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気力勝負

先程までの余裕のある、言い方を変えれば実力を試すような太刀筋は鳴りを潜め、ただただ相手を滅する感情だけを煮詰めた、冷酷で暴力的な太刀筋がユウを襲う。



ー ヒュン! ー


並のプレイヤーなら瞬時にHPバーが吹き飛ぶ猛攻を時に避け


ー ヒュオッ! ー


ー ザシュッ! ー


時に掠め斬られ


ー ヒュォオン! ー


ー ギィイイイン! ー


「ぐっ!」


時に剣や籠手盾で防ぎ、ユウは何とか耐え凌ぐ。


それはリンとの特訓の賜物であり、強固な愛剣や黒鎧の恩恵であった。



ただ、それをもってしても、英敵の攻撃は凄まじく、ユウのHPバーは着実にガリガリと削られていく。


対して、武蔵のHPバーは未だ微傷の域。


それでもなお、脳が焼き切れんばかりの集中力で武蔵の太刀筋を読み、致命的な斬撃を避け、斬り返すタイミングを探し、危なげながらも何とか踏ん張り続ける。



PAOにはスタミナゲージが存在していない為、肉体的疲労感はない。


しかし、そのメリットが帳消しになるどころか上回る勢いで、精神的疲労が急激に蓄積されていく。



一瞬でも集中力が途切れ、反応が遅れたら即座に斬り捨てられる故、常に全力で集中する事を強いられているからだ。


更に、自身のHPバーが減少していく焦燥感、武蔵のHPバーが全く削れない理不尽さが、ユウの精神をゴリゴリと擦り減らしにかかる。


この戦いは相手《武蔵》との体力勝負ではない。

自分自身との気力勝負であった。



ー もう頑張った、努力した ー


ー 勝てないのは目に見えている ー


ー 潔く武器を手放し、一太刀浴びるだけで楽になるぞ ー


ー これ以上もがくな ー


ー みっともない、諦めろ ー


そう心がささやく。



確かにいくらリアリティが高いと言えど、所詮はゲームだ。

ここで手を抜いてイベントリタイアになっても現実世界では死なない。



そんな誘惑をユウは


「ハァッ!」


気合い一閃、武蔵の身体ごと斬り伏せんとする。


それはプレイヤーとしてのプライドであり、これから加勢に来てくれるであろう仲間への信頼であった。



確かにこれはゲームだ。

だからこそ、諦めるのではなく自分の限界の先を知りたい。

現実世界で死なないのなら、思う存分に本気で戦おう。

それに、現実世界で生きる事に必死でしがみつく人間を嘲笑する者なんていない。

ならば、ゲームであっても必死に生にしがみつく事は、何らみっともない事なんかじゃないはずだ。



(ニカさん達が来るまでは・・・!)


そして、今まさに一生懸命、救援の準備をしてくれているであろうニカ達の頑張りを無駄にしたくない。


また、彼女達が来てくれたらあるいは。


ー ガギィン! ー


ー ゴォンッ! ー


武具衝突での火花やダメージエフェクトを激しく撒き散らしながらユウは必死で食らいつく。



(使うしかないか)


既にHPを半分近く失い、更に減少していくバーを横目で確認したユウは心を決める。


このままではHPが持たないが、スキル『火竜フレアドラ龍鱗スケイルメイル』を使用すれば耐えられるだろう。


ただし、今使えばイベント終了まで生き残れる確率は皆無に等しくなる。



(でも、結局ここでリタイアしたら元も子もないんだ、それに)


イベントを生き残る事は目標の1つであって目的ではない。


目的は、イベントを全力で楽しむ事。


その為にも、武蔵の洗脳を解いて小次郎と会わせたい皆の願いを実現させよう。



「火竜の


ー キィイイイイイイイイン!!! ー


ー ゴォオオオオン!! ー



しかし、スキルの発動は突如発生した黒い閃光と、武器の衝突による轟音、衝撃波により妨げられる。


ー ブォオン! ー


立ち込める砂塵を愛槍で払い、彼女は照れながら言う。


「遅れちゃったかな?ごめんね、待った?」


「いいや、ナイスタイミングだよ。ニカさん」

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