴が空いたような虚無感に苛まれていた
あれほど持っていた熱意も冷め無気力となり、彼女との約束で目指した存在からは程遠い、ただただ機械的に生きているだけの存在へと成り果てていた
宰相殿と対面したのはそんな折である
ある日、国王様に喚ばれた俺は謁見の間へと踏み入れた
臣下の礼を取り、言われるまま面を上げると、そこにいたのは国王様ではなく、魔術師のローブを纏った人物であった
フードまで被っている為、相貌は確認出来ないが、声や立ち振舞いなどから女性である事が覗えた
新しい宰相だと語る彼女は、国王様からの軍政軍令における全権委任状を提示し、少し甘い香りが漂う謁見の間において、俺を絶望の淵へと誘う言葉を放った
◯◯は暗殺されたのだと
彼女の出世を快く思っていない同国の敵対派閥の人間によるものだと
立場上悲しむ事が出来ない俺の、内なる感情を知っていたのか、魔術師の女性、宰相殿は我が事のように沈痛な声音でそう説明してくれた
宰相殿は気遣いからか、証拠はないけどと仰ったが、宰相殿の言葉なのだから間違いはない
今までも正しかったのだから
宰相殿の考え、そして言葉は疑う余地もなく絶対に正しい
改めて敵国の愚かさを思い知った俺は、今度こそ滅ぼさんと今の戦いに臨む
大切な者?物?それが何かはもう思い出せない
されど、宰相殿は敵国に奪われたと仰った
敵軍を、敵国を滅ぼせと御命令された
宰相殿の言葉は正しい
だから、俺は敵軍を、敵国を滅ぼす




