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魔石狼オルタナ

「はっ!」


ー ギィイイン! ー


「ふっ!」


ー ギギィン!ー



魔石狼オルタナの体毛とユウの剣刃がぶつかり合い火花を散らす。



ー ビュオッ! ー



押し込もうと剣に全体重をのせていたユウであったが、危険を察知し慌ててバックステップを踏むと、直後まで自分がいた空間を鋭い大爪が風切り音を伴いながら通り過ぎていった。



危なかったとユウは冷や汗を垂らす。


黒鎧の防御力により先程の攻撃が当たってもダメージは僅かだが、強制的に弾き飛ばされる上、その後の追撃も含めるとなかなか無視のできないダメージとなる。



その為、避けるに越した事はない。


オルタナは話に聞いていた鉱石狼オルフェノよりも俊敏になっているが、ユウはリンとの特訓により更に速い攻撃に慣れている為、攻撃速度に反応出来ており、避けたり盾で受け流したりする事で、攻撃を捌いていく。


そして、攻撃を受け流した後に隙があれば、空かさず反撃カウンターを放つのだがーー



ー ガィイイン! ー



その度に、岩のように硬い体毛に阻まれて攻撃が通らない。



「くっ!」


ユウは苦々し気に奥歯を噛み、何度目かの反撃を中断して剣を引く。



ー ガァン! ー


直後、振るわれた尾の一撃を盾で受け流す。


このままではジリ貧、いや、むしろユウは僅かずつだがダメージを受けているので不利になっていく。



もちろん打開策はある。


相手は『魔石狼』、そして『岩』のような硬さの体毛。


つまり、体毛は魔石でできており、岩以上の強度を持っていないとも言える。


それならば、ユウのスキルが通じる可能性は十二分にある。



本当はスキルで倒し切れなかった時の為に、少しでもオルタナのHPバーを減らしておく、もしくはダメージが通る部位や弱点を見つけておきたかったが、それまでに取り返しがつかなくなる程のダメージを受けては元も子もないので、スキルを使う事を決めて、発動のタイミングを図った。


タイミングを図る間にも、オルタナの攻撃は苛烈さを増し、大爪による切り裂き、後ろ足の蹴撃、尾の薙ぎ払い、鋭牙による噛み付きと、多種多様な攻撃手段を以てユウを襲う。



ダメージを受けながらも凌ぎきったユウであったが、ふとオルタナの眼を見ると、その片眼が血のように赤く染まっている事に気付いた。



「あ、ヤバーー」


ー ゴォオオオオウウ!! ー



悪い予感がして呟いたのと同時に、ユウの身体を炎が包み込んだ。


炎の勢いはとどまる所を知らず、草や木を呑み込み周囲に燃え広がっていく。


ユウが炎に呑み込まれて姿を消したのを確認したオルタナは、勝利を宣言するように空へ向かって勝鬨の咆哮を上げた。



ー グオォオオオオオン!! ー



その声に応えるかのように、炎の勢いも増して木々を燃やし、火の粉が雪のように舞う。


立ち上る炎、燃える草木、舞う火の粉。


地獄のようなフィールド環境下ではプレイヤーの生存は絶望的であった。



だからこそ、勝利を確信しているオルタナは気付かない。


背後の炎から人影が森の燃える音に紛れて躍り出てきた事を。


その者が纏う黒鎧が鮮やかな赤色に変貌している事を。


その者が自分を倒しうる存在となっている事を。



炎に包まれる寸前でスキルを発動したユウは、盾を外し、燃え上がる森の中を身を潜めながら移動してオルタナの死角に入り、奇襲のタイミングを見計らっていた。


その結果、油断を突いた奇襲は成功し、オルタナの背を攻撃範囲に捉え、全力で後ろ足の付け根を斬りつけた。



ー ザシュッ ! ー


ー ギャァン!!? ー



その一閃は今までの斬撃と異なり、魔石の体毛に阻まれる事なく、オルタナの肉を深く斬り裂いてHPバーを減らす。


一方のオルタナは、突然走った鋭い痛みに驚き、悲鳴をあげて飛び上がった。


着地と同時に攻撃してきたユウへと向き、攻撃体勢をとろうとしたが、彼は既に眼前へと迫っており、紅色に染まっている剣を頭部へと振り下ろした。



ー ズシャアッ! ー


ー ギャァアアアアアアア! ー



耳をつんざくような絶叫が響き、オルタナの顔から鮮血が流れ、HPバーも目に見えて減少する。


オルタナの赤眼を斬った事を確認したユウは確かな手応えを感じ剣を構え直した。



(いける!)


勢い付いたユウは、畳み掛けるように斬撃を放つ。


灼熱を宿した剣は、今まで苦戦していた魔石でできた体毛だけでなく、その下の肉体ごと、まるでバターのように易々と熔かし斬った。



ー ギャィイイイイ!! ー


オルタナは激痛に悲鳴をあげながらも反撃を試みたが、片眼と後ろ足にダメージを負っている為、ユウを捉えられず空振ってしまう。



それでも森の王者としてのプライドからか、逃げる事はしない。


また、ユウの方もスキル発動によって形勢逆転したものの、発動から180秒という時間制限の下で倒さなければ、再び攻撃が通らなくなり不利になる可能性もあるので、いうほど余裕はなかった。



ー ザシュッ! ー


ー ガキィッ! ー


ー キィイイン! ー



ユウの剣が、オルタナの大爪や牙、尾が、お互いの身体を傷付け、あるいは剣と爪がぶつかり合い戦闘音を奏でる。


赤眼を斬られたオルタナは炎を使う事ができず、己の身体を武器とした本来の戦闘スタイルでユウとHPバーを削り合う。



大爪や牙は火に耐性があり、剣に灼熱を宿す必殺技を以てしても断ち斬る事ができない為、ユウはそれらの攻撃を『陽炎』を用いて掻い潜り、あるいは受け流して、オルタナの身体へと攻撃を当てていく。




そして、百数秒という、とても短く、とても激しい戦闘が終わり、焦土と化した森の畔には勝者だけが残り、独り勝利の余韻に浸っていた。



「ふう、本当にギリギリだった」



勝者であるユウは安堵の息を吐く。


しかし、身体はまだ熱を持っている。


強敵との戦いを振り返り、高揚感が再び身体を駆け巡る。


決着はスキルが切れる数秒前。


自分もオルタナも全力を出し、その上で勝利できたのだ。


スキルに頼ったものの、リンとの特訓の成果も出す事ができ、必殺技を物にした事も確認できた。



「目的の素材も手に入れたし帰ろう」


ユウはひとしきり勝利の喜びを噛み締めた後、地点登録できる場所を求めて移動を開始する。



「駄目だ、今夜は眠れないかも」



未だに興奮冷めやらぬユウは、結局、モンスターを倒しながら第2の街まで戻る事にした。

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