ガールズトーク?
「弱者が一人増えたところで何も変わらん」
「やってみなきゃ分からないだろ」
「!?え?ユウ君に抱き!?え?はっ!?ここは天国・・・!?」
「ニカさん、先輩のところまで下がって回復してきて!」
ー ザッ! ー
武蔵が二刀を構え直したのをみて、ユウはニカを後ろに押しやりつつ、追撃させまいと立ちはだかる。
「あんっ。分かった!秒で戻って来るからね!」
先程までの満身創痍感が嘘だったかのように気力が急回復したニカは、少し名残惜しそうに、しかし、早く戦線復帰してユウを手助けする為に素早く後退していった。
「お前一人が相手?笑わせる」
「ああ、せいぜい存分に笑って手加減してくれ」
ー キィイイン! ー
ニカが後退していくのを視界の端で確認したユウは、ニカ達が回復する時間を稼ぐ為に自ら武蔵へ攻撃を仕掛ける。
「メロ先輩なるはやでお願いしますっ!」
「了解だよっ」
F1カーがピットインする時のように、メロアと小次郎がいる場所まで素早く後退したニカは、すぐさま回復依頼をし、戦況を見守っていたメロアも直ちに応じた。
「ありがとうございますっ!よし!行ってきます!」
「私も行こう。そして、ニカ殿に頼みがある」
「小次郎さん、もう大丈夫なんですか?心強いですけど、メロ先輩に回復してもらってからでも良いんじゃないですか?」
「ニカちゃんそれがね。小次郎さんには私の魔法が効かないの。回復しようとしたら『エラー:味方イベントNPCは回復・強化不可能です』ってメッセージがくるんだよ」
戦線復帰する小次郎をニカは歓迎したが、HPバーが回復していない事に気付き、回復してからの復帰を提案する。
だが、小次郎の回復は不可能らしく、メロアは経緯を手短く説明した。
後半についてはイベントの仕様に関する事なので、小次郎には聞こえないように小声でコソッと話した。
「どうやらメロア殿の術式は私との相性が悪いらしい」
苦笑しつつ小次郎は自身の見解を伝える。
「なるほど・・・(小次郎さん達はそういう認識になるのね)じゃあ、敵・・・特に敵司令官には効果があるのかな?」
「試してみないと分からないけど・・たぶん大丈夫だと思う」
「私の頼み事もそれに関する事なのだ」
小次郎は一泊置いてから、緊張した面持ちで相談を持ちかけた。
「メロア殿達と出会ったおかげで、折れかけていた心を打ち直す事が出来た事に大変感謝している。そして、無礼を承知で更なる頼み事をしたい。どうか、どうか私と共に敵司令官、宮本武蔵の洗脳を解いてくれ」
祈るように小次郎は独白する。
「最初は忘れていようと、記憶を消されていようと、私の刀で思い出させてやる、今一度、私の存在を新たに刻み込んでやる気負いで臨んだのだ。しかし・・・」
一区切りした後、ポツリと呟いた小次郎は泣き笑いのような、懐かしむような表情になった。
「でも駄目だった。駄目だったの・・・打ち合いの最中に私の知ってる彼のオンライン面影がみえて・・・彼との思い出が溢れてきて・・・」
小次郎の目に涙が滲み、やがてポツリポツリと流れ落ちる。
感情に呑まれ取り繕う余裕もないのか、言葉遣いも彼女本来のものとなった。
「私の我儘だけど、だけどやっぱり無かった事にしたくない。忘れられるのも知らない人になってるのも嫌なの」
小次郎は一人の少女として、溢れる涙を拭い嗚咽を漏らす。
「彼が洗脳されてる事、黒幕は『宰相』って事は分かってるの。でも、私にはそれを解く術も、彼を一人で打ち負かす力もない・・・だから、お願い。お願いします・・・私と一緒に武蔵をーー」
ー むにっ ー
嗚咽混じりの小次郎の嘆きは最後まで発される事なく、不意に頬に伸ばされた手によって止められた。
「話が長いです。それに、そのお願いも無意味です」
ー むにむに ー
「ふぃ、ふぃはどの・・・?」
突然の事に小次郎の涙が止まる。
彼女の頬を優しく摘んでいたニカは、それを確認すると手を離し、気持ちを入れ替えるように背伸びをする。
「友達の心からの願いなんだから応えて当然。それに善は急げ、恋する乙女はサラブレッドより速し、です。ユウ君と小次郎さんと私で武蔵さんを抑えて、メロ先輩に洗脳を解いてもらいましょう」
言うが早いか、ニカは交戦中のユウと武蔵の方を向き、突撃槍を構えて参戦のタイミングを図り始めた。
「それじゃ、私は行きます。小次郎さんも時間差でお願いします。メロ先輩もタイミングをみてお願いします」
「うん、分かったよ!」
「うう・・・本当に、本当にありがとう・・・」
「泣くのもお礼も後でです。今は武蔵さんとの戦いに集中しましょう」
「・・・うん」
涙を拭った後、司令官の顔に戻った小次郎も臨戦態勢をとり、3人とも戦う準備が整う。
「あ、ちなみにお礼は『キスまでの持っていき方』でお願いします」




