表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/96

烈風の騎兵団

その騎士にはPNプレイヤーネームもHPバーも表示されていなかった。


そして、火竜姫リングレットとの出会いと同じ感覚。


ユウは確信を以て騎士に問う。



「貴方はもしかして神選獣ですか?」


「・・・開発陣を神と崇めるならな。ただ、俺は火竜姫達と同じく『父上』という認識でいる」



騎士は『神選獣』という言葉の響きに対し肩を竦め、兜の中で苦笑した。



リンの名が出た事や、騎士の言動からつい気を緩めそうになるが、意識して構えを解かないよう努めた。


本来、特別なモンスター達はお互いに敵対しているとリンから聞かされているのだ。


騎士の方も気にした様子はなく、苦笑のままユウ達に告げる。



「心持ちはそれでいい。火竜姫や獣皇女に対して明確な敵意は持っていないが、だからといって協力関係を結んでいる訳でもないからな。だが、今は俺から争う気はないから楽にしてくれ」



騎士の言葉に少しばかり逡巡したユウであったが、彼が持つ雰囲気と言葉から信用に足りると判断し、構えを解き大きく深呼吸をした。



「ふぅ・・・」



数回息を吐いしてようやく心を落ち着かせる事が出来たユウは、そこで自身が思っている以上に緊張していた事に気付く。


(当たり前だけど・・・この騎士モンスターも強いんだろうな。ニカさんや先輩はどうなってるんだ?)



仲間の様子を横目で確認すると、ニカは気合い十分といった様子で臨戦態勢を継続しており、メロアは騎士が放つ重圧に呑まれたのか全身をブルブルと震わせていた。



「ニ、ニカさん?向こうは争わないって言ってるけど・・・?」



ニカの態度に頼り甲斐を感じながらも、その気迫に押され気味のユウは確認をとる。



「聞いたよ。でもね、ユウ君。あの騎士の首を取らなきゃクエスト失敗しちゃう。そうなったらクラン作れないの。調べたらクランってゲームでは家族的な関係でもあるらしいの。ゲームとはいえ家族になるんだよ?だから倒すの」


「う、うん?」



常に騎士を見据え、熱の篭った声で呟く彼女はどうやら暴走気味であるようだった。


ニカから少しだけ目を背けたユウは、メロアに声を掛ける。



「大丈夫ですか?先輩」


「だ、だ大丈夫でしゅっ!で、でも何かクエストの様子がおかしくないですかね・・・!?」



契約者でないメロアは、イレギュラーな状況や、特別なモンスターに遭遇する事は初めてであったので、気丈に返答しつつも不安と混乱している様がだだ漏れであった。


その様子が小動物のようで、場違いながらも少し和んでしまう。



「大丈夫ですよ。あの騎士は信頼できます。・・・それに、何があっても先輩は俺達が守りますから」



彼女の不安を取り除く為、ユウは努めて優しく諭すと共にキザなセリフを口にした。



「ユウ君、私も怖いの不安なのこんなに震えてるの!」



なお、メロアが反応するよりも早く、某乙女騎士が彼の言葉に応じる。



確かにニカが構える突撃槍の槍先は震えていた。


逆に威力が強化されそうな程の超振動でだが。



「・・・もう良いか?」


「・・・はい」



さすがに時間をかけすぎたのか、グリフォンの騎士が問い掛けてきた。心做しかその声は少し疲れているようだ。


ユウもニカの言葉が聞こえなかった事にして、騎士に応じる。



「改めて問おう。俺達はあと何回、お前たち人間プレイヤーに討たれなければならない?」


「・・・貴方はこの世界ゲームのシステムを知っていますか?」



難しい騎士の問いに、ユウは思考を巡らせ、手探りで解答を導き出す事に決めた。


その第一歩として、騎士に問う。


彼および彼達とは、十中八九グリフォンの事に違いない。



そして、グリフォンリーダーの討伐はギルド創設の為の特殊なクエストであり、本来であれば討伐回避は不可能である。


だが、今回、グリフォンリーダー達ではなく黒茶色の騎士のみが出現するというイレギュラーが発生して、クエストの様子が変わった。


そして、たぶんクエストのクリア条件も変化したに違いない。



流れ的にこの後のクエスト展開は推測できるが、まずはグリフォンの騎士に自分たちの本来の立場やくわりを認識しているかの確認をとる必要があった。



「ああ、もちろん。この世界に産み落とされた時からここでの在り方を理解している。そして俺の罪の深さもな」


「罪の深さ?」


「俺をおさと慕ってくれる者達を、プレイヤー達に討たれる運命と知りながらも、幾度となく死地へと送り出しているこれが罪と言わず何と言う?しかも、俺自身は特別な状況でない限り、一般的なプレイヤー達を襲う事を禁じられているから更に業が深い」



そう言う騎士の言葉には悲しみや怒りなど様々な感情が込められているような気がした。



「知能を与えてくれた父上には感謝している。しかし、この役割を与えられた事については理解できない」


その嘆きにユウは応えられなかった。


契約者とはいえ、自分達も人間プレイヤーなのだ。先程までグリフォンを倒そうと意気込んでいた側なのだ。



重い空気がその場にいる者全てを包み込もうとする。


ー パンッ! ー



しかし、そうはならなかった。



「思いついた!じゃあさ、クエストの内容を変えたら良いんじゃないかな!」



突如鳴った柏手と、妙案を思いついたとばかりの明るい声が重苦しくなる雰囲気を霧散させたのだ。



発言者はニカである。



「ニカさん、それはーー」


「このクエストを受けにくる人全員を私たちで叩きのめすの!そしたら運営も無理だと判断してきっと内容を変えるよ!」


「・・・なるほど」



苦笑しつつ諭そうとしたユウは閉口する。



彼女の表現は過激だが、案自体は悪くない。むしろ、正解なのかもしれない。


課題は多くありそうだが、多くのプレイヤー達にクエストを諦めさせ、運営を動かすという方向性は良案である。


ただ、そうなると積極的にを仕掛ける必要がある。


言い出しっぺのニカや自分は良いが、心優しいメロアはどう思っているのだろう?


ユウは先程から黙っているメロアの様子を横目で確認する。



「うぇええ・・・グス・・・」


「っ!?」


彼女は大泣きしていた。



「騎士さん、可哀想・・・契約者とかの話はよく分かりませんが、私も協力します!みんなを返り討ちにします!」


「私も!ギルドを作るためなら鬼にもユニコーンにもなるよ!」



メロアと彼女に便乗したニカは物騒な決意表明を行う。


PVPに対する不安がないかの心配は全くの杞憂であった。



「勝手に話を進めてしまいすみません」



ニカとメロアが暴走気味な為、ユウが代表して騎士と向き合う。



「俺達3人で、貴方たちグリフォンを襲う災難を退けます」


「・・・できるのか?それにお前たちとは協力関係ではないと言ったはずだが」


「できるかは正直、分かりません。ただ、話を聞いた以上は協力云々など関係なく、見過ごす訳にもいきませんし、それに個人的にもリンと同じ特別なモンスターとして貴方の力になりたいです」



もちろん、クランを作るためにもです。


照れ隠しでそう付け足し、ユウはグリフォン達を守る戦いを行う旨を伝えた。



「・・・そうか、誇り高き契約者達よ、感謝する」


グリフォンの騎士は深々と頭を下げ、感謝の意を表す。



「俺の一族も存分に使ってくれ。プレイヤーにも引けを取らない精鋭達だ」


「ありがとうございます」



そして、タイミングよく一通のメッセージが届く。


メッセージは予想通り運営からであった。




『【パーティ宛】特殊クエストの変更。


いつもパラレル・エイジ・オンラインをプレイしていただき誠にありがとうございます。


このメッセージは対象のパーティメンバー全員に送信しています。


【変更点】

クエスト名【烈風の騎兵団ストームライダー


クリア条件

グリフォンの巣を訪れるパーティ5組の壊滅


失敗条件

グリフォンの巣防衛側の壊滅


なお、クリア報酬に変更はございません。

引き続きPAOをお楽しみください。


運営より』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ