最後の防衛戦
「いやああああ・・・」
「な、なんでベルさんがここに・・・?」
「あの人、ユウ君達のお知り合いなんですか?」
素に戻ったニカは、奇行を知り合いにみられた羞恥心から、篭手で顔を覆ってその場にしゃがみこみ、先程まで狂戦士化していた人物とは思えない乙女な恥じらいを見せ、ユウも羞恥と焦りで混乱し、ようやく人の心を取り戻したメロアは相手方を知らない故にのほほんと問う。
「なんでって言われても特クエ受けに来たんやけど。そういうユウ君達は・・・ふむん、なるなる」
一方、ベルは問いに答えた後、周囲を見渡して、ユウ達の状況を察したのか訳知り顔で頷いた。
「なんか面白い事に巻き込まれてるみたいやね。グリフォン達と一緒にいるって事は・・・特クエの妨害が目的ってとこかな」
「概ね当たりです、あ、だ」
ベルが面白そうに推理している間に落ち着きを取り戻したユウは肯定する。
敬語で話そうとしたが以前の会話を思い出し、友達に接するように話した。
「ねえねえユウ君、事情を伝えてクエストをリタイアしてもらえるよう頼めないですか?」
メロアはユウとベルのやり取りから親しい間柄だと判断し、ユウの耳元でコソコソと耳打ちする。
「そんなコソコソイチャイチャしなくても、直接聞いてくれたら答えるねんけどな〜。ちなみに、ごめんやけど答えはノーやで。っていうかうちは雇われてるだけやし決定権ないねん」
ごめんな〜とベルは苦笑しながら謝った。
「イィチャァイチャぁああ?」
そして別方向から、地獄の底から漏れ出したかのようなニカの声が響く。
「ちっ、違う違うよニカちゃん!そんなつもりじゃないの!」
「雇われ?ベルさんはギルドを作りたいからクエストに来たんじゃないのか?」
メロアは怯えながらイチャイチャを否定し、ユウは聞こえなかった振りをしてベルに問う。
「ちゃうよ〜。うちのプレイスタイルでな、クリア報酬金とドロップアイテムの一部をもらう事を条件にして、色んなクエストのお手伝いしてるねん」
「なるほど。便利屋ってとこ?」
「正解やで〜」
「おい、いつまで喋ってんだよ!」
ユウとベルが会話を続けていると、イラついた声が2人の間に割って入ってきた。
「雑談してる暇があったらさっさとグリフォン片付けろ!邪魔するならコイツらもだ!何見てんだよ!早くしろ!」
声の主である『HolyKnight』は、そのPNとは裏腹に、ベル達に向けて怒号をマシンガンのように浴びると、自身は腕を組んで鼻息荒く一歩退く。
「私達の為に頑張ってね〜」
すると、傍に控えていた『聖女フォンデュ☆』も軽く手を振りながら彼に付き従った。
銀色の全身鎧に身を包んだ聖騎士達は、どうやら自分では戦わないらしい。
その2人の言動にベルは面倒くさそうな表情を浮かべたが、直ぐに気を取り直し、肩を竦めて苦笑を浮かべた。
「雇い主もこう言ってるし、ごめんやけどリタイアする事はできひんわ〜。まあ、それにな」
彼女はそこで言葉を一旦区切ると、今度は意地の悪い笑顔を浮かべてユウ達に宣戦する。
「実はうち的にもリタイアする気はなかってん。面白そうやし、ユウ君とこの前のイベントの決着もつけたかっーー!」
ー ザンッ! ー
だが、言い終わらないうちに黒い旋風となったユウが斬り込み、ベルの身体を横一文字に斬り裂いた。
「ちょっとぉ、喋り終わらんうちに攻撃するんは卑怯ちゃう〜?」
斬り裂かれたはずのベルの身体は霧のように霞み、別の方向から抗議の声が聞こえた。
ユウは手応えの無さから感付き、慌てる事もなく声がする方へ武器を構え直す。
「不意打ちは戦術って叩き込まれたからな。格上なら尚更だ」
「ふふっ、ならしゃあないなあ。うちも本気でいかせてもらうわ」
「最初からそのつもりのくせに」
ベルの楽しげな声と共に、最後のグリフォンの巣防衛戦が始まった。




