名前の記憶
「ナイスタイミング・・・つまりタイミングばっちり・・・つまり相性ばっちり、という事はつまりユウ君と私は理想のカップ「いくよ、ニカさん!」っ!ああん、待ってユウ君!」
ブツブツ何かを呟いていたニカに一声掛けたユウは、舞い上がった砂塵から抜け出す為に大きく後退した武蔵へと斬り込む。
ー ギィイイイン! ー
「雑魚が再び群れようと俺には届かん」
既に体勢を立て直していた武蔵の刀に阻まれたユウの攻撃であったが、その動きに焦りはない。
「はっ!」
武蔵の二刀が振られる前に、ユウは気合と共に刀を弾いた。
ー ヒュゴォオ! ー
弾いた勢いで、ユウと武蔵との間に僅かな距離ができた直後、突撃してきたニカが武蔵の土手っ腹を穿たんと黒い煌めきを放つ。
「ちぃっ!」
ー キィィイイイイ! ー
悪態をつきながらも、武蔵は刀で突撃槍の穂先をいなして回避する。
だが
「うおおお!」
ー ヒュォオッ! ー
間髪入れずにユウの袈裟斬りが武蔵へと迫り、そしてーー
「っ!」
ー ザシュッ! ー
武蔵は刀で受けようとしたが合わず、瞬時に身を半歩引くもユウの剣は彼の体に届き、斬られた箇所からダメージエフェクトが噴出する。
今までの斬り合いの中でも掠めてのダメージはあったが、はっきりとした手応えのあるダメージは初めてであり、武蔵のHPバーが目に見えて減少した。
ユウは油断なくすぐさま後退して残心を取り、されど愛剣をいっそう握りしめ歓喜する。
(届いた!)
かつての英敵、桃太郎やアラジンにはスキルを使ってようやく届いた攻撃が、2人がかりとはいえ今回はスキルを使わずして一太刀浴びせる事が出来たのだ。
(俺達の攻撃が通用する!特訓は間違いじゃなかった!)
まだたった一撃。
HPバーの差は愕然とする程ある。
だが、ユウ達は諦めず、俯かず。
特訓の手応えを肌で感じ、自分達のHPバーが散るまで全力で楽しみ戦う姿勢をとる。
「まぐれの一撃で図に乗るな」
一方、格下だと見下していた相手から一撃を受けた武蔵だが、激昂も焦りも賞賛もせず、悪態こそついたがその声も平坦であり、何事もなかったかのように淡々と武器を構え直す。
その様子がまるで機械のようなでユウは薄ら寒さを感じた。
「宰相殿の障害となる者はただただ斬り捨てるのみ」
ー ヒュッ ー
「っ!」
「ユウ君!」
ー ギィイイイン! ー
ー カァン! ー
ー キィイイイイイイイ! ー
武蔵がうわ言にように呟いたかと思うと、瞬時にユウへと間合いを詰め刀を薙ぐ。
警戒はしていたので剣で受け止め、続く二刀目は籠手盾で弾き、追撃の突きは辛うじて剣で受け流した。
「はぁっ!」
バランスを崩し、よろけたようにみえた武蔵を狙ってニカが追撃を放つ。
しかし、これはひらりと躱して、仕切り直すように間合いをとった。
「むう、避けられた」
ユウとニカもまた、一呼吸置くために後退し、軽口を叩く余裕が出る。
「動きは変わらず洗礼さているけど、雰囲気がなんだか機械みたいだ」
ユウは感じた違和感を口にする。
「機械的かぁ。確かにさっき戦った時よりも冷たい感じがする。それに、宰相殿の障害となる者はって言ってたし、小次郎さんの言う通り洗脳されてるので間違いないね」
「でも洗脳だった場合、どうしたら解けるんだろう?小次郎さんと相対しても解けなかったし・・・ん?」
武蔵を警戒しながらニカの言葉に応じたユウであったが、突如として武蔵の動きが止まるのを目にして困惑する。
「こ、小次郎・・・?その名・・・知らぬはずなのに・・・う・・・頭が・・・」




