クラン勧誘(仮)
ゴールデンウィーク明けの夜、廃神殿にて。
ー ヒュオン! ー
ー ゴォオオウ! ー
黒騎士の放った一閃が空を斬り、火竜姫が手にする黄金の剣が、彼の胴体を焼き払う。
ヨウサイと魔石狼の素材を使用した黒鎧は破格の防御力を誇るが、火竜姫リングレットの剣の前では他の有象無象の防具と変わりなく、まるでバターのように易々と装着者ごと熔け斬られた。
「っ!」
黒騎士ことユウは、言葉を発する間もなく、 分断された上下半身とも火だるまとなり、すぐに光の粒子となって消えた。
「俺、本当に強くなってるのかな」
例のごとく廃神殿で復活したユウは少しだけ弱音を吐く。
今日も幾度となく主人であるリンに叩きのめされ、自信の方もポロポロ剥がされてしまったのだ。
「大丈夫っ!お兄ちゃんはちゃんと強くなってるよ~」
対してリンはニコニコ笑顔でユウの成長を肯定した。
「そう、かな?」
「そうだよ~。だって初めの頃は一合もまともに打ち合わせられなかったでしょ?それが今だと数合まで耐えられるし、反撃もできるじゃん。これは強くなったって事じゃないの?」
「・・・言われてみれば確かに」
ユウはリンとの特訓の日々を振り返り、彼女の言葉に納得する。
最終的に灰になるのは変わりないが、確かに生存時間が数秒ずつ増えているような気がする。
微々たるものながら着実に成長していたのだ。
「そっか・・・そっか」
「ふふふ、もう大丈夫かな?」
「ああ、いや、くだらない事で自信なくしてごめん。そして、励ましてくれてありがとう」
「いいよ~。お礼は国造りでお願いね。私の騎士様」
「出世払いでお願いします、俺のお姫様」
その後、ユウは剥がれた自信を再びかき集める為にリンとの特訓を再開する。
相変わらずズタボロになって灰になるが、兜下のユウの表情は晴れやかであった。
実は消し炭になる事が少し癖になっているかもしれない。
あくる日も大学でのサークル勧誘は盛んであり、午前で講義が終了した大和は昼食をとってから帰ろうと思い、勧誘する側とされる側で溢れかえる人の波をかき分けて、食堂を目指していた。
ー トン ー
「わふっ」
「あ、すみません」
「こ、こちらこそっ!ご、ごめんなさい!」
過密な人混みの中を歩けば誰かと接触するのはほぼ必然であり、大和も誰かとすれ違いざまに身体が軽くぶつかった。
大和は軽く謝罪したが、相手の方はとても狼狽した様子で大袈裟に謝ってきた。
「い、いえ、俺は大丈夫ですから。そちらも怪我はありませんか?」
その様子に少し気圧されながら大和はぶつかった相手を改めて確認する。
相手は同年齢としては少し低めの身長と、肩くらいまである茶髪のゆるふわウェーブを備えた少女であり、若干潤んだ瞳とぷるぷる震えている様子から小動物を連想させられた。
「だ、だだだ大丈夫でふ!」
少女の狼狽は続いており、声がどもり、そして言葉を噛む。
「〜!」
噛んだ事が恥ずかしいのか彼女の顔が真っ赤になった。
(・・・うん。表情が分かりやすいな。そして和む。・・・あ)
一連の百面相をボケっと眺め、少しだけ癒しを得ていた大和は、ふと少女が手にしているビラに目がいった。
それには『パラレル・エイジ・オンライン:クランメンバー募集中』という旨の勧誘文が可愛い文字で書かれており、他にも手書きのモンスターらしい絵が載せられていた。
大和の視線に気が付いた少女はビラを持っている事を思い出し、赤みが残る顔のまま緊張した面持ちで大和に尋ねた。
「あ、あの!パラレル・エイジ・オンラインをご存知ですか・・・?」
「はい。最近プレイし始めたところです」
返答を聞いた瞬間、少女の表情がパッと明るくなり、先程までの緊張が嘘のように今度は鼻息荒く大和へ詰め寄る。
「じゃあじゃあじゃあ!唐突なんですけど、私達のクランへ入ってくれませんか!?」




