死地へ赴く
ー ギィン! ー
「ギャアッ!」
ー ザシュッ! ー
「クソがあっ!」
ユウが走る少し前方から剣戟と怒号が飛び交う。
それは彼が追いかけている人物、佐々木小次郎が近い事を意味している。
周囲のプレイヤーは小次郎の動きに圧倒されているのか注意散漫であり、黒騎士であるユウが傍を駆け抜けても気付かない、もしくは反応がワンテンポ遅れていた。
「っ!?黒ーー」
「ふぅっ!」
ー ビュォッ! ー
ー ザシュッ! ー
前方に気を取られていた(ユウ達からみて敵である)西軍のあるプレイヤーは、たまたま振り返った先に黒騎士を発見し、驚きのまま反射的に武器を構えようとしたが、既にユウの剣は眼前へと迫ってきており、回転の勢いを伴った一撃に為す術もなく斬り捨てられる。
また、別のとある西軍プレイヤーは背後から打撃を受け、突然の衝撃で訳の分からないまま前のめりに倒れ、襲撃者の姿を視認出来ないまま頭部を踏み砕かれた。
ユウは障害物(敵軍プレイヤー)を斬り捨て、殴り倒し、あるいは避け、小次郎の跡を一直線に追う。
やがて、ついに剣戟怒号との間に遮蔽物が無くなると同時に、ユウは突如として空白地帯に足を踏み入れる事となった。
そこは直径50メートルほどの円状となっており、空白地帯の至る所では光の粒子が煌めきを放つ。
ー キィン! ー
ー キィイイイン! ー
そして、その中心地では、澄んだ音を響かせながら、まるで舞うように2つの影が刀を打ち合わせていた。
幻想的な光景に一瞬目を奪われたユウであったが、恐るべき事実だと思い直すと共に気を引き締め直し、臨戦態勢をとる。
(幻想的?ここは真逆の場所だ!)
空白地帯に揺らめく光粒子はかつて『人』であったもの。
空白地帯はそこにあった『命』が全て刈り取られた事を意味する。
中心で斬り結んでいる2人の『余波』によって。
つまり、空白地帯である直径50メートルもの範囲は2人の戦いの殺傷圏内。
そこは幻想的な空間とは程遠い、力無き者は決して足を踏み入れてはいけない死地であった。




