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霧と風と太陽

「来ちゃった♡」


「あ、はい。」


リングレットの言葉に既視感を抱きつつも、ユウは真顔で答えた。



「たまたまあっちの山からお兄ちゃん達が見えてねー。ピンチだったから助けに飛んできたんだよ。偉いでしょ!褒めて撫でて!」


「あ、ああ。偉い偉い・・・?」



ギュイの頭から降りたリンにねだられ、その勢いに圧されるままユウは彼女の頭を撫でて褒める。



「えへへ〜」


「ふふ・・・って違う!・・・っ!ドリューがいない!?」


戦いの最中に似つかわしくないほのぼのとした時間が僅かに流れるが、すぐに我に返ったユウは周囲を確認し、ドリューの姿が消えた事に気付いた。



「リングレットォオオオ!」


直後、あらぬ方向から霧を切り裂いてドリューが姿を表し、殺気を纏わせた凶爪をリンへと振り下ろす。



ー ビュォオ! ー


ー キィイイイイン! ー



しかし、その攻撃は、いつの間にか手にしていた彼女の愛剣で軽々と受け止められた。



「ふぃー。危なかったあ」


「抜かせ!」



ドリューはなおも殺気をみなぎらせ、リンを集中敵に攻撃する。



ー キィン! ギギィン!ガァアン! ー



嵐のような連撃を彼女は踊るように避け、あるいは剣で受け止める。


ドリューの爪や牙とリンの剣が打ち合う度、火花が激しく散る。



その激しい攻防戦を前にして、HPバーに余裕がないユウ達は援護どころか、巻き込まれないよう距離を取らねばならなかった。



「・・・っ」


ユウは複雑な感情で戦いを眺める。



正直、リンとドリューの戦闘は思わず見惚れてしまう程凄い。


だが同時に、自身に、そこに交じる実力がない事が悔しかった。


前回のイベントでアーサーとアラジンの戦いをモニター越しで眺めていた時と同じである。


そして、結局最後に憧れを抱いたのもやはり同じであった。



自分も早く彼らと同じ舞台で戦いたい。



ユウの感情が高揚する中、火竜姫リン暴食公ドリューの激戦は衰える事を知らず、周囲の建物を軒並み灰塵に帰してもなお、その勢いは止まらなかった。



しかし、決着は唐突に訪れる。



一瞬の隙を突いたドリューはリンを引き裂く為、大爪を彼女の脳天へと振り下ろした。



ー ガキィイイイイ! ー


間一髪、リンは剣で爪を受け止めるが、全体重が乗った爪を押し返す事が出来ず、彼女はその場に縫い付けられる。


リンの動きを封じたドリューは尾先の毒針を勢いよく地面に突き立てた。



ー ブシュゥウウウウウ! ー



毒針が地面へ沈みこんだ直後、至る場所から広範囲に渡って紫色の毒ガスが吹き出して霧と共に濃く立ち込め、ユウ達の視界を完全に奪う。


一瞬の出来事であったので、ユウは息を止める間もなく大量の毒霧を吸い込んでしまい、『重毒』の状態異常に陥ってしまった。


回復薬ポーションが切れて余裕のないHPバーが更に減少していく。



「くっ!・・・え?」


「もう大丈夫ですよ」



さすがにここまでかと歯噛みした時、ユウは突然誰かに手を取られた。


落ち着いた女性の囁きが聞こえたかと思うと、『重毒』の表示が消え、HPバーが回復し始めた。



「もしかして、エルレンシアさん?」


「ふふ、正解です」



イタズラめいた声がする。


相変わらず毒霧が濃くて姿が見えないが、その声はニカと契約している一角獣ユニコーンの『エルレンシア』に他ならなかった。



「私に触れていれば大丈夫なので、手を離さないで下さいね」


治癒の能力なのか、彼女と接触さえしていれば、毒霧の中でも問題ないらしい。



「っ!?ユ、ユウ君!私とも手を繋げば効果倍増だよっ!」


すると霧の中からニカの声と共に新たな手が現れ、慌てたようにユウのもう片方の手を握った。


元気そうで何よりである。


効果はもちろん倍増していないが、ニカの安否も確認出来た事で心に少し余裕ができ、また、仲間がそばにいるという安心感を抱いた。



「さあ、そろそろ霧が晴れるはずです。皆さん耐えて下さい」


「えーー」



ー ゴォオオオオオオウ!! ー



「っ!?」



だが、それも束の間、「霧が晴れるから耐えろ」の意味が分からず、思わず聞き返そうとしたユウであったが、突然、強烈な突風が吹き荒れた為、結果としてエルの忠告通りの行動をとった。


円陣を組むようにしてお互いを支え合い、吹き飛ばされないよう足を踏ん張り耐えたユウは風が止んだ後、目に入った周囲の眩しさに顔をしかめる。


エルの宣言通り、毒ガスと霧が完全に払われた今、澄み渡る青空とそこに輝く太陽が村を照らしていた。



そして、大空には全長10メートルを越える巨大なモンスターが雄々しく翼をはためかせている。



「リン・・・」



羽ばたきの余波で生まれた風を感じながらユウは火竜モンスターの名を呟いた。


その声に反応するかのようにリンは炎を纏い、次の瞬間、少女の姿となって、背中に生やした小さな翼をはためかせユウの隣に降り立つ。



「お兄ちゃん、ごめーん。ドリュー達を逃がしちゃった」



彼女の言葉通り、先程まで交戦していたドリューと、地面に突っ伏していたはずのギュイの両者の姿が消えていた。



こうして、ユウ達の神選獣や契約者との初遭遇戦は敵側の離脱という形で幕を下ろした。

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