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風と毒

ー ピィイイ(おさ)! ー



風の繭から解き放たれた者達へ真っ先に反応したのは、傍で備えていたグリフォンリーダーであった。


姿を現したのは2人。


鷲獅子グリフォン達の長である、黒茶色の鎧を纏った騎士アルストームと、彼の契約者となったメロアだ。



「そうか・・・!」


「誰なん?」



ある程度予想していたユウは驚くよりも納得し、騎士と初対面のベルは驚きよりも興味をそそられた。



「チッ。失敗したか」


一方、ニカと戦っていたドリューは、騎士の出現と傍にいる少女メロアを見て状況を把握し、忌々しそうに顔を歪めた。



ー ヒュオッ! ー


「隙あり!」


「そのようなものなどないわ!」


ー ギィイイイン! ー



メロア達に意識を向けた一瞬をニカに狙われたドリューだったが、繰り出された攻撃を大爪で八つ当たり気味に大きく弾く。



「わわっ!?」


武器ごと弾き飛ばされたニカは空中で体勢を立て直し、ドリューから離れた位置に着地した。


全員がドリューと距離を空けた事により、仕切り直しの状態となる。



「風騎士よ」


双方が睨み合う中、ドリューは騎士へ言葉を投げた。



「そこの小娘と契約を交わしたという事は吾輩達と敵対する意志を持ったと解釈しても良いな?」


「ああ」



ドリューの問いに騎士は短く、ただ、はっきりと答える。



「っ!」


その瞬間から、騎士達に向けてドリューの殺気が尋常でない程膨れ上がった。



「びゃっ!?」


殺気に当てられたメロアの全身が震え上がる。そこに風の繭内での凛々しい姿は見る影もない。



ー ザッ ー



騎士がメロアの前に立ち、彼女をその背に庇う。



「俺の契約者なのだから、もっと堂々としてくれ。」


「ぜ、善処しましゅ」



事も無げにドリューの殺気をいなす騎士は、縮こまっているメロアに対して、苦笑しつつも朗らかに声を掛ける。


それが彼の優しさであり、本音でもある事を察している彼女は、噛みながらも誠意を持って答えた。



そして、そんな他愛ない会話の間でも騎士は臨戦態勢を崩さない。


また、強烈な殺気が戦場を支配する中、ユウ達も恐怖に呑まれず懸命に戦意を維持する。



両陣営が睨み合う。


息苦しささえ覚える程の緊張感が数十秒続きーー



「ふん。興が冷めた。」


唐突に場の均衡を崩したのはドリューであった。



「目的が達せられないと分かった以上、このような鳥臭い場にいつまでもいる理由はない」


ドリューが一歩後退する。



ー ピィイ! ー



彼の侮辱にグリフォンリーダーが殺気立つ。



「俺達がお前を逃がすとでも?」


ドリューが後退した分、騎士が前進して圧をかける。


呼応するようにユウやニカ、ベルもドリューとの距離を詰めた。



「逃げる?吾輩が?」


だが、そんな状況でもドリューの表情に焦りは感じられない。



「面白い冗談である。誰が逃げると言った?」



そして、ユウは気付く。


ドリューの殺気は微塵も薄まっていない事を。


蠍の尾が地面に突き刺さっている事を。



「契約者達よ!俺の傍へ!」


「逃げるのでは無い!お前達を殲滅して去るのだ!」


騎士とドリューの言葉はほぼ同時であった。



だからこそ、ユウ達契約者が騎士の近くにいた事は幸いであった。



僅かに離れていたベルが全員の近くに降り立ったのと同時に、騎士が風に包まれ、真の姿を現す。


それは鎧を纏ったグリフォンであった。


グリフォンリーダーよりも一回り大きい、まさしくグリフォンの長とも言うべき個体である。



同じくして、グリフォンリーダーの姿が崩れ、文字通り風となって全員を包み込む。


そしてーー



「ここを我が領地とする」


「風よ、世界を隔てよ」


「『侵食毒域』!」


「『風絶界』!」



風騎士アルストーム暴食侯ドリューの周囲に魔法陣が展開し、それぞれが持つ固有オリジナルの魔法が同時に行使された。



ー ブシュォオオオオ! ー



地面の至る所に魔法陣が浮かび上がり、そこから紫色の粘液が間欠泉のように噴き上がる。


紫色の粘液、猛毒液は付着した岩壁や岩石をドロドロに、地形が変わる程に溶かし侵す。


戦場であるグリフォンの巣内は、幾多の魔法陣から噴き出した毒液で溢れかえり、もはや生ける者は存在しない死の世界へと成り果てる。



ー ゴォオオオオオ! ー



否。


一画だけ毒に侵されていない領域があった。



荒々しい風が竜巻となって、死の世界を拒絶している。


風の護りを受けているのは4人と1頭。


そう、全員が無事であった。



荒ぶる風の中、ユウは目の前の存在に感嘆する。



「風騎士アルストーム・・・。」


その雄々しく力強い姿に、安心感を覚える。



根拠はない。だが、絶対に大丈夫。


そう思わせる姿がそこにあった。



やがて風が止み、巻き上げられた砂塵が落ち着くと、戦場の全貌が明らかとなる。


天然の要塞じみた岩壁は余すところなく溶け爛れ、地面は猛毒に侵され変色し、戦闘前の面影など微塵も感じられない荒廃地となっていた。



ドリューは既に離脱したようで、そこに姿はない。


ゲームの世界なので時が経てば元に戻るとはいえ、凄惨な風景に心が痛くなる。



しかし



「生き残った・・・」



周囲を見渡すと、傍にいるニカからは微笑み返され、ベルは楽しそうに猛毒混じりの砂を採取しており、メロアは笑いながら風から戻ったグリフォンリーダーやアルストームと共に上を見上げていた。


つられてユウも見上げると、晴れ晴れとした空が広がっており、生き延びた者達か、新たに出現した者達か、数頭のグリフォンが力強く優雅に大空を舞っていた。



グリフォンの巣は壊滅的に荒らされた。


だが、全員無事である。


巣は元に戻るし、グリフォン達も立て直せる。



「ねえねえユウ君、これって勝利したって事なんだよねっ?」


「ああ、まあ、ほぼアルストームさんのおかげだけど」



ユウとニカは笑い合いながら再度空を見上げる。



「良い天気だな」




『条件を満たしましたのでクエスト【烈風の騎兵団ストームライダー】は達成となります』

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