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鷲獅子

大型連休ゴールデンウィークの熱気も落ち着いた5月の下旬。


結崎大和ユウ西織花奈ニカ、九条ゆりあ《メロア》の3人は大学の食堂にて、PAO関係の打ち合わせを行っていた。


時刻は夕方であり、会話の声が届く範囲はもちろん、食堂事態にも人が少ない為、内容を詮索される心配はない。



「それじゃあ、頑張って今日こそクランをつくっちゃいましょう!」


「「おー!」」



周囲に人がおらず、調子づいた3人は右手を頭上に掲げて気合いを示した。


『ギルド』


『クラン』



それは冒険時のパーティシステムと並んで、今日のVRMMOと切っても切れない関係にあるゲームシステムであり、内容の差はあれど現在プレイされている全てのVRMMOにおいて実装されている。


あの普通が嫌いなPAOの開発、運営陣でさえも実装せざるを得ない程、人間でいえば呼吸をするために必要な酸素並に必須であるシステムなのだ。



なお、PAOにおいてギルドに加入するにはレベル30以上かつ、ギルドの拠点として設定されている国に所属している事が必要となっている。



ギルドに加入すると、そのギルドに所属するどれかのクランに入る事になる。


もちろん、自分でクランを立ち上げる事もできる。


今回、大和達が目指しているのはそちらの方(クラン創設)である。



レベルに関しては、日々のレベリングで大和と花奈も30に達しており条件をクリアしている。


拠点となる国については3人で相談した結果、現在いる『ベルカ共和国』に決定となり、3人は早速共和国のギルドに所属した。

(メロアは前ギルドの拠点であった国から所属を移し替えた)



ただ、クランをつくるにはもう1つ条件があり、各国のギルド内で決められた複数の特殊クエストをクリアしなければいけない。


ちなみに、集めるアイテムや討伐するモンスター等、クエストの詳細点は国ごとに異なるが、難易度的には統一されている(運営談)らしい。


こちらも多方はクリアでき、残すところは、あるモンスターを討伐するクエストのみとなっていた。


今日はその討伐クエスト遂行日である。



そして、夜。


待ち合わせの予定時刻より少し早く集まった3人は、ベルカ山脈の中腹にある町からフィールドへと移動した。



ー ギャィイイ! ー


ー ギュルッグァ! ー



山林地帯より高い標高にある高原地帯に、平地より俊敏性が高い『マウンテンゴブリン』や、草木に隠れて奇襲する『ベルカスネーク』といった強力なモンスター達の断末魔が響き渡る。



レベル30前半のプレイヤーでも、本来であれば少し苦戦するようなモンスターが出現するこのフィールドも黒騎士2名にかかればピクニックに毛が生えた程度の難易度であった。



「ユウ君、見て見て〜。綺麗な鼻が咲いているよ!」


「どんな花・・・?って鼻!?しかも鮮やかな青色!?」



ニカにとっては本当にピクニック気分かもしれない。


なお、これでも全員周囲への警戒を怠っておらず、レベル30超えの中堅プレイヤーの片鱗が窺える。



「青鼻綺麗だよね〜、ギルドのホームができたら飾りたいなあ」


「飾る!?マジですか!?」



また、メロアの存在も大きい。


ユウもニカも近距離攻撃がメインの為、遠距離攻撃を有する相手には手間取っていたが、メロアは魔法攻撃がメインなので、2人の苦手とする距離を上手くカバーしてくれるのだ。


ただ、感性が若干ズレているところが玉に瑕なのだが。



「メロ先輩!私はピンク色の鼻が良いです!あ、でも、グチャ混ぜした方が薄紫になってオシャレかも?」


「グチャ混ぜ!?」



実はニカもズレているかもしれない。



ちなみに、ニカとメロアは大学リアルでの顔合わせの時から意気投合しており、大学の食堂で時折、一緒にお昼を食べていたりする。



「先輩なんだけど妹みたいで放っておけないの」


とはニカの言葉である。



3人(主に2人)がかしましく歩き、倒し、騒ぎを繰り返しながら高原を離れ、ようやく目的地であるへ切り立った岩壁に囲まれた岩場の入口へとたどり着いた。



情報によれば、この先には『グリフォン』の巣がある。


そこで複数のグリフォンとその長である『グリフォンリーダー』と戦闘を行い勝利する事が今回のクエストの目的であった。



グリフォンは鷲の上半身と翼、獅子の下半身を持ち、大空と大地を駆け、鋭利な嘴と大爪で獲物を引き裂く、俊敏性、攻撃力ともに高いモンスターである。


更にグリフォンリーダーに至っては風の魔法を扱うらしい。


さすがにボス級となるモンスターを相手取るとなると3人にも緊張が走る。



ただ、そこに絶望の色はない。


緊張する。そして苦戦もするだろう。


だが、不思議と敗ける気はしない。



仲間が増えた事による勇気か。


日々の特訓の成果の表れか。


何にせよ、3人は怯むことなく堂々と胸を張り、ユウを先頭に岩壁の門を通過していった。



「・・・っ!?」



そして、異変に気付く。



ネット掲示板で事前に調べた情報では、ローマにあるコロッセウムのような巣に、10頭程のグリフォンが岩肌の所々に控えており、そして、巣の中心にグリフォンリーダーが威風堂々と鎮座しているはずであった。



しかし、そのいるはずのグリフォン達がいない。


周囲のグリフォンどころか、長であるグリフォンリーダーさえも。



だが、巣に何も存在していない訳ではない。


本来グリフォンリーダーが陣取る巣の中心に、厳かに佇む存在がいた。



それは黒茶色の全身鎧フルプレートアーマーに身を包んだ1人の騎士であった。


襟元には白いファーがあしらわれており、どこかグリフォンを連想させる。


その存在を認識した時から、ユウはゲーム内であるのに肌がひりつく感覚を覚えた。


それはまるでリングレットと出会った時のようなーー



「火竜姫と獣皇女の契約者達よ」



ユウが記憶の糸を手繰り寄せた時、件の騎士は突如として、雄々しくも哀しみが含まれた声で3人へと問い掛けた。



「俺は、俺たちはあと何回討たれなければならない?」

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