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子犬的な少女

人でごった返す中での出来事だったので、かなり注目を浴びていた大和達は逃げるようにその場を離れ、食堂へと場所を移した。



「ごめんなさい。クランへは入れません」



そして開口一番、断りの返答をする。



「そ、そうですかあ・・・」



予想はしていたのか、少女は大和の答えをあっさり受け入れた。


だが、明らかに落胆した様子である。


もし、彼女に犬耳がついていたら、しゅんと垂れているに違いない。



「何かすみません」


「い、いえっ、慣れてますからっ!」



少し申し訳ない気持ちになり謝る大和に、気にしないで下さいと少女は手を振り明るく振る舞おうとするが、その表情は晴れない。



「貴方のような人となら楽しくプレイできると思いますが、他のメンバーの方がどうかは分かりませんし、そもそも俺、まだレベル30未満なので国に所属できないんですよ。」



大和はその姿に苦笑し、努めて優しい声で説明した。



PAOではレベル30以上になると国に所属できる。


国に所属すると、その国の軍、もしくはギルドに入る事ができる。


ギルドに加入した場合、そのギルドに所属している既存のクランに入るか、新たなクランを創設する事になる。



逆にいえばレベル30未満のプレイヤーは国に所属する事ができない。


その為、レベル30が1人前かどうかの一種の区切りとなっており、未満のプレイヤー達はソロ、もしくはパーティを組み、レベル上げに勤しむのが常であった。



「そうだったんですかあ。じゃあ、私の方がちょこっと先輩ですね」



大和の気遣いを感じ、また、理由も納得するものだったので、少女の気持ちも多少は立ち直り、笑顔をみせる余裕ができた。



「そうみたいですね。俺も早くレベル30になるよう頑張ります 。もし次に顔を見かけた時にまた声を掛けてくれると嬉しいです」


「本当ですか!?絶対声掛けますねっ!」



もう大丈夫だろうと思いながら、大和は社交辞令を言うと、真に受けた少女は花が咲くように満面の笑みを浮かべる。


その表情を見て、彼女の所属クランを検討するのも悪くないと思ってしまうのは男のさがか。



その後、しばらくPAO関連の雑談をした少女は、大和へプレイヤーネームを伝え、まるでスキップをするかのような軽い足取りで去っていった。




その日の夜、大和ユウは言葉通りレベリングに勤しんでいた。


ユウが現在いる場所は『ベルカ共和国』の象徴、『ベルカ山脈』の麓のフィールドである。



草原や森林のフィールドが主なファーストパレス王国と異なり、ベルカ共和国は山岳地帯が主なフィールドとなっており、岩の鎧を着込んだヤギ型モンスター『ロックゴート』や、ひづめで地面を蹴る度に火花を散らすカモシカ型モンスター『スパークアンチロープ』といった、出現するモンスター達も山岳地帯に住む動物がモチーフとなっていた。



まだフィールドの序盤だが、それでも出てくるモンスター達は前の国のより強く、そして、手に入る経験値も多い。


その為、一心不乱に討伐していたユウのレベルは27に達していた。



「あと1レベル上げて今日は終わろうかな」



そう決めたユウは、今いる場所よりもう少しだけ山奧へと分け入る。



「本当に使えねえな!」



そんな罵倒を耳にしたのは山林道を登ってしばらくした時であった。


声は林道から外れた、しかし、そう遠くない距離から聞こえる。



面倒事になりそうな予感はしつつも不穏な言葉である為、ユウは様子を探ろうと、周囲を警戒しながら道から外れ、荒らんだ声がする方へと歩を進めた。



「使えそうなスキルだからギルドに入れてやったのに、使うお前がノロマじゃ意味ねえだろ!」


「それに1人も勧誘できてないし・・・もしかしてリアルでもノロマなの?」


「またそうやって泣きそうな顔するけど、それしたら許してもらえると思ってんの?ねえ?」


「しかも媚びた顔だし。どんだけキャラメイクに時間かけてんだよ。どうせ現実じゃブサイクなくせに」


「ご、ごめんなさい・・・」




木々に隠れて接近した際、聞こえてきた内容によると、どうやら仲間内での言い争い、いや、数人が1人を集中的に責めているようであった。



会話がはっきりと聞こえるにつれ、ユウは胸糞悪くなる。


責められている経緯は分からないが、その者の行動だけでなく、人格までけなすのは間違いだ。



揉めている集団の姿が認められる位置に辿り着いたユウは、木々の影からその人物達を窺った。



「・・・やっぱり」



謝る声に嫌な予感がしていたユウは息を吐く。


数人に責められるプレイヤーは『メロア』。


今日、大学で出会った少女から聞いたプレイヤーネームであった。

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