再戦
「何だ!?何なんだ!?おーー」
ー グシャリ ー
「喚くな食糧。食事が不味くなる」
麻痺により未だ動けないHolyKnightは、仲間を目の前で喰い裂かれ混乱のまま叫ぶが、最後まで言葉を続ける事も許されず、煩わしそうに振り下ろされた前足に潰され、大地の染みとなって消えた。
「人間如きが吾輩の邪魔をするな」
吐き捨てるようにドリューは呟き、舌なめずりをしながら周囲を見渡す。
「さて、口直しにもう1匹食そう・・・か?」
そして、ユウと目が合う。
その瞬間、ユウはドリューが歪んだ笑みを浮かべたのを見た。
「っ!?」
咄嗟に、傍にいたニカを押し飛ばして構える。
ー ギィイイイイイン! ー
直後、ドリューの爪が篭手盾を掠めて通り抜け、金属音がけたたましく響く。
「会いたかったぞ、火竜姫の騎士ぃ!今度こそ魂まで貪り食ってやる!」
ー ヒュオッ! ー
ー キィン! ー
ー ゴォオ! ー
「俺、は、会いたく、なかった、けどな!」
ー ガァン! ー
HPバーが少ない現状で、直撃を受ければ致命傷となるドリューの攻撃を、ユウは必死で避け、あるいは盾で受け流して回避する。
ニカのように完全回避はできないが、リンの特訓によって、ダメージを受けない程度には攻撃を捌く事ができた。
ただ、ドリューの攻撃は重く、それに加えて、HolyKnight達の状態異常を見る限り、錆色の鎧を纏った暗殺者が潜んでいるはずであり、そちらに気を取られてか、戦いに集中しきれず防戦一方となっていた。
攻め、もしくは五分五分の状態まで転じられなければ、今スキルを使用したところで無駄撃ちになってしまう。
「気を付けて!状態異常攻撃してくる敵が隠れているわ!」
体勢を立て直したニカが注意を促すが、襲撃者の姿が見えない以上、迎撃は難しく、心積り程度の気休めにしかならない。
どこだ?どこにいる?
焦りは大きな隙を与える。
頭ではそう分かっていても、心と身体はそう簡単には制御できない。
そして、相手は強力なモンスターである暴食侯。
場が膠着していたのはほんの少しで、ユウが僅かな動作の綻びをドリューに突かれた事により、戦況のバランスは瞬く間に崩れた。
ー ビュォオッ! ー
ー ガァアン! ー
横に薙ぎ払われた左手を避けた際、爪先が盾を僅かに引っ掛けて弾き、ユウは腕ごと大きく仰け反ってしまう。
「ぐっ!?」
「吾輩との戦いの最中に他所に気を散らすとは、愚かである!」
ドリューは牙を剥き出しにして嘲笑った後、口を大きく開けて無防備となったユウの胴に喰らいつこうとした。
「ダメーッ!ユウ君を食べるのは私なのー!」
ー ドゴォオオオ! ー
「グォッ!?」
だが、牙がユウに届く寸前、謎の抗議と共に放たれたニカの突撃槍がドリューの頬を捉える。
直撃を受けた顔は軌道を逸れて、胴体横の何もない空間を食い千切る結果となった。
「お前もまた吾輩の邪魔をするか?獣皇女の騎士ぃ」
「あったり前よっ!」
絶好の機会を逃したドリューは、憤怒を込めた眼でニカを睨んだが、彼女は既に複数回バックステップを踏んで圏外へと離脱していた。
何の圏外か。
もちろん
「ありがとう、ニカさん・・・火竜の龍鱗!」
ユウのスキルである。
ー ゴゥオ! ー
鎧が黄赤色に染まり、灼熱と化した影響で周囲の景色が揺らめいく。
「グッ」
圧倒的熱量を至近距離で目にしたドリューは眼にダメージを負い、僅かであるが動きが止まった。
前回の戦いでドリューの俊敏さを身をもって知っているユウが、このチャンスを逃すはずもなく、モーションを最小限に抑えた、されど鋭い突きを顔面へと叩き込む。
ー ジュゥッ! ー
「ギャッ!」
既のところで顔を振られ、直撃から逸れたものの、偶然にもニカが槍で突いた頬と同じポイントに攻撃が当たり、ドリューはダメージエフェクトを撒き散らしながら後退する。
ダメージ量はそれほどでもないものの、プライドを傷付けられたのか、ユウ達を睨む表情は怒りに満ち溢れていた。
「おのれ!よくも人間の分際で吾輩の顔に傷をつけたなぁ!」
怒号が圧となって襲いくるが、強い心で身体を支え、恐怖に揺るがず距離を詰める。
単独でドリューと大差なく渡り合えるのはスキル発動中の3分のみ。
「ニカさん!バーンスを頼む!」
信頼できる仲間に暗殺者の排除を頼み、ユウは全力でドリューと斬り結んだ。




