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幕間 恒例のお茶会

「準備できたか!?」


「ああ!」


「まだいるかな?」



ドリュー達の離脱を確認した後、エルに急かされるように麓の街へと導かれたユウ達一行は、門前で色めき立っているプレイヤー達の間を抜けて街中へと入る。



「おい、あれ黒騎士じゃね?」


「おっ、本物だ!でも今は・・・」



ユウ達の黒騎士姿に反応したプレイヤーも少なくないが、今はそれよりも別の事柄に気が向いているらしく、ほとんどのプレイヤーはユウ達を一瞥しただけでスルーしていた。



「アンタらは何か見ていないか?」


また、彼らに話し掛けたプレイヤーも『黒騎士』だからというより、国境の森林側から街へやってきた『1プレイヤー』として声を掛けたようで、森林を越えた丘付近で異常がなかったかの確認であった。



「いや、特には」


「そうか、呼び止めてすまなかった」


「いえ、お構いなく」


話し掛けてくるプレイヤーは、二、三言交わし、ユウ達が何の情報も持っていない事を知ると、足早に去って行く。


一行は去りゆく彼らの後ろ姿を見送った後、素知らぬ顔で門をくぐっていった。


巨大なドラゴンが出現したというざわめきを背中越しに聞きながら。



「ここに着くまでに、すれ違う人、すれ違う人、みんなドラゴン退治だー!って言ってたな」


「そのドラゴンとみんなすれ違ってるなんて思いもしないよね」


「えへへ、有名でごめんね〜」



街の大通りから少し外れた場所にあるカフェでユウ達は一息つきながら、すれ違ったプレイヤー達の熱狂ぶりに苦笑していた。



ゲームの有名なモンスターといえば、やはり『ドラゴン』が挙げられる。


ほとんどのゲームでは強力なボス級として登場し、討伐された場合は希少なアイテムをドロップする事が多く、更にVRMMOに至っては、倒した者は『ドラゴンスレイヤー』として特別視される傾向にあった。



さすがに、この街において現時点でドラゴンを本気で倒そうとしているプレイヤーは一部しかおらず、多くのプレイヤーは一目見たさに行くだけだろう。


それでも数多のプレイヤーがこぞって街を出ていくのを見ると、改めて『ドラゴン』のネームバリューの凄さを思い知らされる。


なお、今回の騒動を引き起こしている当の火竜姫リングレットは、口周りを汚しながらパフェのチョコソースを頬張っていた。



「私もいましたのに」


その隣では、ショートケーキを食べていた獣皇女エルレンシアが、頬を少し膨らませて不満をアピールしている。



黒鎧2人と少女、妙齢の女性という異様な組み合わせだが、ゲームではよくある光景なのか、店内にいる数組のプレイヤーは特に気にした様子はない。


ちなみに、PAOには年齢制限がある為、実際の低年齢層はプレイできないが、キャラクター設定の際に身長や体型を弄れるので、リンのような少女姿のプレイヤーも少なくなかった。


ただし、代償として身体基礎値ステータスは限りなく0に等しくなるが。



「エルはユニコーンになってないし、もっと言うと大きくないしね」


エルの向かいに座り、紅茶を口にしていたニカが、やんわりとフォロー?をする。


NPCが営むこのカフェで出される各品には、HPバー回復などの効果があり、かつ、現実世界リアルの味が再現されている為、割と人気があった。



「それにしても、ドリュー達に必要以上に恨まれていたような気がしたけど・・・リン、何かした?」


話が落ち着いたところで、コーヒーを飲んでいたユウが主人リンに訊ねる。


「まあね。ドリュー個人に何かした訳じゃないけど・・・お兄ちゃんは、私達特別なモンスター、ドリュー達が言う『神選獣』は基本的に敵対してるって話を覚えてる?」


「ああ」


「それじゃあ、私とエルとが同盟を組んでるって話も覚えてると思うけど、実は私達と同じようにドリューやギュイ達も、似た者同士で同盟を組んでるの」


「そういえば会合が云々って言ってたな」


「たぶん同盟の会合だね。それでね、そのドリュー達の同盟っていうのが、ちょっと過激な事しようとしてたから私とエルとで邪魔したんだ 」


「なるほど。奴らの企みを阻止したから、恨みをもたれたんだな」


「そういう事〜」



恨まれている事など1ミリも気にしていない様子で、リンは笑顔でパフェを食べ続ける。



人間プレイヤーの事を見下してたし、ろくな企みじゃなかったんだろうね」


「内容は教えられませんが、その通りです」


ドリュー達の言動を思い出し、苦虫を噛み潰したような表情のニカにエルも同意した。



「彼らはお父様である開発陣の皆様を『神』と認識し、自身達の事を『神に選ばれたモンスター』と自負しております。それ故にプライドが高く、神選獣でない者達については己より劣っていると決めつけているのです」



エルもドリュー達に対して良い印象を持っていない。


特別なモンスターとして誇りを持つことは良いのだが、驕り高ぶるその態度が気に食わないのだそうだ。



話はそのままドリューや契約者バーンスとの戦いの反省やアドバイス、戦いの舞台となった村と村人達、そして、この街の特色と話題を転々とする。


神選獣としての制約がある為、バーンスについてはもちろん(知らなかったという事もあるが)、ドリュー達についても詳しい情報は聞けなかった。


ただ、ドリューこと暴食公ドリュミラは『マンティコア』、ギュイこと魔霧侯ギュイネリアは『カトブレパス』というモンスターである事は分かった。



リン達のような特別なモンスターは現実世界の伝承になぞられて生み出されているらしく、マンティコアやカトブレパスもその伝承を調べれば、攻略の糸口が見つかるかもしれない。



そして、反省会の後にした村や街の話題は大いに盛り上がり、お開きになる頃には、現実世界で日付が変わっていた。


明日からはまた大学の講義が始まる。


大和ユウは気持ちを切り替えて、眠りについた。

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