お茶会オフライン
大和の大学ではゴールデンウィーク明けから、各サークルの新入生勧誘が本格的に始まる。
大学の門から校舎へと続く道にはいくつものブースが設置されており、勧誘する学生とされる学生とが入り乱れて賑わっていた。
「2人はもう決めたのか?」
「いや、色々あって正直迷う」
「僕は入らないよー。それよりもPAO優先したいしー」
「拓夢はそう言うと思った」
大和達3人も新入生の例に漏れず、昼休みの空き教室でサークル勧誘の話に花を咲かせていた。
「VRゲーム同好会ってのもあったぞ?」
「気にはなるけどねー」
あのサークルはどうだ、この同好会はああだと、話題には事欠かない。
しかし、結局、3人ともピンときたものがなく、話の中心は次第にPAOへと移っていった。
主にゴールデンウィーク前日のイベントと連休中にどこまで進んだかの話で盛り上がった。
イベントには3人とも参加していたようで、田原本純也が予選敗退、三宅拓夢と大和は決勝トーナメント進出するも、例の砂漠転移により砂漠の兵との戦いに移行した為、満足に結果を残す事ができずに途中敗退となった。
「それでも良いじゃん。有名になったんだろう?」
俺も決勝に残ってみんなからチヤホヤされてー!
田原本は羨ましそうに自分の願望を述べる。
「最後まで生き残れなかったし自慢できないよー。順位も真ん中の方だったしー」
「まだ真ん中で良かったじゃないか。俺なんて下から数えた方が早いぞ?」
対して三宅と大和は淡々としていた。
イベントの順位が発表されていたが、2人とも満足のいく結果ではなかったらしい。
イベントの順位については、生存時間も大切だが、敵兵の討伐数も重要であった。
大和は早々とアラジンと戦う事になってしまったので仕方ない。
続いて連休中の進捗状況の話では、現時点での3人のレベルが三宅35、田原本25、大和23である事が分かった。
「相変わらず一歩前に進んでるな」
「ふふーん」
田原本の素直な称賛に、三宅も頬が緩み笑みがこぼれる。
「俺たちも負けてられねえな」
「ああ」
目標がいる事で、大和達も刺激され、モチベーションが上がりレベリングに気合いが入る。
意気軒昂な雰囲気となったところで、そろそろ移動する時間になった。
午後は各自、別々の講義を取っている為、ここでお別れとなる。
「そういえば大和はさー、ドラゴンって見た?」
教室を出る準備中、三宅がふと思い出したかのように大和に訊ねた。
「にゃ、なんでドラゴン?」
あまりにも突然の質問なので、ドラゴンに心当たりのある大和は少しだけ狼狽して言葉を噛む。
まさか正体がバレた!?
そんな不安が過ぎるが、三宅は特に気にする事もなく、訊ねた理由を話した。
「んー、その反応じゃ見てなさそうだなー」
「ああ、昨日噂になったドラゴンか」
「そうそー。大和がいる国の隣国に出現したんだってー。一度このゲーム内で見たいよねー」
あわよくば龍鱗をー。
俺も!
純也はまずレベル30になってからじゃねー?
そう意気込んでいる2人を尻目に、大和は安堵のため息をつく。
単純にドラゴンの目撃情報を知りたかったようだ。
「拓夢ごめん。俺王都の方に居てて知らなかったんだ」
「いいよー。たぶん移動型のモンスターだし、運が良ければ出会えるかもだしー」
もし目撃したら教えてねー。という言葉と共に三宅は次の教室へと移動した。
田原本も挨拶そこそこに、慌てながら教室を出ていく。
多少の罪悪感を感じながら、2人を見送った大和も次の教室を目指す。
「ごめん2人とも。実は今日、ドラゴンと会う約束をしてるんだ」




